2022年シーズンのF1も終盤戦に入り、アメリカ大陸での連戦を迎えた。前戦日本GPではマックス・フェルスタッペンがドライバーズ選手権で連覇を決めたが、レッドブルはこのアメリカGPで、9年ぶりとなるコンストラクターズ選手権のタイトルをかけた戦いに臨むことになった。そんなアメリカGPを無線とともに振り返る。

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 スタート直後、ポールシッターのカルロス・サインツ(フェラーリ)が出遅れ、背後のジョージ・ラッセル(メルセデス)に接触され、スピンを喫する。

サインツ:何が起きたんだ! リヤがパンクしたようだ
リカルド・アダミ:メルセデスがぶつかってきた

ラッセル:僕のラインを横切ってきた

 ラッセルはそう叫んだが、こちらに非があったのは明らかだった。5秒ペナルティを科されたラッセルは、レース後サインツに謝罪に向かった。

 単独で戦うことになったシャルル・ルクレール(フェラーリ)。パワーユニット交換による10グリッド降格で12番グリッドからのスタートだったが、15周目には予選順位と同じ2番手まで順位を上げた。しかしここまで引っ張り続けたミディアムタイヤが、さすがに限界に近づいていた。

ルクレール:プランEを考えてくれ

 具体的にプランEが何なのか不明だが、5つ目の選択肢ということになる。フェラーリ陣営はいったいいくつの戦略を用意して、レースに臨んでいるのだろう。

 22周目、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とランス・ストロール(アストンマーティン)が接触。アロンソはあわや宙を飛びかけ、ストロールはその場でリタイアを喫した。これで2度目のSCが導入される。

 この時点でアルファタウリの2台は、ピエール・ガスリー7番手、角田裕毅8番手と、絶好の位置につけていた。ここで角田に、担当エンジニアのマッティア・スピニから指示が出た。

スピニ:いいか、ユウキ。再スタートの際にはガスリーと戦うな。戦うべきは、後ろの者たちだ。

 背後にはランド・ノリス(マクラーレン)、ミック・シューマッハー(アストンマーティン)が迫っている。アルファタウリがバトルしている隙に先行される恐れがある。その意味では、妥当な指示と言えた。しかし角田は、納得できない。

角田:なぜだ!

 スピニが、辛抱強く説得する。

スピニ:(ガスリーとのバトルは)あとからできる。再スタートでは、やるな
角田:了解した。でもかなり複雑だね
スピニ:わかってる
角田:特にピエールは、ハードじゃないか。ハードを履いてるんだ。それはわかってるだろう
スピニ:わかってる
角田:意味不明だよ

角田:僕の方が、ペースが速い
スピニ:今、検討中だ

スピニ:結論が出た。再スタートでは、レースをしない。後になってからだ

 角田は再スタートで、後続車両を抑えることに成功。ガスリーの背後に迫る。それでもチームからは、順位交代の許可は出ない。その後ガスリーには、セーフティカー(SC)中に車間距離を開けすぎたとして、5秒ペナルティが下された。それでもチームは、ポジションキープを指示し続ける。

角田:タイヤがもうダメになったよ

 結局、32周目にガスリーがピットインするまで、角田は延々と我慢を強いられた。そして速さに優っていたはずのミディアムタイヤは既に限界で、次周に角田もタイヤ交換を余儀なくされた。それでも角田はチェッカーまで全力を出し切り、10位入賞を果たした。

 35周目、首位を快走するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がピットイン。ところが右前輪のタイヤ交換に手間取り、11秒1もかかってしまう。これでルイス・ハミルトン(メルセデス)、ルクレールにかわされ、実質3番手に後退した。

フェルスタッペン:ビューティフル、なんて美しいんだ

 もちろん皮肉なのは、言うまでもない。とはいえフェルスタッペンは、スタッフを罵倒したりすることはない。冷静なドライビングがブレることはなく、ルクレール、続いてハミルトンを仕留め、今季13勝目を達成。レッドブルは2013年以来となる、9年ぶり5回目のコンストラクターズタイトルを勝ち取った。この週末に亡くなった共同創業者ディートリッヒ・マテシッツに捧げる勝利でもあった。

クリスチャン・ホーナー代表:マックス・フェルスタッペン、君は世界チャンピオンだ。そして我々も、世界チャンピオンだ。本当にありがとう!
ホーナー代表:そしてディートリッヒ・マテシッツ、あなたのしてくれたことに、本当に感謝だ。このタイトルを、あなたに捧げます
フェルスタッペン:本当に、この勝利はあなたのものだよ、ディートリッヒ
フェルスタッペン:あのピットストップにはちょっとヘコんだけど、でも挽回できた。最後まで攻め続けられた。君たち、みんなのおかげだ。ふたつのタイトルを獲得できて、なんて素晴らしいシーズンなんだ! 君たちこそ、この称号にふさわしいよ!
ジャンピエロ・ランビアーゼ:そして13勝目だ、マックス
フェルスタッペン:まだあと3つ勝てるチャンスがある、あと3つだ

 ハミルトンに比肩しうるこの勝利への貪欲さも、フェルスタッペンの凄さであろう。