WEC世界耐久選手権に参戦するTOYOTA GAZOO Racingのテクニカルディレクター、パスカル・バセロンは、2023年シーズンに向けてトヨタが新型車両を開発することを否定し、現行のGR010ハイブリッドを進化させて対応することを認めた。

■「“ジョーカー”の公表はしたくない」
 バセロンはトヨタが来季、いわゆる“GR020”を導入するという報道を否定。ル・マン・ハイパーカー(LMH)の技術規則は5シーズンのうちに5回以内の“エボ・ジョーカー”を認めていることから、その範囲内で車両を進化させることを認めている。

「我々の仕事は、エボルーション(アップデート)を行うことである」と、バセロンは、今週末の第6戦バーレーン8時間レースを前に、記者団に語った。

「いつもどおり、今年と同じように、来年も進化を遂げるだろう」

「我々はGR010を維持したまま、進化を遂げる。なぜなら我々はそれについて学んでおり、それをより良くすることにコミットしているからだ」

 トヨタは2022年シーズン、LMHマシンのアップデートを行った。その主な内容は、13インチ幅のサイズで戦ってきたミシュランのタイヤを、フロント12.5インチ、リヤ14インチ幅に変更したことである。

 また、第4戦モンツァ6時間レースに向けては、LMDhとのコンバージェンスに関するLMHの技術的なレギュレーションに適合させるため、新しいディファレンシャルを導入している。

 タイヤサイズの変更はジョーカーにカウントされないが、トヨタがこれまでいくつのジョーカーを使ったかについては、バセロンは言及を避けた。

「ジョーカーは使ってきているが、それを公表することはしたくない」とバセロンは言う。

「(2022年シーズンの)タイヤサイズの変更は、どういうわけか我々に課せられたものであるため、それについては(ジョーカーとは)状況が異なっている」

 ウイングレス・ハイパーカーとしてデビューしたプジョー9X8や、最近発表されたフェラーリ499Pのデビューが、今後のアップデートについてトヨタに影響を与えたかどうかという質問に対しバセロンは、LMHレギュレーションの下では手順が異なり、基本的にパフォーマンス関連の利点がすべて失われている、と述べた。

「(LMP1では)新しいクルマが出るたびに、空力エレメントを精査して、あれやこれやと工夫を凝らしていた」とバセロン。

「現在は、空力レベルが本当に分かりやすい(規則で空力効率が定められている)ので、この種の話はなくなった。誰もが、(定められた空力効率の)ウインドウの中にいることができるのだ」

「信頼性が高く、メンテナンスが簡単で、整備しやすいことが重要だ。性能面の達成についてFIAが厳しく管理する“エボルーション”においては、通常、その進化は予想の範囲内にある。従って、それ(エボルーション)を行うことが可能になっているのだ」

 バセロンは、2023年に向けた開発領域については言及しなかったが、2022年と比較して「より繊細な」進化を遂げるだろう、と述べている。

「我々が確約できるのは、エボルーションを準備し、その作業にあたる人々がいる、ということだけだ」とバセロン。

「間違いなく、今年とほぼ同じスタッフがクルマに携わり、今シーズンのような進化を遂げるだろう」

 ル・マン24時間のテストデーを除き、トヨタは今年の4月以降プライベートテストを実施していないと、バセロンは明らかにしている。アップデートされたGR010ハイブリッドは、2023年1月までテストを開始しないことになっているが、これはWECのテスト規制によるものと考えられている。