フェラーリが前回優勝したのは、7月のオーストリアGPのことであり、その後の5レースで、勝ち星から見放されている。シーズン当初のあの目を見張るようなF1-75の速さは、いったいどこに行ってしまったのか。フェラーリの失速をF1i.comのニコラス・カルペンティエルが技術的な面から分析、3つの理由を挙げた(全3回連載)。第1回「フェラーリF1-75が勝てなくなった3つの理由:開発の方向性の間違い」 、第2回「レッドブルが驚異的進化を達成」  に続く今回は、ポーパシング/バウンシング軽減のためにFIAが発行した技術指令書の影響について考察する。

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 今季最大のトピックの一つが、バウンシング(高速走行時の激しい縦揺れ現象)だった。FIA(国際自動車連盟)は「安全性に重大な影響を与えかねない」という理由で、シーズン中に技術指令書を全10チームに繰り返し送付し、その改善を図ってきた。

 レッドブルをはじめ少なからぬチームは、その影響を最小限に抑えたと言える。一方で縦揺れの最大リバウンド量を定めた指令により、一部のチームは地上高やダンパーの硬さなどを変更せざるを得なかった可能性がある。フェラーリもその中に入っているのだろうか。正直なところ、F1-75のセッティングが指令書によって変更されたかどうかは、フェラーリのエンジニアにしかわからない。

 しかしこの指令が適用された8月下旬のスパ・フランコルシャンから、フェラーリが苦境に立たされ始めたことを考えると、この仮説は決して不合理なものではないだろう。ただしベルギーのサーキット特性は、F1-75の本来の強みである低速コーナーでの速さは最小限に抑えられ、弱点の高速区間での過度のドラッグは強調されるため、スパでの低迷は単なる偶然だった可能性はある。

 ところがF1-75は、続くオランダGPでも苦戦を強いられた。シーズン序盤のバルセロナやモナコはダウンフォースを必要とするサーキットで、ここでは好成績を挙げていた。それがなぜ、同じハイダウンフォースのザントフォールトでは輝けなかったのか。セッティングに、どんな問題があったのか?

 囲み会見でのマッティア・ビノット代表は、F1-75の競争力低下と技術指令書を結びつけることを否定している。しかしこれを単なる偶然とするのは、かなり無理があるように思う。

 今季のシャルル・ルクレールとフェラーリの破滅は、一種のデジャヴの感覚を伴うものだ。2017年と2018年もフェラーリのマシンは優秀で、最初の数グランプリを支配した。しかしその後、誤った開発と戦略ミスにより衰退していった。マラネロは失敗を繰り返す運命にあるのだろうか?