岡山国際サーキットで9月24日に行われたGTワールドチャレンジ・アジア第9戦は、ヨギボー・レーシング27号車フェラーリ488 GT3(横溝直輝/藤波清斗)が今季2勝目を飾った。結果を見ればポール・トゥ・ウインだが、決して“楽勝”ではなかったという。

 金曜日の走行ではなかなかペースをつかむことができず、リズムに乗り切れずにいたというヨギボー陣営。「昨日はどうしようかと思ったけど、チームがセットアップを変えてくれて、予選で前に行けたのが大きかった」と横溝は振り返る。

 決勝では横溝がスタートを決め、じりじりと2番手以下を引き離していく展開となるが、バックストレートでの停止車両排除のため、セーフティカー(SC)が導入されてリードが霧散する展開となってしまう。

「あれはちょっとSCのシチュエーションじゃないような……結果的にはレースを面白くしたと思いますけど(笑)」と横溝。

 だが、ある意味ではこのSCがヨギボー陣営の味方となった部分もあった。SCの隊列のなかで横溝の直後にはGT4車両が走行しており、リスタートではタイミングを見計らって加速することで、GT4車両の後方に位置していた2番手以下に対していくらかマージンを稼ぐことができたのだ。

 また、リスタートのタイミングがピットウインドウのオープンと重なり、多くの車両がピットになだれ込むことが予想されるなか、上記のアドバンテージをさらに活かす形でヨギボーはステイアウトしピットインを引っ張った。実際、混雑するピットでタイムロスを喫した陣営もあったようだ。「あの決断は良かったと思います」と横溝も振り返る。

 こうして首位の座をキープしたまま後半の藤波へとバトンタッチした27号車だが、藤波はシルバークラス(シルバードライバー2名のコンビ)の車両に与えられる30kgのウエイトハンデに苦しんでいた。

「やっぱり30kgは効いてますね。ロングランではブレーキングも全然止まらないし、全然曲がらないし……でもなんとか粘れたので、本当に良かったです。でも明日のレースは予選で(トラブルもあって)前に行けなかったので、申し訳ないです」と藤波。

 背後に迫る同じフェラーリ、カーガイ・レーシング777号車のケイ・コッツォリーノから逃げるためにコクピット内で格闘していた藤波は、レース後に安堵の表情を見せながらも、「シビれますよ。GTより疲れる。グリップしないから、めっちゃ疲れるんですよ。シビアで、神経使いますから」とGTWCならではの苦労を口にした。

 これには横溝も「滑るか滑らないかの、ぎりぎりのところでコントロールしているので」と同調。そんな状況でも、ドライバーふたりの奮闘と前日からセットアップの進んだマシンのおかげで、ライバルよりも1.2秒早くフィニッシュラインに逃げ切ることができたのだった。

 通年参戦するヨギボーでは、横溝にGT3ドライバー選手権(オーバーオール)のタイトル獲得可能性がまだ残されている。

■『日本一のプロ/アマ』となった木村/コッツォリーノ組
 一方、総合で2位、GT3プロ/アマクラスでは優勝を飾ったカーガイ・レーシングの木村武史とコッツォリーノは、レース後に満足げな表情を浮かべていた。今回の結果により、ふたりはジャパンカップのタイトル(オーバーオール、プロ/アマ)を決めている。

 4番グリッドからレースをスタートした木村は、スタート直後の1コーナーで2台のマシンに左右から挟まれて行き場を失い、1ポジションダウンを喫した。タイトル決定戦ということもあり「予定どおり、安全運転でいった」と木村は言う。

「その後のペース的には(前に出たトリプルエイトJMR99号車メルセデスのH.H.プリンス・アブドゥル・ラーマン・)イブラヒムより良かった。でも、クリーンなバトルができたと思います。彼のライン取りとかを見ていても、まだ(岡山に慣れていないので)本来のライン取りで走れていなかった。だからいい勝負になっているだけ、ですね。ダブルヘアピンなんか、走り方が全然違いましたから」

 ウインドウが開けばすぐにピットに入る予定だったというカーガイは、SC明け直後の混雑する状況でのピット作業となったが、幸いピットボックス前後にも余裕がある状況だったため、前戦結果による+5秒のハンデを消化してもメルセデス勢の前に出ることができたという。

 カーガイ陣営では、タイトルを争う99号車メルセデス勢に対して、「もし、ピットに入る時点で99号車の方が前にいたら、ニュータイヤで勝負をかけよう」と事前に打ち合わせしていたという。ニュータイヤはセット数が制限されているため、ここで投入すれば翌日の決勝は予選で使用した中古タイヤを使わなければならない。だが、カーガイ陣営は勝負に出たのだ。

 結果的にはピット作業後に99号車を逆転できたが、コッツォリーノは1分29秒台というすさまじいファステストを出しながら、首位のヨギボーとのギャップを詰めていった。総合優勝はならなかったものの、こちらもベストなレースを戦えたと言っていいだろう。

 これでカーガイのふたりは、ジャパンカップのタイトルを決めた。「嬉しいですね、日本のプロ/アマの中で一番が獲れたので」とコッツォリーノは表情を緩める。

 日曜の最終戦では、オーバーオールのタイトルを99号車陣営と争うことになるが、木村は「これで充分な気はします。アジアいち(を獲ること)は、でき過ぎですよ。やっぱり、彼ら(99号車)はハンデを背負っているので」と言う。

 木村の言う“ハンデ”とは、99号車陣営にとっては初めてのサーキットを転戦しているということ。加えて、本来シリーズ最終戦として予定されていたインドネシア・マンダリカでのレースがキャンセルされたことを指している。

 ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦している木村は、“アウェイ”の環境で戦う厳しさを身をもって味わっているからこそ、ライバルが日本のサーキットで奮闘する姿を讃えているのだ。

「私らは慣れているコース。彼らは初めてのコースなのに、予選から速い。私もいま、(コロナ禍という)大変な状況で海外のレースに参戦していますので、彼らがこちらに来てくれるのはすごく嬉しいんです」

 土曜のレースでのバトルを「クリーンだった」と振り返る木村は、日曜もクリーンなレースに期待をかけている。互いをリスペクトしながら戦う“最後の”タイトル争いは、明日の第10戦で決着のときを迎える。