ジャック・ビルヌーブが接触/“遅いハイパーカー”に懸念/フェラーリとの関係が明るみにetc.【WECプロローグ2日目Topics】
2日間のテストが終了したセブリングのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■“最長不倒”はトヨタ8号車が記録
2日間/4セッションで、8号車トヨタGR010ハイブリッドは301周を走破し、この週末で最も長い距離を走ったハイパーカーとなった。7号車は286周を走り、5号車ポルシェ963の226周を大きく引き離している。
日曜日午前にクラッシュし、以降のセッションを欠席した51号車フェラーリ499Pは、114周と最も少ない周回数だった。その他、93号車プジョー9X8(139周)、708号車グリッケンハウス007(160周)、4号車ヴァンウォール・バンダーベル680(147周)の3台が200周の壁を越えられなかった。
他クラスでは、ユナイテッド・オートスポーツの22号車オレカ07・ギブソンが294周を記録したものの、トヨタ8号車に匹敵する車両はなかった。LMGTEアマクラスでは、アイアン・リンクスの60号車ポルシェ911 RSR-19が268周でトップとなった。
■スタッフの休息時間を作ったポルシェ
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクターであるジョナサン・ディウグイドは、同チームのポルシェ963は2台とも少ない燃料量での走行を実施しなかったと述べている。
「この週末はすべて、レースへの準備とレースプロセスに費やした」とディウグイド。これはトヨタも同様で、テクニカルディレクターであるパスカル・バセロンによると、軽いガソリンタンクでの予選シミュレーションは行わなかったという。
ポルシェの最速タイムは日曜朝にミカエル・クリステンセンが記録した1分48秒957で、トップのトヨタからは0.749秒遅れている。
ポルシェはまた、6号車のステアリングポンプの問題を含むいくつかの小さなトラブルに遭遇したが、大きな信頼性の問題はなかったと述べている。
「我々はいくつかの小さな問題を抱えていて、両日を通して対処しなければならなかった」とディウグイド。「クルマはガレージに戻ってきたときもあったが、それは大きな問題ではなく、すぐに対処できる問題だった。
ディウグイドによると、ポルシェは日曜日にLMDhのマシンをわざと1時間ほど遅らせてスタートさせ、クルーに休息時間を与えたという。
「正直なところ、我々は何日か夜遅くまで作業しているので、チームのみんなに少しでも睡眠をとってもらおうとしたんだ。今日はセッションが20分遅れて始まったので、かなりラッキーだった」
■コースオフしたプジョー9X8の状況
94号車プジョー9X8のグスタボ・メネゼスは、日曜日の午後、赤旗の原因となったコースアウトについて次のように語った。
「レーススティントのシミュレーションを終えて、バンプにぶつかってタイヤをロックさせてしまい、タイヤウォールにゆっくりとキスさせてしまったんだ。脱出するのにちょっとだけ助けが必要だった。できるだけ早くコースに出ることができてよかった。僕らは学び続けているよ」
メネゼスはまた、プジョーがプロローグを利用して、コールドタイヤについてより多くのデータを収集したことを付け加えた。
「タイヤブランケットがないと、スタートからゴールまでのタイヤライフは大きく変わってくる」と彼は語った。
「僕らは次の週末に向けて学び、解決しようとしているんだ」
なお、タイヤウォーマー禁止下の最初のレースとなる今回のセブリングで、WECはチームにピットレーンエリアの後方にある幅3メートルのゾーンにタイヤを保管するよう指示した。
ブルテンによれば、タイヤは「オフィシャルから見えるようにし、常に野外に置かなければならない」とされている。
■ダラーラのスタッフがフェラーリ499Pの修復に
プジョーは、93号車が最終セッションをほとんど周回できなかったテクニカルトラブルについて、明言を避けている。
チームの広報担当者は「問題を解決し、最後の20分間を走るつもりだったが、赤旗によってその計画は阻まれた」と述べている。
一方、日曜日の朝、ガレージでクラッシュ後の51号車フェラーリ499Pを修理しているダラーラのスタッフが目撃され、このイタリアのコンストラクターがフェラーリLMHプロジェクトに関与しているという長年の理解が現実に確認された。
なおフェラーリは事故後、51号車を解体しており、当初はAFコルセがシャシーの交換を準備しているのではという憶測が流れていた。
しかし、フェラーリのGTおよびスポーツレーシングカーのテストマネージャーであるジャンルカ・サルヴィは、シャシー交換は行わないことを確認した。「右フロントコーナーが壊されただけだ」と彼は語っている。
「内部的には、電気部品は無事だった」
■第3戦に2台目のキャデラックVシリーズ.Rが登場?
チップ・ガナッシ・レーシング(キャデラック・レーシング)は、第4戦ル・マン24時間レースへの準備として、第3戦スパ6時間レースに2台目のキャデラックVシリーズ.Rを投入する可能性があると、パドックで噂されている。
GMスポーツカー・プログラム・マネージャーのローラ・ウォントロプ・クラウザーはこれについて、第3戦のエントリーリストが発表されるまでは「憶測」であると述べた。
スコット・ディクソンはその週末にバーバー・モータースポーツ・パークでNTTインディカー・シリーズに参戦するため、このエントリーが認められた場合、レンガー・バン・デル・ザンドとセバスチャン・ブルデーは、スパで新たなサードドライバーを必要とすることになる。
日曜日午後のセッションで、2号車のキャデラックはドライバーの快適性を評価するため、初めてクロムルーフを装着して走った。日曜日の気温は摂氏30度に達していた。
ちなみに、CGRドライバーのリチャード・ウエストブルックは、自身のウエストブルック・ブルワリーの第2弾となるビールを展開する予定だ。彼は低炭水化物ペールエールの『ラグナ』をデビューさせ、イギリス国内で大きな売り上げを記録している。
新しいビールは低炭水化物のピルスナーとみられ、有名なサーキットをモチーフにした名前になるようだ。
■ジャック・ビルヌーブ、接触により走行時間を失う
ジャック・ビルヌーブがドライブする4号車ヴァンウォール・バンダーベル680と、ルイス・ペレス・コンパンクがドライブするリシャール・ミルAFコルセのフェラーリ488 GTE Evoがセッション3で接触する場面があった。
フルスティント走行の2周目だったビルヌーブは、ターン10への進入でフェラーリと接触、マシン左サイドにダメージを負った。その後「左フロントコーナー、サスペンション、いくつかのボディワークを交換した」と、オペレーション責任者のボリス・バーメスは説明している。
ビルヌーブはこのプロローグに入る前まで、1度のテストで20周の走行経験しかなかった。2日間のプロローグで彼は29ラップを走行したが、日曜朝のアクシデントと午後の赤旗によって走行時間を失うこととなった。
■LMP2上位勢に“下剋上”の可能性?
ユナイテッド・オートスポーツの23号車オレカからLMP2クラスに参戦するオリバー・ジャービスは、ハイパーカークラスとLMP2クラスの間のギャップについて触れ、“遅いハイパーカー”がLMP2の上位車両に与える影響に懸念を示している。
「まず最初に気づくのは、ハイパーカーには、コース上で非常にアグレッシブなドライバーたちがいるということだ」とジャービス。
「デイトナ(IMSAのGTPクラス)でも気づいたし、ここでもすでに気づいている。本当にアグレッシブなんだ」
「だけど最大の問題は、上位4、5台のハイパーカーというよりも、新車で苦労しているハイパーカーたちだと思う。彼らは実際、僕らより遅いわけだけど、問題は彼らが異なる方法で性能を生み出していることだ」
「僕が心配しているのは、レースの方だ。もし、予選で彼らを前に出して、コーナーでは遅いがストレートでは速いということになれば、他のLMP2勢が僕らの後ろに詰め寄ることになる」
「一方で彼らをパスしてしまえば、後続を引き離すこともできる。彼らがレースの行方を左右することになるんだ。どうなるかは分からないけど、現状では、LMP2のトップランナーよりも遅いハイパーカーが何台かあるんだ」
* * * *
プロローグが終了し、各チームは15日水曜日の午前10時55分から始まるフリー走行に向け、マシンの準備に取りかかっている。