12月1〜4日にアデレードで開催されたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第13戦『VALOアデレード500』は、シリーズの盟主として長きに渡る栄光と勝利の歴史を積み重ねてきた“ホールデン”最後のレースに。その大事な1戦に向け特別仕様リバリーで挑んだチャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/ホールデン・コモドアZB)が、土曜レース1で僚友ニック・パーカットを従え、ブランドへの華向けを完璧な形で飾る“フェアウェル・ワン・ツー・フィニッシュ”を達成した。

 さらに明けた日曜のシーズン最終ヒートは、今季トップカテゴリーへのデビューを飾ったレッドブル・アンポル・レーシングのブロック・フィーニー(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)が、恩師ジェイミー・ウインカップの前で歓喜のシリーズ初優勝を獲得。自身にとってもホールデンにとっても「すべてのピースが集まった」と語るパーフェクトな結末となった。

 すでにオーストラリア市場でもブランド廃止が決まっているホールデンにとっては、新車両規定“Gen3”に則して『シボレー・カマロZL1スーパーカー』と第7世代『フォード・マスタング・スーパーカー』が来季より導入されるのに伴い、このアデレード市街地での1戦がスーパーカーでの最後の舞台となった。

 その重要な1戦に向け、陣営内でファクトリーチームを務めるトリプルエイト・レース・エンジニアリングと、かつてのワークス指定チームであるウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッドは、ともにこの週末をホールデン・トリビュート・カラーの特別仕様コモドアZBで戦うことを表明した。

 しかし、かつてのF1開催トラックでもある有名な市街地コースは、シリーズにとっても2020年以来のイベント開催となり、その間に再舗装を受けた路面の変化が週末の各陣営を悩ませることに。

 その最大の被害者となったのは、前戦で自身3度目のドライバーズチャンピオン獲得を決めている王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レース・エンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)で、現行Gen2時代にもっとも成功を収めた男は、ホールデン最後の1戦で思わぬ状況に陥ってしまう。

 土曜予選の最終アタックに向かった現役チャンピオンは、その大事なラップで最速のセクタータイムを並べたものの、最終コーナーでミスを犯してリヤがロックアップ。そのままグラスエリアに突入し、コントロールを保ちながらも後続のアタックを妨害せぬよう慎重な復帰に時間を要し、予選トップ10シュートアウト進出を逃したばかりか、レース1は最後尾からの追い上げを強いられる展開となる。

 そのまま現地15時から開始されたレース1は、78周のうち3回のセーフティカー(SC)が出動する荒れた展開となり、燃料搭載量の相違も含めて、そのいずれのリスタートでも主導権を握ったモスタートが優位に立つ。

 シュートアウトで最前列を獲得したキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)と、フロントロウ発進を決めたスコット・パイ(チーム18/ホールデン・コモドアZB)の勝負でスタートが切られると、序盤からウォールの餌食になるマシンが続発。そんななか最後尾から怒涛のチャージを開始した王者SVGは、わずか2周で8ポジション、さらに7周目までに2台を仕留め、首位から12秒差圏内で喰い下がる驚異的パフォーマンスを見せる。

 周囲がルーティンに飛び込み燃料給油を始めるなか、フロントのアンチロールバーに不調を抱えながら暫定首位まで到達したSVGだったが、自身のセカンドスティントではふたたびグリップレベルの上昇した路面に足元を掬われ、最初のリスタートこそ力強さを維持したものの、続くターン5では前方のモスタートにアウト側から仕掛けて自滅。

 一時的にタイヤバリアに衝突して20番手まで後退すると、その後のターン13でフェンスにスライディング状態で激突し、2回目のSCピリオドの引き金に。この週末を1号車として戦うコモドアZBは、このアクシデントで右フロントを中心に大破し、最終的にリタイアに追い込まれる。

 これで最終スティントに向けウォーターズとパイに照準を絞ったモスタートは、前方2台に対し最小限の燃料搭載量を確保することに集中していく。するとウォーターズは前走者のパッシングで焦り、オーバーランと接触からのペナルティと、自身のハードワークを台無しにするエラーを頻発。一方のパイも、ブライス・フルウッド(ブラッド・ジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)にヘアピンで撃墜され、パワーステアリングを失って優勝争いから追放されることに。

 これでライバルの消えたモスタートは、3秒後方の2番手に僚友パーカット、3番手にフォード陣営最上位に浮上したジェームス・コートニー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)を引き連れトップチェッカー。大事な週末で今季5勝目、自身のアデレード市街地初優勝を飾ってみせた。

■ルーキーのフィーニーが最終戦で初優勝を記録

「スタートから“エッジの効いた”展開で、周囲の何台かと肘を出し合うような状態だった。本当にタフなレースだったけど、こうした250km戦はみんなが思うほど簡単じゃないんだ(笑)。そこでチームとホールデンのためにワン・ツーが達成できたのは本当に素晴らしいことだし、ニック(・パーカット)にとっても、地元でチームとの初表彰台が飾れて、彼が過ごした1年に対しても良い結果になったね」とモスタート。

 明けた日曜の今季最終レース2では、同じく2回のSC発動の展開をチャンピオンチームが読み解き、3番手発進だったフィーニーが最初のSCを前にルーティンを済ませ、ウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)との一騎打ちに持ち込んでいく。

 背後のルーキーに対し、ヘアピンでロックアップしてオーバーシュート気味になったデイビソンは首位から陥落。終盤は前日勝者モスタートが背後に迫るなか、落ち着いたドライブでポジションを守り抜いたフィーニーが、2022年シーズンの最終レースでスーパーカー初勝利を挙げる結果となった。

「僕は、その瞬間が来ることを知っていた。ここまで幾度かの経験から、それらのケースではすべて『あとはピースを組み合わせるだけだ』と考えていた」と、レース後に胸中を明かしたフィーニー。

「レースで勝ち、あらゆる方向に引っ張られ、どれだけ多くのことが起こるか分からなかったから、とてもクールだった(笑)。すべてのファンの前に出て、みんなが歓声を上げ、ホールデンに素晴らしい見送りができたのは、とても特別な瞬間だね」と続けたフィーニー。

「シーズンを通して初勝利を収めたいと思っていたし、フィールドの先頭はかなり気分が良かった。おそらく、いつもの中段の群れにいるよりも落ち着いていたと思う。チームも無線で僕を落ち着かせてくれたしね。昨日は2回もフェンスにぶつけて落ち込んだが、それがなければ速いクルマを持っていると確信していた。シュートアウトの中で良いラップを重ね、今日はすべてのピースが揃ったよ」

 これでホールデンがシリーズに別れを告げるとともに、複数のマニュファクチャラー参入も経験した“Gen2”時代が幕を閉じ、シリーズは2023年3月10〜12日の『ニューキャッスル500』で新時代幕開けの日を迎える。