空力設定の“疑義”にも動じず、僚友対決も制したウイリアム・バイロンが2週連続で勝利/NASCAR第4戦
今月末の3月24〜26日に開催される“COTA”ことサーキット・オブ・ジ・アメリカズでのロード戦に向け、キミ・ライコネンとジェンソン・バトン、ふたりの元F1王者が参戦することで話題のカップシリーズは、金曜のフェニックス・レースウェイで引き続きのオーバル戦を開催。同ラウンドでは新しいショートトラック用エアロパッケージを初めて使用するため、プラクティスでは追加の走行枠も設けられた。
この1マイルオーバルで加えられた変更点は、より小型な2インチのスポイラーに、ディフューザーとエンジンパネルからはいくつかのストレーキが削除され、NASCARの担当者によればこの変更で「約30%のダウンフォース削減が見込める」という。そのためバンク内ではマシンのスライド量が増加し、トラック全体でのオーバーテイク機会が創出できる、とされた。
こうした施策も経て、ラーソンがトップタイムを記録した金曜夜には「ルーバーに不特定の潜在的な問題がガレージで発見されていた」との名目により、HMSの全4台がさらなる検査を受けることに。全車とも50分間の練習走行枠に出走することは許されたものの、取り外されたボンネットルーバーの部品は、さらなる評価のためにNASCARのR&Dセンターに送られた。
当局としても、このNext-Gen車両におけるボンネット開口部のルーバーは、エンジンのパフォーマンスを最大限に引き出す重要な要素であり、かつボンネットからの気流排出をサポートし「エンジン冷却とエアロダイナミクスの向上に寄与する」と見て慎重な対応を見せている。
そんな状況ながら予選でもパフォーマンスを維持したHMS陣営は、ラーソンがプラクティスに続く最速タイムでポールポジションを射止めてみせた。「それは間違いなく最高だ」と、そのリザルトに加えクルマの状態も表現した2021年のカップ王者。
■優勝ドライバーは高校生。エクスフィニティ・シリーズ史上最年少ウイナーが誕生
「ヘンドリック・モータースポーツの全員、とくにこの5号車のクルー全員に、新たなエアロパッケージを投入し、宿題をこなして、速いレースカーを持ち込んでくれたことに心から感謝している」と続けたラーソン。
「昨日からマシンのハンドリングは良く、スピードも速かったから今日の結果に繋がった。明日はタフなレースだ。このNext-Gen車両でのレースは勝つのが本当に難しいから(延長戦の末に敗れた)先週のリベンジを果たせるといいね!」
迎えた日曜の312周は、スタート直後の2周目からバイロンがリードを奪い、HMS艦隊が隊列を率いてそのままステージ1を制覇する。続くステージ2でも両雄がバトルを繰り広げ、今度はラーソンが勝利をさらった。
最終ステージも残り11周時点で、首位を行くケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)をラーソンが追走するなか、ハリソン・バートン(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)がスピンを喫してコーションが発動。
その手前のアンダーグリーンでHMS陣営より1周早くピットレーンに飛び込み、アンダーカットに成功していたスチュワート・ハース・レーシングは、ここでハーヴィックを呼び戻し4本交換を決断。それに対し、ラーソンやバイロンらを含む上位勢は2本交換を選択し、ここで今季限りで勇退を決めているハーヴィックは7番手のトラック復帰となる。
残り3周のリスタートでは、ターン2でA.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)がスピンしふたたびのイエローに。これで勝負はオーバータイムに持ち越される。
インサイドに首位ラーソン、アウトサイドにバイロンが並んだ2周の決着は、4本交換組のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)から“プッシュ”も受けたバイロンが伸び、アシストが得られなかったラーソンはライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)とレディックの背後に下がってチェッカー。最終的に317周のうち201周をリードした僚友を逆転し、バイロンが連勝でのフェニックス初優勝を飾った。
「ここ数週間は本当に彼のおかげだ」と、クルーチーフのルディ・フューゲルを称えたバイロン。
「彼は戦略的にも実務面でも本当に良い仕事をし、最後にショットを決めるべく最前列のポジションを確保できた。素晴らしいクルマを組み立てて、最高の仕事をしてくれたヘンドリックのみんな、ありがとう!」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第4戦『ユナイテッド・レンタルズ200』は、まだ高校生のサミー・スミス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が史上最年少18歳でのシリーズウイナーに輝いている。