大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、ハースのチーム代表ギュンター・シュタイナーに注目した。

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 ギュンター・シュタイナーは、今やF1ファンからのカルト的な人気を誇るユニークな存在になっている。いじられる機会が増えつつある彼だが、もちろん、ハースF1代表としてチームの向上のために力を注ぎ、一度たりとも平穏にF1レースウイークエンドを過ごしたことがないのではないかと思うほど、さまざまな問題に対処し、ハードワークに勤しんでいる。


 今年はまず、開幕前にロシアのウクライナ侵攻の影響で、タイトルスポンサー、ウラルカリとレースドライバー、ニキータ・マゼピンの契約問題を解決しなければならなかった。両者との契約を打ち切った後、シュタイナーは商業チームとともに、新たなスポンサーを見つけるべく、選択肢を探り始めた。

 8月のベルギーGPの週末には、金融サービス企業ハンテック・マーケッツとの巨額のスポンサー契約を発表。ハースはそこで満足することなく、さらにその先のタイトルパートナー契約に向けて突き進んだ。そうしてチームのホームグランプリであるアメリカGPが開催されるオースティンで、シュタイナーは、マネーグラムとの契約を華々しく発表、2023年からチームの名称が『マネーグラム・ハースF1チーム』に変わることを明らかにした。

 マネーグラムはデジタル送金サービスの業界の大手企業であり、かつてのタイトルパートナーよりもはるかに大きな安定性をハースに提供してくれるだろう。マネーグラムにはF1から何を得たいかという明確なビジョンがあり、そのためにシュタイナーは契約をまとめるのに苦労した。しかしそれだけ真剣なパートナーを獲得したことは、ハースにとって大きな力になるはずだ。

 過去にハースはタイトルスポンサーに関して何度かトラブルに遭遇した。しかし今回の契約は、そういう不安なく、発表できるものだったに違いない。

 もちろんアメリカにはハースのファンが大勢いるが、最近ではシュタイナー人気が凄まじい。オースティンではシュタイナーの顔や、彼の発言をプリントしたTシャツを多数目にした。

 ファンから大きな関心を集めるなかで、ハースはアメリカGPで、オーストリア以来の入賞を達成した。ケビン・マグヌッセンが1回ストップを成功させ、セバスチャン・ベッテルとのスリリングなバトルの後に、2点を稼いだのだ。

 だがシュタイナーは、アメリカGP決勝後、入賞の喜びに浸る前に、ある行動に出た。それは、FIAに対して、問題提起をすることだった。

 ハースはレースコントロールやスチュワードの判断の一貫性のなさに強い不満を覚えた。マグヌッセンは今年、マシンが破損した状態で走行しているとして、ブラック&オレンジ・フラッグを3回提示され、ピットに戻って修理を行わなければならなかった。しかしアメリカGP決勝で、フェルナンド・アロンソとセルジオ・ペレスは、壊れたマシンで走り続けることが許され、その結果、ポイントを獲得することができたのだ。

 以前のマグヌッセンと似た状況のペレスには、何のメッセージも示されなかった。アロンソにいたっては、ウイングミラーが緩み、その後脱落した状態で、長く走り続けることが許された。ハースはこれについてレースコントロールにメッセージを送った後、彼らの判断の一貫性のなさにハイライトを当てるべく、レース結果に抗議することにした。

 ペレスについては抗議は認められなかったものの、アロンソに対する抗議は最初は成功し、アロンソはペナルティを受け、マグヌッセンは順位を繰り上げられた。しかしアルピーヌが、ハースは抗議を定められた時間内に行わなかったと主張、結局これが認められて、リザルトが元に戻され、マグヌッセンは9位となった。

 この結果にシュタイナーが憤ったかというと、彼は極めて冷静だった。この抗議の本来の意図は、マグヌッセンのポジションを上げることではなく(もちろん上がるにこしたことはなかったが)、ハースが過去に全く異なる扱いを受けていたということを広く伝えることだった。そしてその目的は達成できたのだ。

 アメリカGPの一件が片付くと、ハースはメキシコでの戦いに集中した。高地メキシコではマシンの競争力がなく、苦しい週末になった。それでもチームの将来が安定し、今後向上が見込めることで、シュタイナーはポジティブな気持ちで残り2戦に臨み、今シーズンを締めくくることができるのではないだろうか。