長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はメキシコGPでの戦いぶりを振り返る。

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■評価 10/10:フェルスタッペンがチャンピオンらしい走りで完勝

マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はチャンピオンらしい走りでポール・トゥ・ウインを成し遂げた。最速マシン、レッドブルRB18の自分好みのバランスを見つけたのは予選終盤になってからだったが、最後のラップで他ドライバーたちに大きなギャップを築いてみせた。

 決勝ではどちらのスティントでもルイス・ハミルトンに対してギャップを保ち、常に相手よりソフト寄りのタイヤで走り、後半はミディアムで46周を走り切って、勝利をつかんだ。


■評価 9/10:チームの戦略ミスで優勝争いのチャンスを逃したハミルトン

ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選3番手/決勝2位

 今回フェルスタッペンのレベルに近いパフォーマンスを見せたのはルイス・ハミルトン(メルセデス)だけだった。予選Q3終盤にイグニッションの問題に見舞われ、ポールポジション争いに挑むことができなかった。

 決勝では1周目にチームメイトの前に出て、ファーストスティントではフェルスタッペンにプレッシャーをかけ続けた。しかしハードタイヤに交換してほどなく、彼が優勝するチャンスがなくなったことがはっきりした。メルセデスが戦略において判断を誤ったことで、ハミルトンはフェルスタッペンと戦える可能性を失い、我々は、その素晴らしいバトルを目にするチャンスを逃したのだ。


■評価 8/10:かつての速さとアグレッシブさを見せてくれたリカルド

ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選2番手/決勝4位
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選5番手/決勝5位
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ):予選9番手/決勝19位(DNF)
ダニエル・リカルド(マクラーレン):予選11番手/決勝7位

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、わずかの差で予選でチームメイトに勝ち、2番グリッドを手に入れた。これは彼にとってこの週末のハイライトといえるだろう。ただ、最終セクターでのミスで、フェルスタッペンには届かなかった。

 レースでは、スタート直後、ハミルトンを抑えようとするなかでワイドになり、セルジオ・ペレスの後ろに下がった。その後、ラッセルはタイヤ戦略についてチームを説得しようとしたものの、ハミルトンと同様にレース全体を間違った戦略で走らなければならなかった。

 今回のフェラーリには驚くほど速さがなく、パワーもダウンフォースも欠けていた。カルロス・サインツ(フェラーリ)はF1-75の欠点にうまく対応し、常にチームメイトより速かった。トップ2チームには全く届かず、中団チームには大きなギャップがあったため、フェラーリはチームメイト同士で戦うしかない状況だったが、予選でも決勝でもサインツの方が速かった。

 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は、再びトラブルでリタイアしなければならなかった。この週末は、チームが予想していたより厳しい戦いを強いられ、予選ではQ3になんとか進み、チームメイトに0.1秒弱の差で勝ち、決勝ではまたもや素晴らしいスタートを決めて、ターン1までに9番手から7番手に上がった。ファーストスティントでは最後までバルテリ・ボッタスを抑えきり、その後、後続を引き離し始めていたが、エンジンのシリンダーをひとつ失い、その数周後にブロー、アロンソは貴重なポイントを失う結果となった。

 ダニエル・リカルド(マクラーレン)が以前の速さとアグレッシブさを見せてくれたことが本当にうれしい。この週末、リカルドはいつもよりチームメイトに近いペースを発揮した。決勝スタートが悪く、ポジションをふたつ落とし、周冠宇をパスするのに時間を要した。リカルドはファーストスティントを長く取ってソフトタイヤに交換。角田裕毅のすぐ後ろに戻ったリカルドは数周抑えられた後、ターン6で追い越しをかけ、接触が起きた。角田はリタイアし、リカルドに10秒ペナルティが科されたのも当然のことといえる。10秒の遅れを取り戻すのは非常に難しいことだったが、そのチャレンジがリカルドの気持ちに火をつけた。ランド・ノリス、バルテリ・ボッタス、エステバン・オコンを次々に抜いて、アロンソのトラブルもあり、リカルドは見事7位をつかんだ。


■評価 7/10:リカルドにリタイアに追い込まれ、入賞争いができなかった角田裕毅

セルジオ・ペレス(レッドブル):予選4番手/決勝3位
角田裕毅(アルファタウリ):予選13番手/決勝リタイア
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選10番手/決勝8位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選8番手/決勝9位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選6番手/決勝10位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選19番手/決勝12位

 セルジオ・ペレス(レッドブル)はホームグランプリでの勝利を望んでいたが、フェルスタッペンに匹敵するパフォーマンスを発揮できなかった。決勝直後、メルセデス同士のバトルでラッセルがワイドになったことに乗じて3番手に浮上。しかしその後、自分よりハード寄りのタイヤを履いたハミルトンにチャレンジすることができずに終わった。

 予選でチームメイトに勝った角田裕毅(アルファタウリ)だが、決勝でリカルドの攻撃的な走りの犠牲になり、レースを走り切ることができなかった。そのインシデントにおいて角田が唯一良くなかったのは、ターン6に向けて、完全にドアを閉めておかなかったことだ。通常オーバーテイクがなされるポイントでなくても、リカルドのようなドライバーに対して、ドアを開けておくべきではなかった。とはいえ、インシデントの責任が全面的にリカルドにあったのは確かだ。角田はポイントフィニッシュを目指していた時に、そのインシデントによってリタイアに追い込まれることになった。

 アメリカGP後、アルピーヌはエステバン・オコン(アルピーヌ)のシャシーに問題を発見、メキシコで彼はまずまずの週末を過ごした。予選の大半でアロンソより速かったが、Q3で敗れて10番手。決勝スタートでノリスの前に出たのは、コンストラクターズ4位争いにおいて良いことだったが、オコンはファーストスティントの間ずっとボッタスを抜くことはできなかった。先にタイヤ交換を済ませたオコンは、ピットアウトしてきたボッタスをパス、そのころにはアロンソは遠ざかっていたものの、その後、アロンソはトラブルに見舞われた。オコンは前を行くリカルドとのギャップを10秒以内にとどめておくことができず、8番手という結果になった。

 ランド・ノリス(マクラーレン)は9位でフィニッシュ、ダブル入賞を達成したマクラーレンは、アルピーヌとのポイント差を7点に縮めることができた。ノリスは予選でアルピーヌ2台に勝ったものの、決勝スタートで順位を落とし、直線スピードが遅いためにオコンを抜くことができず、ファーストスティントの大半を10番手で走行した。比較的早めにピットストップを行った後、アレクサンダー・アルボンに引っかかり、アルボンがピットストップをしたころにはノリスのタイヤはベストの状態を過ぎていた。リカルドを前に出すようチームに指示された後、ノリスはボッタスの前に出てフィニッシュした。

 バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は予選でフェラーリ2台の間に割って入り6番手を獲得。しかし決勝スタートでルクレールとアロンソの後ろに下がってしまった。優れたトップスピードを持つアルピーヌを抜くことができないまま、フロントタイヤが終わってしまい、オコンのピットストップに反応するのが1周遅れ、さらにポジションを落とした。ハードタイヤが全く機能せず、ボッタスは最終スティントで10位を守るのが精いっぱいだった。

 風に非常に敏感なウイリアムズFW44に苦労し、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は予選Q1で早々に敗退。17番手から決勝1周目に19番手に落ちたアルボンは、5周目にケビン・マグヌッセン、9周目にはミック・シューマッハーを抜いて、38周目までステイアウト。ピエール・ガスリーの前に出た後、51周目にはセバスチャン・ベッテルを抜き、アロンソのリタイアで11番手に。しかしガスリーを抑えきることができず、12番手フィニッシュにとどまった。


■評価 6/10:フェラーリのパフォーマンス不足を受け入れられなかったルクレール

シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選7番手/決勝6位
ピエール・ガスリー(アルファタウリ):予選14番手/決勝11位
周冠宇(アルファロメオ):予選12番手/決勝13位
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン):予選17番手/決勝14位
ミック・シューマッハー(ハース):予選16番手/決勝16位

 シャルル・ルクレール(フェラーリ)はチームメイトとは異なり、この週末のフェラーリにはトップ争いをする力がないという事実を受け入れず、常に限界を超えてしまっていた。ピレリタイヤのテストに当てられたFP2で不必要なクラッシュを喫したことも、マイナスになった。予選ではスロットルレスポンスの問題で、ボッタスに敗れた後、決勝スタートで前に出て、最後まで6番手を走った。

 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)は、予選でチームメイトに敗れた後、決勝スタートで16番手に順位を落とした。ランス・ストロールに抑えつけられて苛立ちを募らせたガスリーは、ターン4でパスする際に、ストロールをコース外に押し出し、自分自身もコースから外れた。そういう場合、ポジションを戻さなければならないことは、チームから言われなかったとしても、分かっていたはずだ。5秒ペナルティを科されたのは当然のことで、ピットストップ後には16番手に戻ってしまったが、怒りが良い方に作用し、アグレッシブに戦い、ベッテルとアルボンを抜いて11番手まで上がったところでチェッカーを迎えた。

 一方、周冠宇(アルファロメオ)は、アルボンを結局抜けなかった。周は、路面のグリップの低さにチームメイトほどうまく対応できなかった。予選ではQ2には進めたものの、ボッタスとは0.7秒の差があった。決勝ではリカルドとほぼ同じ戦略で、ミディアムタイヤで長いスティントを取った後、ソフトに交換してプッシュしようとしたのだが、リカルドと異なり、周はタイヤを機能させることができなかった。ベッテルを抜いた後はポジションを上げられず、13位という結果にとどまった。

 日本とアメリカで好調だったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、AMR22が、高地に位置し、路面のグリップが低いメキシコのサーキットでうまく機能せず、スピードを欠いていることに落胆した。予選ではQ1で敗退、決勝1周目にふたつ順位を上げ、ピットストップまで周冠宇の後ろを走った。アンダーカットが成功し、ガスリーと周の前に出たが、ベッテルはソフトタイヤを機能させることができず、レース終盤にポジションを落とし、14位という結果に終わった。

 ミック・シューマッハー(ハース)は、決勝ではチームメイトよりも速かったものの、ハースVF-22はレースコンディションでは10台のなかで最も遅かった。予選ではケビン・マグヌッセンに負けてQ1で敗退。マグヌッセンがパワーユニット交換で降格されたため、15番グリッドからスタートしたシューマッハーは決勝を16位で終えた。


■評価 5/10:ペナルティのマグヌッセン、遅いマシンに苦労し下位から浮上できず

ケビン・マグヌッセン(ハース):予選15番手/決勝17位
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選18番手/決勝15位

 メキシコでハースのマシンに速さがなく、グリッドペナルティを受けなければならない状況のなかで、ケビン・マグヌッセン(ハース)には、通常ほどのモチベーションが見られなかった。それでも予選ではシューマッハーを破ってQ2に進出。スタートでウイリアムズ2台を抜き去るが、すぐにアルボンに抜き返され、ニコラス・ラティフィにもパスされた。2回ストップのラティフィに対し、マグヌッセンは1回ストップで前に出て、シューマッハーを追ったが届かなかった。

 ランス・ストロール(アストンマーティン)は最後尾グリッドから素晴らしいスタートを切り、1周目に15番手に。13周目にガスリーに押し出される形で抜かれた後、ギャンブルで早期ピットストップ。この戦略は、タイヤのデグラデーションが低かったために効果をもたらさず、結局チームメイトから10秒遅れの15番手に終わった。


■評価 4/10:ただひとり2周遅れにされたラティフィ

ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ):予選20番手/決勝18位

 ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)は週末を通して、20人のなかで最も遅かった。他者のペナルティで18番グリッドに繰り上がったが、スタートで結局最後尾に落ちてしまった。7周目にマグヌッセンを抜いた後、戦略で敗れ、タイヤの状態が良くなかったことで、唯一ウイナーから2周遅れでのフィニッシュとなってしまった。