2023年、WEC世界耐久選手権は既報のとおり1イベント増となる全7戦のレースを行う。ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズなど、多くのドライバーや関係者がエントリーする他シリーズとの関係などから、特にシーズン前半の日程が非常に過密になってくるなか、これまでにない準備を強いられているチームもあるようだ。

 ユナイテッド・オートスポーツは、2023年前半にはAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズ、そしてWECとELMS開幕戦に参戦するため、週末を返上して多忙なスケジュールをこなしている。

 3つのシリーズにそれぞれ2台のオレカ07・ギブソンLMP2を投入する予定のチームは2月、アラブ首長国連邦のドバイ・オートドロームとヤス・マリーナ・サーキットにおける、2連続/4ラウンドのAsLMSシーズンから2023年シーズンをスタートさせる予定だ。

 WECはその3週間後にアメリカのセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われる『プロローグ』テストから公式プログラムがスタートし、翌週には開幕戦セブリング1000マイルレースが開催される。

 そして4月16日のポルティマオ6時間レースを皮切りに、ヨーロッパでの最も忙しい期間がスタートする。翌週4月23日にバルセロナで開幕するELMS、そしてWECスパ、ELMSイモラと、2シリーズで4週間連続でのレース開催となるのだ。

 ユナイテッドはこれまで、ELMSとWECのヨーロッパラウンドでサポート機材を共有してきたが、来年に向けては、カレンダーの関係からインフラを強化する必要があると、チームの共同オーナー兼マネージングディレクターのリチャード・ディーンは言う。

「我々が、それをどのようひやりくりするかを考えなければいけないのは明白だ」とディーンは語った。

「クルマ、トラック、スタッフ、機材、それらのどれについても、共有することはできない」

「クルマは共有しない。WECとELMSで同じクルマを走らせるチームはどこにもいないだろうし、それは不可能だ」

「だが、ヨーロッパのラウンドでは、我々はELMSのLMP2のキットのいくつかをWECでも使ってきた」

「前もって計画を立てる必要があるんだ。少しばかりの投資で、新しいキットや機材を入れなければならない」

「(IMSA開幕戦の)デイトナ24時間レースに出られない理由のひとつは、これらへの投資や準備をするためなんだ」

■“ポルティマオの2週間後にスパ”は「理解し難い」
 7つ目のイベントが追加されたことにより、WECは開幕3戦を3月中旬からの6週間で行う一方、第4戦ル・マンの後の終盤3戦に4カ月を費やすことになる。

 これまで3回の世界タイトルを獲得したトヨタGAZOO Racingのセバスチャン・ブエミは、モンツァでの第5戦から第7戦バーレーンまでが17週間ある一方で、シーズン前半前の日程が「詰まりすぎている」ことを疑問視するドライバーのひとりである。

 ブエミはまた、春のうちはABB FIAフォーミュラE世界選手権へのフルシーズン参戦と、WECを両立させなければならない立場にある。

「もちろん、簡単なことではないと言わざるを得ない。より多くのレースがあれば、(日程の調整は)さらに難しくなるものだ」とブエミ。

「僕はすべての側面を知ってるわけじゃないから、それについてとやかく言うのはもちろん難しいことではあるけど、それでも『ポルティマオのレースがスパの2週間前にある』というのは理解し難いことだ」

「そして、モンツァが終われば、翌年の3月までには基本的に2レースしかない。ここは『9カ月で2レース』という感じだ」

「ちょっと前半に詰め込みすぎじゃないかと感じるね」

「(2022年までの)セブリング、スパ、ル・マンという流れは、いい感じだった。僕なら、もっと後に(7番目の)レースを追加しただろうね」

 WECはこのスケジュールについて、春にセブリングからヨーロッパへ、そして夏にはモンツァから富士へと機材を海上輸送する必要があり、後者には2カ月のギャップが必要というロジスティクス上の理由を挙げている。

 ブエミは「輸送の問題は理解しているし、よりコストを下げようとしているのも分かる」と理解を示す。

「船便にすることで、(ヨーロッパからの)出発を早めなければならない。でも僕が思うに、モンツァの後にヨーロッパでのレースをひとつ追加していいと思う。それによってバーレーンでの最終戦を2〜3週間遅らせて11月末にして、富士も少し遅い時期にしてもよかった」

「いつも富士(の日程)が問題なんだ。開催時期を遅らせると、天候が悪くなるからね」

■IMSAとの日程重複も問題に
 WECとフォーミュラEのレースは、両シリーズの合意により日程のバッティングはないが、ユナイテッド・オートスポーツのディーンは、WECのスケジュールで最大の問題は、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップのカレンダーとバッティングするふたつのイベントだと考えている。

 ユナイテッドのドライバーのうち、フィリペ・アルバカーキとトム・ブロンクビストのふたりは、ポルティマオとモンツァでのWECレースよりもウェザーテック選手権への参加を優先しなければならず、この状況は他の複数のドライバーとチームにも影響を与えることになる。

「私のなかで問題として大きいのは、IMSAとの間にあるふたつのバッティングだ」と、ディーンは言う。

「それが(解決すべき)最優先事項だ」

「2週連続のレースであれば、我々は対処することができる。キットへの投資をもう少し増やして、準備を進めている。だが、同時にふたつの場所にいることは不可能であり、ドライバーやその他すべての面で衝突が生じてしまうんだ」