アメリカ大陸最高峰のストックカー選手権NASCARカップシリーズにて、世界的ゲストを招聘するトラックハウス・レーシング主催の『PROJECT91(プロジェクト91)』が再始動。昨季、今季と2年連続でF1王者キミ・ライコネン参戦を具現化し、世界的話題を集めた同プロジェクトから、今度は南半球オーストラリア大陸の刺客が招聘されることに。

 現在も同地のディフェンディングチャンピオンとして君臨し、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ3冠を誇る“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、初開催7月2日のシカゴ市街地でカップデビューを果たす。

 現代のダウンアンダーを代表する才能として、スーパーカーのみならずステージラリーやラリークロスなど、グラベル路面でも世界的な実績を残す34歳のチャンピオンは、今回トラックハウス・レーシングが用意するNext-Genシボレー・カマロZL1の91号車『エンハンスヘルス・シボレー』をドライブ。地元でパーソナル支援の契約を結ぶクアッドロックがアソシエイトスポンサーを務め、2011年にトニー・スチュワートとともにカップタイトルを獲得した通算23勝のクルーチーフ、ダリアン・グラブが週末のチームを率いる。

「正直に言って、ここ何年もNASCARでのチャンスを夢見ていたが、それが現実になるとはまったく考えてもいなかった」と本音を明かしたSVG。

「アメリカに行ってクルーのみんなに会い、シカゴに向けて準備するのが待ち切れない。NASCARにとってシカゴの市街地でレースを開催するのは初めてだし、ある意味では誰もが僕と同じルーキーだ。でも、それが大きな挑戦であることを知っているし、過小評価したりはしないよ」

 豪州大陸を代表する祭典『バサースト1000』でも2勝を挙げている才能豊かなドライバーは、直近には地元のラリー選手権にも参戦。アウディS1 AP4のトラブルで優勝戦戦に絡むことが難しい状況ながらも、同郷ヘイデン・パッドンに対して遜色ないステージタイムも刻んでみせた。

 そのSVGは6月下旬にアメリカに到着し、ナッシュビル・スーパースピードウェイで開催される6月25日の第17戦『アリー400』に帯同。その後、シカゴの週にはトラックハウスのレースショップに滞在し、7月2日に本戦へと挑む。

「このシリーズのクルマやレースの運営について、学ばなければならないことがたくさんある」と続けた2015年のデイトナ24時間GTDクラス2位表彰台経験者。

「学習曲線は非常に険しいものになるだろうが、僕は彼らが投げかけてくるすべての課題に対して準備ができている。多くのニュージーランド人やオーストラリア人が視聴すると思うが、この機会を得ることができて本当に光栄だ」

■NASCAR参戦に興奮するSVG。優勝経験者に「知恵を借りている」
 すでに昨年末から同プロジェクトの候補と目されていたSVGだが、スーパーカーとNASCARの結びつきは深く、2006年から2014年に掛けては同国スーパーカーで2度チャンピオンになったマルコス・アンブローズがNASCARに参戦し、トヨタやフォードをドライブした。

 また直近では、2018年からスーパーカーでシリーズ3連覇の偉業を達成したスコット・マクラフランが、2021年より満を持してインディカーに挑戦しており、その系譜に連なるSVGもデビューに向け有利なスタートを切るべく、すでにカップやエクスフィニティで優勝を経験するアンブローズに「知恵を借りている」と明かした。

「言うまでもなく、これは世界最大の自動車レースシリーズのひとつだ。それに参加する機会を得て、そのままアメリカのトップレベルに飛び込めるなんて信じられないことなんだ。ワトキンスグレンでキミ(・ライコネン)が初めてやったこと、そして今年のCOTAで再演したことは信じられないほどハイレベルで素晴らしいことなんだ」と力説するSVG。

「マルコス(・アンブローズ)は、僕が最初にアドバイスを求めて電話したうちのひとりだった。彼は僕をとても助けてくれて、基本的なアドバイスや週末の取り組み方をたくさん教えてくれた。『窓から乗り込んで、ドアは開けないよ』だとかね(笑)。もちろん左ハンドルであることもそうだけど、そこはラリーやGTカーで慣れている。イエロー、グリーン、ホワイトからのチェッカーや、ピットストップ時の走り方など、僕らにはまったく異なるレース方法のように見えるんだ」

 ダニエル・スアレスとともに2021年からカップに参戦し、翌年からはロス・チャスティンとの2台体制を敷くトラックハウス・レーシング代表のジャスティン・マークスは、南半球でも市街地戦で強さを発揮する“Kiwi(ニュージーランド人の愛称)”は「NASCARとは非常に異なる経験を積んだドライバーではあるが、ある意味ではカップシリーズに完璧に適している男でもある」と、その活躍に期待を込めた。

「過去2シーズン、キミの参加に対するファンの反応にとても満足している」と続けたマークス。「アメリカのファンはシェーン(ヴァン・ギズバーゲン)のことをキミほどはよく知らないかもしれない。そのことは認めるが、オーストラリア、ニュージーランド、そして世界のその地域の人々と話せば、彼こそ『地球上で最も才能あるドライバーのひとり』だと言うはずだ。彼は“大型車でのストリートレース”に慣れており、誰もが彼のパフォーマンスに感銘を受けると思うよ」