まさに風雲立ち込める天候のもと始まった2022年スーパーGT第6戦、スポーツランドSUGOでのGT500クラス決勝は序盤から雨がらみの混戦模様となるなか、その状況下で抜群の性能を発揮するミシュランタイヤの性能もフル活用し、3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの千代勝正と高星明誠が今季2勝目を達成。ライン上がドライに向かうなか、ウエットタイヤで粘り抜いた千代の力走もあり、予選11番手からの逆転劇でフルウエイト“みちのく決戦”を制している。

 連日のニュースで「史上最強クラス」と警戒が呼びかけられる台風14号が日本列島に接近するなか、まだ影響の少ない東北地方で土曜に争われた予選では、19号車WedsSport ADVAN GR Supraの阪口晴南が自身4度目、チームとしても今季4回目のポールポジションを射止めた。

 最終コーナーで前走車に引っ掛かりながらのレコードタイム更新に「本来のクリアラップなら、どれほどのタイムが出たのか」と思わせるアタックとなったが、2番手にも“最速男”立川祐路の38号車ZENT CERUMO GR Supraが続くなど、2022年型でフロントダウンフォースを強化してきたトヨタ勢が、ここSUGOでフロントロウを占拠した。

 一方、予選結果ではQ2担当の松田次生が3番手タイムを叩き出した23号車MOTUL AUTECH Zだが、モラルハザードの適用により4グリッドの降格措置が採られ7番手からのスタートに。代わってブリヂストンタイヤを装着する17号車Astemo NSX-GTと100号車STANLEY NSX-GTが2列目に並んだ。

 公式練習、そして予選Q1と圧巻の速さを披露したダンロップ陣営の16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTや64号車Modulo NSX-GTは、本来ならポール獲得争いに加わりたいところだったが、さまざまな要件から最後の最後でQ2の後方に留まる結果に。しかし決勝の気象条件が変化すればグリップ発動条件がまるで変わるのが現在のGT500なだけに、ウエットでは“他を圧倒する性能”との呼び声高いミシュランタイヤを装着する23号車にとっても、決勝レース中の天候や路面温度の変化が大きなカギを握ることとなった。

 正午の選手紹介を前にどんよりと曇り、今にも雨が落ちそうだった上空は、12時40分のウォームアップ走行開始時点で日差しが戻り、全車が秋晴れのコースへと向かう。しかしウォームアップ走行開始5分でGT300クラスの車両が最終コーナーで止まり、ここで赤旗中断に。約4分後には迅速にセッションが再開されたものの、決勝向けの車両バランスとロングランペースの確認をしたい各陣営にとって、貴重な走行時間が失われてしまう。

 するとこの一件が前触れとなったか、スタート進行中に上空は再び暗転。グリッドへの試走時には雨粒が落ち始める。しかし地元の宮城県警白バイ隊とパトカー先導で全15台の隊列が動き出した14時にはなんとか降雨は持ち堪え、気温27度、路面温度33度のドライコンディションで84周レースの幕が上がる。

 オープニングではヨコハマタイヤを履くポールシッターと、背後のブリヂストン勢でウォームアップ性能が異なるか、38号車ZENT立川が早くも4コーナーで19号車のインをこじ開け首位に浮上、続くレインボーコーナーでは100号車STANLEY牧野任祐もアウトから19号車の前に出て2番手とする。

 その直後、GT300クラスでクラッシュが発生し、ここで早速のセーフティカー(SC)が導入される。4周目突入でリスタートが切られると、やはりタイヤ銘柄によるグリップ発動タイミングが異なり、23号車MOTUL AUTECH Zロニー・クインタレッリが背後の64号車Modulo大津弘樹に責め立てられる展開に。

 しかしここを凌いだ23号車のZは、10周を過ぎたところで前を行く16号車Red Bullの大湯都史樹に接近。ホームストレートで横に並びプレッシャーを掛けていく。すると13周目を前後してついにコース上に雨が落ち始め、5番手にいた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraがいち早くウエットタイヤへの交換を決断。すると続く15周目には首位の38号車立川を筆頭に、ほぼ全車がピットレーンへと雪崩れ込んでくる。

 ここでステイアウトを選択した17号車Astemoの松下信治以下、16号車Red Bull大湯、23号車クインタレッリ、そして予選トラブルにより最後尾から追い上げを敢行していた36号車au TOM'S GR Supra坪井翔がホームストレートを駆け抜ける。

 しかしスリックでの雨中走行はリスクを孕み、ポジションを落とした首位17号車Astemoは続くラップでタイヤ交換へ。その直後、GT300車両がコースオフを喫し、FCYの可能性を考慮して20周目には首位16号車Red Bull、2番手23号車MOTUL AUTECHともにタイヤ交換に向かい、ここでニスモ陣営が先にマシンを送り出す。

 ここからの数周で各車のレースペースに大きな差が生み出され、みるみるポジションを上げた23号車クインタレッリは、27周目の1〜2コーナーアウト側から軽々と首位ZENTをオーバーテイク。続く28周目には3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zがそれに続き、4コーナーのイン側から2番手へ。やはりこの難しい路面状況でミシュランタイヤが猛威を振るい、ニスモ陣営の2台が1-2のポジションを奪っていく。

 レース距離3分の1となる28周を過ぎ、30周目にはウエットタイヤ装着以降に大きくペースダウンしていた100号車STANLEYがピットへ。さらに雨脚が強まるなかで山本尚貴にスイッチする。同じく33周目には38号車もドライバー交代に向かい、石浦宏明に残り周回数を託す。

 雨量が増したトラック上では先頭のミシュラン陣営に対し、背後のダンロップタイヤ装着車2台が食らいつくが、35周目の17号車Astemo NSX-GT、36周目の39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraに続き、3番手にいた16号車Red Bullが先手を取って動き、笹原右京へとスイッチ。2周後には4番手を走行していた64号車Modulo伊沢拓也も背後から続いていく。

 依然として1分25秒台で逃げを打つミシュラン勢の2台に対し、ラップペースを稼ぎたい16号車Red Bull笹原だったが、41周目突入でZENT石浦にオーバーテイクされ、ルーティンを終えている車両での暫定首位の座から陥落してしまう。

 そして44周終了時点で首位23号車がピットへ。モニター上31.6秒の作業静止時間で松田にドライバー交代し、ポジションを維持してコースに復帰。タイミングをズラした陣営内での勝負に挑むと、雨量が減りライン上は乾くと読んだ3号車CRAFTSPORTSは、ライバル勢が続々と50周を前後にスリックタイヤにチェンジするなか、引っ張りに引っ張る戦略でコース上にステイアウトを決める。

 55周目には、ついに23号車MOTUL AUTECH Zが再びスリックへの交換を決断するタイミングに合わせ、3号車もようやくルーティンピットへ。ここで高星明誠に交代し、作戦大成功の首位浮上を果たす。

 これで3号車高星は、60周時点で2番手の僚友23号車松田に30秒近いマージンを作り出し、さらにその背後の3番手16号車Red Bullの笹原は25秒以上後方と、トップ3の3台は各車が単独走行の展開に。その6秒後方で4番手から表彰台圏内復帰を狙っていた38号車ZENT石浦は、GT300のマシンに行手を阻まれ右フロントのフリック部にダメージを負ってしまう。

 残り10周を切ってふたたび雨が舞い始めたものの、マージンをコントロールした3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zが11番グリッドからの逆転劇で今季2勝目を獲得。千代と高星のふたりにとっても、燃料リストリクター2ランクダウン(90.2kg/h)の状態でチャンピオンシップに向け大きな後押しとなる勝利を飾り、2位に入った23号車MOTUL AUTECH Zとともに、ミシュランが2年前から準備しており今回のSUGO戦が初の実戦投入となった新型ウエットタイヤの脅威的な性能も活かしたニスモ陣営が1-2フィニッシュを達成した。