土曜日の決勝を前に、金曜夜に予選のセッションが行われたWEC第6戦バーレーン8時間レース。ポールポジションは、2番手以下を大きく引き離すタイムで、トヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッドを駆るブレンドン・ハートレーが奪った。

 最終決戦を翌日に控えたバーレーン・インターナショナル・サーキットのパドックから、予選や来季以降に向けた最新情報など、各種トピックスをお届けする。

■7号車を「コピー&ペースト」したトヨタ8号車
 予選最速タイムをマークしたトヨタ8号車は、アルピーヌと同点で並んでいたドライバーズ選手権争いで1点を追加することができた。

 しかしハートレーは、フリー走行でマシンのセットアップに苦労していた8号車陣営にとっては、「一筋縄ではいかない週末」であったと述べている。

「FP3ではかなり苦労したので、ときどきやる“コピー&ペースト”をしたんだ。7号車が(予選で)違う方向へと行ったのはラッキーだった。FP3では間違いなく、彼らの方がずっと強かったから、彼らのセットアップを完全にコピーしたんだ」とハートレーは明かした。

「それが姉妹車を持つ良さであるし、正しい方向性を見つけてくれた彼らに感謝しているよ」

■フェラーリのスピンを「偶然が多い」と訝しむポルシェ
 11ポイント差でLMGTEのドライバーズ選手権を争うAFコルセ51号車フェラーリ488 GTE Evo(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド)と、ポルシェGTチーム92号車ポルシェ911 RSR-19(ケビン・エストーレ/ミカエル・クリステンセン)が、予選からヒートアップしている。

 エストーレは、GTE予選の終了間際にスピンしたピーエル・グイディを問題視している。ピエール・グイディは、クリステンセンのドライブする92号車のすぐ近くでスピンし、その結果クリステンセンはベストタイムを更新することができなくなったのだ。

「ミカエルが第1セクターでタイムアップし、第2セクターで最速を記録した後、第3セクターで前のフェラーリがスピンしたんだ」とエストーレは語る。

「僕としては、これは通常のことではない。予選の最終ラップで、しかもポールを目指してタイムを向上させているマシンの目の前で、LMGTEプロのマシンがスピンした例を探し出すことは、長い時間をかけても無理じゃないかな」

「偶然の一致が多くて、ちょっと不思議な感じだね。クルマに乗っていたわけではないのでよく分からないけど、ちょっとおかしいと思っただけだよ」

 フェラーリの広報担当者によれば、ピエール・グイディのスピンは、ポールポジション争いのなかで激しくプッシュした結果だったという。

 この2台は昨年最終戦でもタイトル争いを演じ、最後は残り12分での接触により勝負が決していた。

 なお、92号車は10分間の予選中にピットに入ってタイヤを交換しているが、エストーレによれば、これはポルシェがあらかじめ決めていたことではなく、クリステンセンのラップがポール獲得に充分な速さでないことが明らかになった時点で、判断されたことだと説明した。

■ポルシェ、残るLMDhワークスドライバーを14日発表へ
 そのLMGTEプロクラスは、土曜日の決勝レースをもって終焉のときを迎える。今回の最終レースに出場するポルシェ911 RSR-19の少なくとも1台は、ポルシェ・ミュージアムに送られることが「確実」だと、ポルシェ・モータースポーツ責任者のトーマス・ローデンバッハは語っている。

 またローデンバッハは、2023年にポルシェ963を用いたポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのワークスプログラムにおける、残るふたりのドライバーが週明けの月曜日に発表されると語った。

 既報のとおり、元ファクトリーのエースで、今季限りでコルベット・レーシングを離脱するニック・タンディがそのうちのひとりあるという見方が強い。また、パスカル・ウェーレインとフレデリック・マコウィッキは最近、セブリング・インターナショナル・レースウェイでの36時間耐久テストでポルシェ963をドライブしたことが分かっている。

 2023年、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツはWECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の双方に参戦するが、リザーブドライバーについてはまだ決定しておらず、それぞれに他方のシリーズのレースドライバーがリザーブとして待機する可能性があると、ローデンバッハは示唆している。

■LMP2の技術規則が延長か
 複数のパドックの関係者の話によれば、LMP2のテクニカルレギュレーションが2025年シーズンいっぱいまで延長された模様だ。FIAとACOは、この件に関してコメントを控えている。

 ユナイテッド・オートスポーツの共同オーナー兼マネージングディレクターであるリチャード・ディーンは、LMDhマシンが登場する中でLMP2規定1年延長することは「賢明なこと」であると語った。

「LMP2シャシーのライセンス保持者である4マニュファクチャラーすべてがLMDhのプロジェクトに深く関わっている状況で新しいLMP2マシンを導入することは、彼らにとって大きな要求だと思う」とディーンは語っている。

 しかしながらこの変更は、WECにおけるLMP2マシンの適格性に影響を与えないと考えられており、現時点でWECにおけるLMP2クラスは、2023シーズン終了までしか存続が確定していない。まだ発表されてはいないが、WECは2024年にはハイパーカーとまだ名前の決まっていないプロ/アマかつGT3車両ベースのカテゴリーという、2クラスのみの構成になるとの見方が強い。

 その場合、2024年以降、LMP2車両はELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズなどに戦いの場が移されることになる。

■2023年の各シリーズ日程重複問題
 またディーンは、2023年のIMSAとバッティングするWECのポルティマオ、およびモンツァ戦に向けて、同チームのドライバーであるフィリペ・アルバカーキと、トム・ブロンクビストの代役ドライバーの手配を暫定的に解決したと明かした。

「もしこのまま(2024年カレンダーで)8戦目が追加されれば、バッティングを避けるのはますます難しくなるに違いない」とディーン。

「マニュファクチャラーが(LMH、LMDhに)参入してきたことで、トップレベルのドライバーに対する需要が高まっているため、チームにとってはさらに大きな問題が発生することになる」

 また、IMSA開幕戦のデイトナ24時間レースについては、同じ週末にサウジアラビアで開催されるフォーミュラE世界選手権のレースとバッティングしている。このことから、ニコ・ミューラーはデイトナ24時間への出場を否定しているほか、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、レネ・ラスト、ロビン・フラインスら、近年デイトナに出場してきたドライバーたちにも影響を与えそうだ。

■F2ドライバーがルーキーテスト参加へ
 WECバーレーンの決勝翌日に予定されているルーキーテストに向けては、さらなるエントリーリストの更新がありそうだ。

 すでにプジョー9X8をドライブ予定だったストフェル・バンドーンは病気のために参加を見送ることが明らかになっている。

 一方、FIA F2ドライバーであるマーカス・アームストロングが、ルーキーテストでアルピーヌA480・ギブソンをドライブする予定のようだ。アームストロングは今週のレースウイークから、チームに帯同している。

■併催レースと、サーキット上空の航空ショー
 今回のバーレーン8時間レースでは、FIAワールド・ツーリングカー・カップと、ポルシェ・スプリント・チャレンジ・ミドルイーストがサポートレースとして併催されている。

 来季のLMGTEアマクラスで、ベン・キーテイングとシボレー・コルベットC8.Rをシェアする予定のニッキー・キャツバーグは、ワールド・ツーリングカー・カップでBRCヒュンダイNレーシングチームのエラントラN TCRを走らせている。

 また、グッドイヤーは今週末、ワールド・ツーリングカー・カップとWECのLMP2、ふたつのカテゴリーにタイヤを供給する。グッドイヤーのヨーロッパのモータースポーツ部門は、同じチーフエンジニアを両プログラムに配置しており、他のスタッフも両シリーズにまたがって参加している。

 木曜日の夜には、『第1回バーレーン・メディア・カートレース』が今週末のWEC決戦の会場に隣接するバーレーン・インターナショナル・カート・サーキットで開催された。ポルシェのメディアチームが採点上の理由で優勝を逃した後、フランスのフォトエージェンシーDPPIがウイナーとなった。

 なお、走行前日の水曜日からサクヒール空軍基地でのバーレーン国際航空ショーは続いており、予選日となった金曜日も、サーキット上空では展示飛行が行われた。

 この航空ショーの一環として、英国空軍『レッドアローズ』がサーキット上空で行った壮大な映像が公開されている。

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 WEC第6戦は11月12日(土)、8時間という長丁場のレースの決勝を迎える。獲得ポイントは通常の1.5倍。すべてのタイトル争いが決着する戦いは、現地時間14時(日本時間20時)にスタートのときを迎える。