メルセデスAMGによる完全自社開発モデルとして生まれ変わり、専用の高剛性プラットフォームによる歴代最高峰のダイナミクス性能と2+2のシートレイアウト、そして伝統のソフトトップへと回帰した新型『SL』に、最高出力430kW(585PS)、最大トルク800NmのV8ツインターボエンジンを搭載し、同車初の4輪駆動システム“4MATIC+”とリヤ・アクスルステアリングを採用した『メルセデスAMG SL63 4MATIC+』が登場。4月25日より販売が開始されている。

 F1由来の電動ターボチャージャーを採用する2リッターの直列4気筒で登場した現行型の『SL』に、いよいよAMG製4.0リッターV型8気筒直噴ツインターボのM177を搭載したSL63 4MATIC+が登場した。最高峰モデルにふさわしく0-100km/h加速で3.6 秒、最高速度315km/hのパフォーマンスを備える。

 砂型鋳造されたクローズドデッキのアルミニウムクランクケースに、鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせて軽量かつ高強度を実現した本体に、バンクの外側ではなく内側にターボを2基配置した“ホットインサイドV”のレイアウトが特徴のエンジンは、このSLに搭載されるにあたり新しいオイルパンとインタークーラーの搭載位置変更、アクティブクランクベンチレーションシステムが採用された。

 吸気ダクトと排気ダクトについても最適化が施され、排気側ではレスポンスをさらに改善する狙いからターボをツインスクロールとし、ハウジングが分割されて並行するフローチャンネルとして機能。あわせてエグゾーストマニホールドのダクトも2本とし、排気をタービンホイールまで分離して導いている。

 これによりシリンダー間の排気干渉を防いでガスサイクルを改善。排気の背圧が低減されるとともに掃気も改善され、新たな混合気によるシリンダー充填効率が高まることで低速トルクと出力の増強、そして素早いレスポンスも実現した。

 また、触媒コンバーターボックスとガソリンエンジン用粒子状物質除去フィルターに対する排気流路の拡大に加え、エンジンを効率的に冷却するべく高温回路と低温回路、エンジンオイルを冷却する回路の、合計3つの独立した冷却回路を設けている。

 互いに独立して作動する3つの回路の構成は、3列構造の主冷却モジュール(高温ラジエーター、低温ラジエーター、コンデンサー)と、フランジに取り付けた冷却ファンと補助インテークラジエーター(高温回路用)となり、大型のラジエターシュラウドの後ろ、エンジン前方中央に配置されることで大量の空気を最適な形でラジエーターに導く配置とされた。

 このうちエンジン本体と2基のタービンコンプレッサー冷却も担う高温回路は、室内に対してオンデマンド型の快適な温度制御を行う暖房用熱交換器も内包。機械式ウォーターポンプは省スペースの観点からブロック上に配置され、カムシャフト上のピニオンがウォーターポンプの歯車に噛み合う形で、タイミングアッセンブリーにより直接駆動し、最大圧力4bar、吐出量400L/分で作動、総量12.3Lの冷却液を循環させている。

 一方の低温回路は容量7.2Lとやや小さめで、インタークーラーとAMGスピードシフトMCTの9速トランスミッション、それにエンジン制御装置を対象とし、左側ホイールアーチ内には補助ラジエターも設置。間接的に冷却を行う水冷式インタークーラーを採用することで、効率的な吸気冷却(過給された吸入気の冷却)が可能となっている。

■低負荷の際に、計4気筒を休止する“AMGシリンダーマネジメント”搭載 

 そして第3の冷却回路はエンジンオイルを対象とするもので、右側ホイールアーチにある水冷式オイルクーラーにより、エンジンベイ外に配置するのに加えて専用のオイルサーモスタットによって制御される。オイル用の配管と冷却水用の配管にはスチール製ではなくアルミニウム製を採用することで軽量化も図られた。

 また、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングする、おなじみNANOSLIDE摩擦低減加工や、走行モードの“Comfort”を選択中、エンジン回転数が1000〜3250回転で低負荷の際に、2/3/5/8番の4気筒を休止する“AMGシリンダーマネジメント”も搭載されている。

 こうした性能を支える駆動系では、初代以来70年近くにおよぶSLの歴史の中で初めて4輪駆動が採用され、AMGのパフォーマンス志向連続トルク可変配分式4輪駆動システムの“4MATIC+”を標準装備とした。

 常時駆動されるリヤアクスルに、可変的にフロントアクスルを接続するのは電子制御機械式クラッチとなり、走行条件やドライバーの運転操作に応じて、トラクション重視の4輪駆動と純粋な後輪駆動の間を連続的に変化させながら走行することが可能となっている。

 また、フロントにはメルセデスAMGの量産車としては初めて、5本のリンクをホイールの内側にすべて収めたマルチリンク式が採用されており、前後5リンクになるとともに、操舵システムに対する駆動力の影響を最小限に抑えている。

 そのサスペンション自体にも新たに開発されたAMG ACTIVE RIDE CONTROLサスペンションが採用され、こちらもメルセデスAMGの量産モデルとしては初めての搭載に。従来の機械的なアンチロールバーに代えて能動的な油圧機構を採用したことにより、ロールを瞬時に補正することが可能に。

 アダプティブダンパーにも2系統の油圧接続を備えて4本のサスペンションストラットを相互に接続するとともに、ポンプとスイッチングバルブに対して圧力調整を行うことで、伸び側と縮み側を制御する"コンフォートバルブ"と呼ばれる電子制御2/2ウェイバルブの効能を含めて、極めて広いロールレートの確保と同時にロール量の低減が可能となった。

 リヤ側では電子制御リミテッド・スリップ・デフに加えて、こちらもSL史上初のリヤ・アクスルステアリングが標準装備に。速度に対し前後同位相から逆位相、最大後輪切れ角2.5度の範囲で制御するバイワイヤの機能により、前輪のステアリングギア比を12.8:1とよりダイレクトに変更(非装着車は14.2:1)したことで、限界域におけるコントロールが容易になり、ステアリング操作の負担が小さくなるなどのメリットが生まれている。

 この『メルセデスAMG SL63 4MATIC+』登場に併せて、従来の2リッターの直列4気筒直噴ターボ+BSGを搭載する『SL43』にも一部改良が施され、ルートを車両に記憶させることで、車両が区間の移動および駐車するメモリーパーキングアシストを標準装備に。また新デザインのボンネットエンブレムや新ペイントのホイール、内装色も採用され、価格は『メルセデスAMG SL63 4MATIC+』が2890万円、同『メルセデスAMG SL43』が1700万円(いずれも税込)となっている。

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