2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。シーズン最終戦を前に、ハースは2023年にミック・シューマッハーに代えてニコ・ヒュルケンベルグを起用することを発表した。これまで“スーパーサブ”として各チームに貢献してきたヒュルケンベルグのF1フル参戦は2019年以来となる。

 一方ハースでのラストレースを迎えたシューマッハーは、苦戦の予想されたアブダビでの予選でチームメイトを上回る走りを披露。またハースはアルファタウリとのコンストラクターズ選手権争いを制し、8位を獲得した。そんなアブダビGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

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2022年F1第22戦アブダビGP
#47 ミック・シューマッハー 予選13番手/決勝16位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選16番手/決勝17位

 アブダビGPの前に、2023年はミックに代えてニコ・ヒュルケンベルグを起用することを発表しました。チームとしては、F1の経験があり、安定してクルマの限界をきちんと示してくれるドライバーを起用したいという意向がありニコを選びました。

 ニコはグランプリ後のタイヤテストで初めてVF-22を走らせましたが、経験が豊富なので、落ち着いて走り、精度の高いフィードバックをくれました。ケビンはドライビングスタイルがひとつしかないタイプのドライバーで、別の走らせ方を求められた時に適応できないことがあるのですが、いい意味でニコのドライビングスタイルはケビンと異なるので、そういう意味でも楽しみです。

 ただし、ニコがどれくらい速いのかはまだわかりません。テストでは110周走りましたが、80周を超えたあたりから疲れている様子でした。彼が最後にF1に乗ったのは8月のハンガロリンクでのタイヤテストなのでこれは仕方ないですね。体つきを見ても、やはり現在は走っているレーシングドライバーの体ではないので、冬のトレーニングキャンプでしっかりと体を作ってきてほしいと思います。実際に出したラップタイムは、ほぼ同じ条件で走ったピエトロより0.2秒ほど速かったですが、これはあまり気にしていません。今回の走り方を見ても、ソフトタイヤを履いても全開で予選練習をしているという感じではなかったので、本当の彼の速さがわかるのはバーレーンでのプレシーズンテストになります。

 一方のミックにとっては、このアブダビがハースでの最後のレースになりましたが、予選はよくやってくれたと思います。Q2の最後のアタックではターン9でアンダーステアになってタイヤが滑り、タイヤの表面温度が上がってターン13、14でタイムロスがありましたが、それでもVF-22の特性と合わないこのアブダビで13番手とよく頑張ってくれました。

 ケビンが予選でタイムを伸ばせなかったのは、アウトラップ終盤の渋滞によりタイヤが冷えてしまったからとコメントしていましたが、実際はそうではなさそうです。というのも最後のアタックでは、ターン1でブレーキを踏んだ際にクルマの止まりが悪くて、仕方なくブレーキをリリースしてターン1に進入したらすごくグリップしたというんです(実際にミックより速かったです)。

 その後ターン9あたりでようやくタイヤが温まってまともに走れたと本人は言っていたのですが、実はケビンがミックに対してタイムロスしているのはターン9以降で、あまりデータとコメントが一致していません。タイヤのデータを見てもケビンのタイヤがミックのタイヤより冷えていたということはないんです。

 ですから、実際にタイヤが冷えて初期グリップが悪かったというよりは、おそらくアウトラップ中の渋滞で「タイヤが冷えて嫌だな」と感じて、そこから思い通りに走れなかったことが原因でしょう。ケビンのいう感触の良し悪しはこんな感じで時折り間違っていることがあるんです。反対にミックのフィードバックは的確でした。

 決勝レースの戦略は、選手権8位を争っていたアルファタウリに対して“どうすれば大負けしないか”を意識して決めました。最悪の場合はアルファタウリの1台が8位に入賞した時に、ウチのどちらかが9位にいなければ選手権の順位が逆転してしまう状況だったので、予選11番手の角田(裕毅)が一番の脅威でした。13番手のミックは常にこの辺りのクルマについていかなければいけなかったのですが、残念ながらやはりVF-22とコース特性が合わないこともあってその速さはありませんでした。

 ケビンがハードタイヤでスタートしたのは、1ストップにするか2ストップにするかの選択肢を持てるのと、そうしないとポイントを獲るのが難しいからです。17番手のピエール・ガスリーが角田と同じようにスタートでミディアムタイヤを履くことはないので、ハードでスタートしてもソフトでスタートしてもカバーできるようにと考えていました。しかし、残念ながらアブダビではアルファタウリには敵わなかったです。

 ケビンは無理やり1ストップにしたようなところもあって、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)に抜かれた後に2ストップ勢にも抜かれてかなりタイムロスをしてしまいました。だからボッタスに抜かれた段階でピットストップをして、2ストップに戦略を変えていれば、13位か14位あたりでフィニッシュできていたのではないかと思います。上位の人たちはクルマにダウンフォースがあるのでタイヤにも優しいし1ストップで正解だと思いますが、中団以降は2ストップの方がよかったですね。

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第17回後編】に続く