現地9月13日の火曜午前に、NASCARカップシリーズで2度のタイトルを獲得するカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、在籍15年間でカップ通算56勝をともにしたトヨタ陣営を電撃離脱し、2023年から3台体制へと拡充するリチャード・チルドレス・レーシングへ移籍することを発表。2005〜2007年以来のシボレー陣営加入となるカイルは、現在のタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がドライブする8号車のチームを引き継ぎ、クルーチーフのランドル・バーネットと協力することがアナウンスされた。

 9月9〜11日にカンザスで争われたプレーオフ第2ラウンド、第28戦『ハリウッド・カジノ400』と前後して、カイル移籍の噂はパドックの“ホット・トピック”となっていた。

 今季終了後に、長く成功をともにした“ホーム”とも言えるJGRに別れを告げ、3番目のチームオーナーのもとで走ることを公式に表明したカイルだが、この動きはキャリアの大半にわたってパーソナルスポンサーを務めてきたMars Inc.(マース社/スニッカーズやM&M'sを手掛ける)が2022年限りで契約終了を迎え、組織としてこのスポーツを去る決定をしたことが、すべての変化の契機となった。

「RCRはNASCARで印象的な歴史を持っており、リチャード(・チルドレス代表)が私に信頼を寄せてくれて、その遺産をともに築き続けたいと考えてくれたことを光栄に思う」と、まずは移籍に向けての所信表明を語ったカイル・ブッシュ。

「情熱的なレーサーの家系で育った自分としては、チルドレス家が組織内に築いてきた文化が、私にとっても理想的なものになると感じている。自分のキャリアの次の章を始めるにあたり、RCRでドライブすることを楽しみにしているし、全員と協力して、両方の履歴書に勝利とチャンピオンシップを追加することができるはずさ」

 かつてのパドックでは、カイルとの一悶着もあり“因縁の相手”と見られていたRCR会長兼最高経営責任者(CEO)のリチャード・チルドレス代表は、チームのラインアップに「カイル・ブッシュが加わることは、我々の組織だけでなくスポーツ全体にとって重要だ」と、最高の評価で迎えた。

「カイルは、このスポーツで最高レベルの実績を持つ候補であり、彼のモータースポーツでの経験と献身は、全面的にRCRのレースプログラムを向上させると信じている」と続けたチルドレス代表。

「彼のカップ昇格以降、私はカイルのドライビングスタイルと、勝利、そしてチャンピオンシップを争う能力を常に賞賛して来た。すでに充分証明されたNASCARカップシリーズ・チャンピオンが、自分のクルマを運転することを望まない人がいるだろうか?」

■3台体制への拡充を検討しているリチャード・チルドレス

 シボレーの北米部門でパフォーマンス&モータースポーツ上級副社長を務めるジム・キャンベルも「カイルがNASCARでのキャリアをスタートさせた“チーム・シェビー”に戻ってくることを歓迎する」と述べた。

「(前出のヘンドリック時代を含め)カップ戦で60もの勝利を手にした男であり、2度のチャンピオンである彼こそは、リチャード・チルドレス・レーシングとシボレーのラインアップにとって貴重な存在となるだろう。2023年からカイルと一緒に仕事ができることを楽しみにしている」

 現在は8号車でレディックと組むバーネットだが、この7月にはそのレディック自身が2024年からトヨタ陣営の23XIレーシングへの移籍を表明済み。つまり2023年はまだ契約が残るため、来季に向けてはオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)の3号車を含め、チルドレス代表としても「まだ準備は整っていないものの、3台体制に拡充する」ことを検討していると明かした。

「大丈夫だった。彼は我々の契約とその内容を理解していた」と、このカイル・ブッシュ移籍発表の約1時間前に、レディックと話し合いの場を設け「来季、8号車のクルーメンバーはカイルが引き継ぐ」ことを伝えたというチルドレス代表。

「私は彼に、来年彼とレースをする契約を結んでいることを伝えた。その後、彼にそれがどのように進んでいるのか、何をしようとしているのか、どのようにまとめていくのかについて、彼に知らせ続けることについて話し合ったよ」

 これにより来季3台目のクルマをドライブすることが濃厚なレディックの体制や、RCRと複数年契約を結んだカイルのタイトルスポンサーも未定のままとなっているが、後者に関しては「今後数週間以内にはアナウンスできる」見通しだという。

「私は1年契約を求めているわけではない。将来に向けて強力なチームを構築したいと考えている。レディックとの契約は残り1年だから別のマシンに乗せ、カイルと長期契約を結ぶのは完璧な答えだと思う。それは簡単なことではなかったがね」