F1第21戦ブラジルGPの予選で、ハースが的確な判断でケビン・マグヌッセンの初ポールポジション獲得をサポートしたのに対して、やってはならないミスを犯してシャルル・ルクレールを予選10番手に終わらせたのがフェラーリだった。

 Q3が始まる直前、インテルラゴスに雨雲が迫っていた。ここでフェラーリはルクレールにインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤを履かせてコースインさせた。

 レーシングディレクターであるローレン・メキースは、「チームは雨が差し迫っていたため、インターに賭ける価値があると感じた」と説明した。ルクレール以外の9人はソフトタイヤを履いていたため、雨が降って来れば、インターを履いたルクレールが有利になると考えたのだろう。

 しかし、この戦略には大きな間違いがあった。それはインターはドライタイヤよりも速く走ることができないという鉄則を忘れていたことだ。

 確かにメキースが言うように、Q3では雨が降る可能性は高かった。しかし、開始直前の段階でまだ降っていない。この状態で、仮に雨が降ってきたとしても、路面はすぐにはウエットコンディションにならず、ダンプ(半濡れ)状態となるだろう。この状況で速いのはインターではなく、ドライタイヤだ。

 フェラーリにとって最も理想的な展開は、開始直後にやや強い雨が降ってきて、すぐに路面がウエットになったときだけだった。しかし、そうなれば、ドライタイヤで出た何人かはコースアウトするなどして赤旗が出る可能性が高く、インターを履いたルクレールがタイムアタックを完了できなかった可能性が高い。

 またドライタイヤでコースインしたドライバーにとっては、コースインした後に雨が降ってきたら、ピットインしてインターに履き替えて、再びタイムアタックを行えばいい。インターでのタイムアタックは雨量にも左右されるが、多くの場合、1ラン目が最も速いということはなく、何周かアタックして走行ラインの雨が弾き飛ばされたあたりがベストタイミングとなるため、インターに履き替えるのは雨が降ってきてからでも遅くない。

 逆に、雨が降っていない状況であるにも関わらず、インターで出たルクレールは得るメリットよりデメリットのほうが大きい。なぜなら、コースインした後、しばらくしてから雨が降ると、最初の数分間にドライタイヤで記録したタイムを、インターのルクレールが上回ることは12分間のセッションではできないからだ。

 これは決して結果論ではなく、雨が降りそうな場合のタイヤ選択の鉄則で、じつはフェラーリは4年前にも同じミスを犯している。それは2018年の日本GPだ。

 Q2終了後ににわか雨が降り、すぐに止んだ。しかし、雨が再び降る可能性があるなかで、Q3が開始されようとしていた。路面はまだ乾き切っていない。この状況で真っ先にピットの出口に向かって行ったフェラーリのマシンには、インターミディエイトタイヤが装着されていた。

 グリーンライトとともにコースインしたセバスチャン・ベッテルだったが、走行ラインはインターミディエイトで走るには乾きすぎていた。タイムアタックを行うことなく、ピットイン。ドライタイヤに履き替えて出て行ったベッテルだが、タイムアタックを開始したころに再び雨が降り始めて、まさかの9番手で予選を終えた。

「僕たちはもっと早く雨が降ると予想していたけど、そうならなかった。それだけのこと。こういうコンディションでは、判断が当たることもあれば、簡単にミスにもつながる。だから、誰も責められない」と、当時フェラーリに在籍していたベッテルはチームをかばっていたが、メルセデスのストラテジーをコントロールしているジェームス・ヴァレスは「あれは運ではなく、完全な戦略ミス」とフェラーリのミスを指摘していた。

 当時チーム代表を務めていたのはマウリツィオ・アリバベーネで、現在はマッティア・ビノット。チーム代表が変わっても、同じようなミスを繰り返すのは、問題の根本がチーム代表そのものにあるのではなく、チームメンバーの資質にあるのではないかと思わざるを得ないような、今回の失態劇だった。