“壁走り”禁止を明文化。ホイール脱落の厳罰緩和と安全対策向上も。NASCARが2023年規約を一部改訂
昨季2022年より導入された通称“Gen7”ことNext-Gen車両により、これまでの5穴ホイールボルトからシングルラグナットのセンターロック方式へと変更されたカップ車両に対し、従来は厳しいペナルティシステムが適用されてきた。
昨季のレース中にホイールが脱落した場合は、いつ、どこでホイールが外れたかに関係なく、違反したチームクルーは自動的に4レースの出場停止処分を受けていたが、新たな2023年規定ではピットロード、レーストラックでホイールが外れたかどうか、またはレースがアンダーグリーンかイエローコーション下にあるかどうかに基づいて、以下の罰則が適用される。
<ホイール脱落時>
●イエロー時のボックス前後:フィールド最後尾からレースを再開
●グリーンでのピットレーン:ドライブスルー・ペナルティ
●ピットレーン以外での脱落:2周のペナルティ、クルー2名に2戦の出場停止
出場停止処分の対象となるクルーがタイヤチェンジャーかジャッキマンかの特定はなく、チームによる任意の選抜となりそうだが、昨季はホイール脱落により14件のペナルティが発生。しかし“再犯”はわずか1チームと事態の改善が顕著だったことが、ペナルティ緩和の要因になったと考えられる。
またエクスフィニティ・シリーズやクラフトマン・トラック・シリーズの単独開催イベントを除き、ロードコースでは各ステージ間のブレイクはなく、ショートオーバルを中心にいくつかのイベントでは、雨天の遅延を減らすためウエットタイヤを導入することが認められた。
そして昨季プレーオフを目前に控え、その結果にも大きな影響を及ぼしたチャスティンの『ホワイトフラッグ“5台抜き”ゲーミング・ムーブ』は、当時NASCARのオフィシャルにより、レース終了後の正式結果で「お咎めなし」として認められていたが、改めて2023年に向け「イベントの安全性を損なう、または競技者、関係者、観客の安全に危険なリスクをもたらすとみなされる違反」との既存の規則を引用し、タイムペナルティの対象となることが明言された。
■Next-Gen車両に対衝撃吸収の構造を導入。最新のデータレコーダーも装備へ
そのほか、オレンジのラインによる新たなピットマーカーの導入や、全ドライバーを対象に首から手首、足首までを覆う難燃性の仕様を満たすアンダーウエア着用の義務化、レギュラーシーズンで6分、プレーオフで10分だったステージ間のリペアタイムをレギュラー7分へと拡大。また、開幕以降の5レースでは「リスタートで間延びする」というドライバーからのフィードバックを受け、スタート/フィニッシュラインを挟んで前後25%ずつ、合計50%のリスタートゾーン延長を実施するなど細部の微調整が加えられる。
さらにNext-Gen車両を対象とした変更点には、導入初年度に特定の種類の衝撃(主にリヤからのインパクト)による剛性や強度特性によって引き起こされた深刻な怪我に対応し、リヤとセンタールーフ部に安全性向上を狙った対衝撃吸収の構造を導入する。
そして週末のエキシビジョンを前に、NASCARは「全体的なファンエクスペリエンス、とくにガレージですぐ隣に立っているファンのために、車両の騒音を低減する」べくマフラーの導入を目指しており、先週のフェニックスでは先行テストも実施。NASCAR関係者によれば、マフラーシステムの開発に引き続き取り組み「ショートトラックやロードコースで使用できるようにしたい」と考えている。
そのフェニックスのテスト中には、マフラーを追加した際にシャシーフレームのコンポーネントが通常よりも熱くなることが発覚したものの、その熱が「コクピット内のドライバーに影響を与えることはなかった」としている。
また、年間の全レースを通じて最新のデータレコーダーシステムも装備され、関係者により多くの情報を提供。これには車両の速度に関する専用のGPSデータも含まれ、すべてのチャネルを同期してクラッシュ分析中にNASCARオフィシャルを支援することにも役立てられる。