9月9〜11日、静岡県の富士スピードウェイで開催されたWEC世界耐久選手権第5戦富士6時間レース。このレースウイークに合わせ、ル・マン24時間を運営するACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長と、WECを運営するLMEMのフレデリック・ルキアンCEOが、TOYOTA GAZOO Racingがモータースポーツを通じて開発を進める水素エンジンを搭載したカローラ・クロスH2コンセプトに試乗した。

 2021年からTOYOTA GAZOO Racingは、スーパー耐久に参戦するORC ROOKIE Racingとともに、カーボンニュートラルに向けた新たな取り組みとして水素エンジンをモータースポーツに投入した。自らドライバー『モリゾウ』としてステアリングを握り、水素エンジンの安全性とポテンシャルを証明してきたトヨタ自動車の豊田章男社長は、「敵は内燃機関ではなく炭素」と語り、カーボンニュートラルに新たな選択肢をもたらすべく、レース挑戦を続けてきた。

 ORC ROOKIE Corolla H2 conceptに積まれ2021年第3戦以降のスーパー耐久を戦い、サーキットというフィールドで「アジャイルな開発」が進められてきた水素エンジンは、短期間で出力や航続距離が大幅にアップしている。2022年からは市販車に水素エンジンを搭載し、ゲストやメディアがドライブできる車両も登場してきたほか、WRCでは豊田社長がGRヤリスH2コンセプトを駆りデモランも行っている。

 今回、フィヨン会長とルキアンCEOがドライブしたカローラ・クロスH2コンセプトはそんななか生まれた一台。ル・マン24時間を運営するACOは、『ミッションH24』と呼ばれる水素燃料電池プロトタイプカーを開発する共同プログラムを進めており、トヨタはACOの活動に共感、100周年を迎える2022年のル・マン24時間で、ACOがトヨタとともに水素を活用したエリアを展開する予定だとしている。

 この件についてはフィヨン会長も「我々としては、ル・マンもWECもゼロ・エミッションのレースを目指している」と賛意を示しているが、そんな動きに先立ち、富士スピードウェイのショートサーキットを使い、フィヨン会長、ルキアンCEOが水素エンジンを積むカローラ・クロスをドライブ。エンジン音がある車両とそのトルクを実感した。また、ふたりはグランドスタンド裏に設けられたブースも訪れている。

 走行では、佐藤恒治GRカンパニープレジデント、中嶋一貴TGR-E副会長、ドライバーとしてスーパー耐久にも挑戦する豊田大輔ウーブン・プラネットSVPらが同行。フィヨン会長と水素についての言葉を交わした。

 WECにはチーム代表兼ドライバーとして参戦していた小林可夢偉は、水素エンジンのモータースポーツでの活用について豊田社長に提案した人物。その後の取材のなかで「ACOとはすごく深く、水素の未来について一緒に共感を得たうえで取り組んでいて、来年のル・マンにも水素に関するイベントを一緒にやっていく話が進んでいます」と語っている。また、実は今回以前にもフィヨン会長は来日し、水素エンジンを試しているという。

「ACOは耐久レースの未来を模索をされていて、その中でトヨタの水素エンジンについては、レース、モータースポーツのなかで可能性を感じている。一緒に動き出している段階で、現実的には“歩み出している”という方が正しいかなと思います」

 モータースポーツではさまざまな可能性とともに、まだ多くの課題もある水素エンジン。トヨタの動きがグローバルなモータースポーツのなかでどう繋がっていくのか、楽しみなところだ。