2022年のスーパーGTも残すところ3戦。9月17〜18日に行われる第6戦スポーツランドSUGOはチャンピオン争いのなかでも重要なレースとなるが、ここまでの5戦を経て、GT300クラスでは藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが38ポイントでランキング首位。富田竜一郎/大草りき組TANAX GAINER GT-Rが31ポイントで2位につけ、ニッサンGT-RニスモGT3が上位を占めている。

 多彩な車種バラエティを誇るGT300クラスのなかで、多くのチームが使用するニッサンGT-RニスモGT3。GT-R勢のなかではランキング7位には安田裕信/石川京侍組GAINER TANAX GT-Rが20点で続くなど使用チームが上位につけているが、これは単純にGT-Rが有利だから……というわけではない。参加条件としてはかなり厳しい方向に調整されつつあるが、これらのGT-R使用チームには素材を活かすべく、興味深いセットアップの違いがあり、それぞれが速さに繋がっている。もちろんセットの詳細を明かすことはできないが、担当する3名のエンジニアたちに、大事な一戦を前にファンにも分かりやすいようコンセプトを語ってもらった。

■リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは“タテ”に強いクルマ
 2020年のチャンピオンチームで、2021年もタイトルを争ったリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは、今季もランキングをリードする。驚異的なのは100kgのサクセスウエイトを積みながらもQ1突破を果たすなど速さをみせていることだが、これは多分にウエイト積んだGT-Rを想定したタイヤ開発が大きく寄与している。

 そんなリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rについて米林慎一チーフエンジニアに聞くと、そのセットの方向は「“乗りやすいクルマ”は目指しています」という。

「力を入れているのは、加速では厳しいので、ブレーキで頑張ったりとタテ方向に強いということです。ブレーキメーカーとも相談しながら、うまくいっていると思います」

 また米林チーフエンジニアの話で興味深いのが、リヤウイングをかなり寝かせる方向にしていることだ。「そもそも大きいウイングが立っているとカッコ悪い(笑)」というのが理由だというが、ウイングを寝かせつつもブレーキングのスタビリティを高めるようにセットし、ドライバーもそれに合わせてドライブしてくれることから「助かっています」という。

 ランキング2位につけるのはTANAX GAINER GT-Rだが、米林チーフエンジニアは外からGAINER勢のセットアップを観察することはしないというから面白い。「タイヤメーカーが違うので見ても仕方ない。僕が見ているのは、同じタイヤメーカーの48号車(植毛ケーズフロンティア GT-R)と360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)です。10号車と11号車はパッと見でセットアップのコンセプトが違うと思います」という。

■TANAX GAINER GT-Rは“フォーミュラっぽく”
 そんな“異なるセットアップのコンセプト”のうち、開幕から「かなり攻めたセットアップ(富田竜一郎)」を進めていたのがTANAX GAINER GT-R。GAINERでは今季、ドライバーラインアップが変わったが、TANAX GAINER GT-Rは全ドライバーが変わり、牧野成伸チーフエンジニアが新たに加わった。そこで、真っ新な状態となった開幕前、11号車GAINER TANAX GT-Rとすべて同じセットからスタートした。

 TANAX GAINER GT-Rについて牧野チーフエンジニアにコンセプトを聞くと、どちらかというと“フォーミュラの雰囲気”があるセットアップだという。「大草りき選手はミドルフォーミュラの経験が豊富ですが、そんなドライバーがパッと乗れるようなクルマにしてあります。その“重量が重い版”みたいなのがベースになっています」と牧野チーフエンジニア。

 走行中に見るのはかなり大変かもしれないが、ぜひコースサイドで写真を撮ったときに見比べて欲しいのがブレーキング時の車高、レーキ角。10号車はこれが見どころだ。「他のクルマとも違うな、というのは、GT-Rをやっているから分かる違いがありますね。気づく人は気づくと思います」という。

「タイヤメーカーによる違いもありますし、ドライバーの年代によっても乗り方は変わってきます。大草くんは今どきの速い乗り方をしていますし、富田くんもそちら方向の乗り方をしたので、そこはやはり合っていたと思いますね」というのが前半戦からの好調の要因だ。

■GAINER TANAX GT-Rはタイヤマネージメント重視
 一方、毎年のようにタイトルを争いながら、今季はランキング7位とわずかに“遅れて”いる感もあるGAINER TANAX GT-Rだが、これまでは序盤に得点を重ね終盤戦に苦戦してきた歴史があるだけに、ある意味今季ここまでの結果は、取りこぼしはあったものの、「これくらいは獲りたい」という狙いからは大きく外れているわけではない。

 そんなGAINER TANAX GT-Rのセットアップについて福田洋介チーフエンジニアに聞くと、「タイヤマネージメント重視」の方向だという。また「TANAX GAINER GT-Rは予選と決勝は同じセットですが、GAINER TANAX GT-Rはガラッと変えたりしますよ」というから面白い。

 このマネージメント重視のセットアップの内容については「ひと言では言えないです(笑)」という。TANAX GAINER GT-Rの“フォーミュラの雰囲気”から安易に想定すれば、足回りを動かす方向かといえばそういうわけでもない。「SUGOに限って言えば、ソフトめに持っていくとよけいズルズルになったりします。難しいです」と福田チーフエンジニア。

 10号車と11号車の違いについては、「見る場所で見れば分かるはず。路面と車体下面のフロアの傾きを見比べてもらえれば」という。

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 スタンドから見ると大きな違いは分からないかもしれないが、走行しているラインやブレーキングでも少しずつ違いは分かるほか、やはり写真を撮るのが分かりやすい。同じ車種でもタイヤ、そしてセットアップの違い、もちろんドライバーのスキルで差が見え隠れするのがスーパーGTの面白さだ。

 このSUGOでは最大過給圧の数値が絞られていることもあり、成績では「苦しいかも」という声も聞こえるGT-R勢だが、「公式練習を走ってからでないとなんとも言えませんが、タイヤとしては悪くないかもしれません。タイヤメーカーが頑張っているので、助けられています」とリアライズの米林チーフエンジニアは言う。走り、そして成績ともにぜひ楽しみにしていただきたい。