F1第22戦アブダビGPのスタート前の段階で、角田裕毅(アルファタウリ)の持ちタイヤはハード1セット(新品)、ミディアム1セット(新品)で、ソフトは新品が1セット、中古が4セットだった。

 角田はスタート前の段階でチームと2ストップで行くことを決めていた。そうなると、当然3セットのタイヤを履くことなり、それはソフト、ミディアム、ハードのすべてのコンパウンドを使用することを意味していた。

 最初のスティントで角田が選択したコンパウンドはミディアム。スタート時の蹴り出しと燃料満タン時のデグラデーション(劣化)を考えると、最も妥当な戦略であることは、20人中17人がスタートでミディアムを履いていたことからもわかる。

 ミディアムタイヤでスタートした角田は、スタート直後のポジション争いでもひるむことなく、11番手をキープ。ミディアムを選択した戦略がまずは功を奏した。

 しかし、14番手からスタートして、1周目に12番手まで追い上げてきたランス・ストロール(アストンマーティン)に13周目にピットインされる。アルファタウリはすかさず14周目に角田をピットに呼ぶが、アンダーカットを許してしまう。

 1回目のピットストップ後の第2スティントで角田が装着したタイヤはハード。これも同じ2ストップ作戦を採ったストロールも同様であることから、妥当な判断だったと言える。

 しかし、角田の第2スティントのペースはストロールに及ばず、その差が開いていく。差が8秒になった38周目にチームは角田をピットインさせ、タイヤを交換。このときはいたのがソフトだった。手持ちのタイヤの状況を考えると、すでにハートとミディアムは使い切っていたため、選択肢はソフトしかなかった。

 その点では、角田が「手持ちのタイヤで新品がソフトしかなかったというのと、ポイントを獲るためには追い上げなければならなかったので、あれがベストな判断だったと思います」と言うように、この選択にミスはなかった。

 しかし、このレースでデグラデーションが最も大きいソフトを履いたのは3人しかおらず、そのうちふたりがアルファタウリ勢だったことを考えると、週末のタイヤの使い方を含めたレースでのタイヤ戦略に疑問を投げかけざるを得ない。

 10位に入賞したセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)から、6秒遅れでチェッカーフラッグを受けた角田。「全力は出し切れたと思う」と語った角田だが、ポイントまであと一歩届かなかったこの光景を今シーズン何度見てきたことだろう。

 来シーズン、角田が飛躍するためには、角田の成長だけでなく、チームにもさらなる成長が必要となる。そのために、ピエール・ガスリーが去った後、角田にかかる期待は大きい。