2022年NASCARカップシリーズのプレーオフ3戦目、16名から12名に絞られる“ラウンド・オブ16”最終ラウンドとなった第29戦『バスプロショップス・ナイトレース』は、最後の50周で執拗な追い上げを見せたチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を振り切り、伏兵クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)が待望のシーズン初優勝をマーク。

 今季19人目のカップウイナーとなっただけでなく、チームにとっては2017年7月にリッキー・ステンハウスJr.がトップチェッカーを受けて以来、そしてブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)をオーナードライバーに迎え入れたRFKにとっても初の勝利に。

 これで今季のプレーオフは、エリック・ジョーンズ(ペティ・GMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)、ダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)、そしてブッシャーと“非進出”ドライバーが3戦連続の勝利を飾る異例の展開となっている。

 9月16〜17日にブリストル・モータスピードウェイの“ターマック”で争われる1戦を前に、NASCARは2023年のスケジュールを発表し、以前にもアナウンスされていた初開催のシカゴ市街地戦に加え、オールスター戦をシャーロット北部のウィルクスボローで開催するカレンダーを公開。来季も2月にL.A.コロシアムで実施されるエキシビジョン戦でシーズンの幕が開くことが確定した。

 さらにドライバー市場では、盟主ヘンドリックがカイル・ラーソンとの契約延長を発表。ディフェンディングチャンピオンは、順当に2026年までHendrickCars.comの5号車シボレー・カマロZL1のステアリングを握ることとなった。

「彼が我々の組織に加わった際、チーム内外で期待と注目度が高まったが、控えめに言って彼はその期待を遥かに上回る仕事を成し遂げてきた」と語るのは、チーム代表のリック・ヘンドリック。

「カイルはチャンピオンドライバーであることを証明しただけでなく、レースカーを降りているときも王者の仕事をした。我々は関係を継続し、彼がチームとブランドをそうした前向きな方法で代表していることを誇りに思っている。これからの年月も、とても明るいものになるだろうね」

 こうして始まった週末は、金曜プラクティスでデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が最速を記録すると、続く予選ではアリック・アルミローラ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)がブリストル初、そして今季初のポールポジションを奪取。ここでも“非プレーオフ”ドライバーが16名を出し抜く活躍を演じてみせた。

 すると決勝ナイトレースでは、今季不振に喘いだケセロウスキーがステージ1を制する異例の幕開けとなり、対照的に“ラウンド・オブ12”進出を賭けた主役級が次々とアクシデントに見舞われる展開に。

 92周目にはピット作業に手間取ったライアン・ブレイニー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)のリヤタイヤが脱落し、ピットレーンを転がる事態で次戦のペナルティが確定。そのままリペアを強いられることに。

 続いて比較的静かな展開となったステージ2はクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が制すと、この日はファイナルステージに波乱が集中。270周目にエンジンが息絶えたカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)は、最初の2ステージで14ポイントを獲得し、続く“ラウンド・オブ12”進出圏内にいたにも関わらず、急転直下。この瞬間にカップシリーズのキャリアで初めて、ファーストラウンドでの敗退が決まってしまった。

「これが今季の僕らを象徴している。何て言ったらいいのかもわからないし、本当に驚いた。クルーたちの努力を思うと本当に胸糞悪いし、彼らはここで負けるに値しないほど頑張り続けてきた。本当に懸命に働いているし、こんな低いレベルで終わるわけがない、あまりに優秀なグループなんだ。3週間で2回のエンジン故障、それがこの事態を招いている」と憤りを露わにしたカイル。

 するとこのリスタート直後の277周目にはマルチクラッシュが発生し、バックストレッチからターン3を前に、アウトサイドでダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がルーズになると、12台を巻き添えにするマルチカー・パイルアップに発展。ここにタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)とオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がいたRCR陣営は、これでラウンド・オブ12進出の夢が打ち砕かれる結果となった。

 さらにこの日は105周のリードラップも記録し、つねにトップ5圏内で僚友のポジションアップを待ち続けたケセロウスキーも、414周目に右フロントタイヤがパンクして自身が復活ウイナーになることはできず。「今日は2台のクルマともに本当に良かった。ただ1台は不運だったし、もう1台は実行できた、すべてが彼らにとって正しい方向に進んだんだ」と、最後はブッシャーにすべてを託すことに。

 そしてラウンド・オブ12進出には勝利が絶対条件だったケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)のチャンスは、438周目のピットで左リヤタイヤが転がり落ちた瞬間に消え、444周目のリスタートからでは10位フィニッシュが精一杯となった。

■“2タイヤ”を選択を「少しも心配していなかった」とブッシャー 

「かなり大変だった。僕らは17号車(勝者ブッシャー)の前でピットしていたし、今季ここまでの展開そのもののようなレースだった。パレードをリードする機会があっただけでなく、パレードの一部になれていたんだ。ただただ、最後に合格するのが難しいだけさ」と、この日もつねにトップ5圏内を維持していたハーヴィック。

 終盤はクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とラーソンがラインを交錯させながら、ときにコンタクトを伴う激しい接近戦を演じる一方、その前方で2番手を行く僚友エリオットは首位ブッシャーを追い詰めていくが、23番グリッドからの猛追撃もここまで。HMSの2020年チャンピオンに対し0.458秒差で逃げ切ったブッシャーが、2016年に雨で短縮されたポコノ以来のカップ戦勝利を手にした。

「ここはとても特別で、本当に大好きなトラックなんだ。ファンも最高だし、いつも特別で素晴らしい気分になれる場所さ」と、438周目のピットでは後続のパックとは異なり“2タイヤ”を選択していたブッシャー。

「その点については少しも心配していなかったよ。彼らがフルセットでフレッシュを履いていたとしても、あの時は自分次第だった。僕はそれを機能させ、本当に速いクルマを手に入れていたんだ。予選は20番手とうまくいかなかったけど、決勝では素晴らしいレースカーに変貌していた。今は、何を言ったらいいのかわからないし、息も切れている(笑)。この場所が僕を全開で行かせてくれたし、この特別な夜のすべてを愛している!」

 これでカイル、ハーヴィック、レディック、ディロンらの敗退が決まり、20位で終えたオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が滑り込みでラウンド・オブ12に進出。続くテキサス、タラデガ、そしてシャーロット"ローバル"戦を経て、候補者はふたたび8名にまで絞り込まれる。

 一方、併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズの第26戦は、プレーオフを控え勢いを増しているノア・グラグソン(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が3連勝を決め、今季6勝目、キャリア通算11勝目を獲得。同じくNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズ第20戦は、タイ・マジェスティック(ソースポーツ・レーシング/トヨタ・タンドラTRD-Pro)が初勝利を挙げ、最終“チャンピオンシップ4”進出権を手にした最初のドライバーとなった。

 そして服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズは、序盤にダメージを負い最後尾まで下がっていた16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRD-Pro)が、猛烈な挽回を見せての11位に。代わって終盤に手負いとなったチェイス・パーディの61号車(トヨタ・タンドラTRD-Pro)は30位でレースを終えている。