5月24日にホンダがアストンマーティンへワークス体制でパワーユニットを供給するという発表を行った。これにより、2025年限りでレッドブルとアルファタウリへのパワーユニット供給の契約が終了するホンダが、2026年以降も活動を継続することが決定した。

 レッドブルのチーフメカニックとしてサーキットの現場でレース活動を続けている吉野誠は「率直にうれしい」と語った後、こう続けた。

「現場だけでなく、HRD Sakuraで開発しているメンバーたちのモチベーションアップに大きく影響することは間違いないです。今回の発表で2026年以降もF1活動を継続するという新たな目標が定まったことで、みんなの気持ちがクリアになり、それに向かって『これからも頑張って行くぞ』という気持ちになれたという点で、現場にとってもHRD Sakuraにとってもいい決定になったことは間違いありません」

 さらに、今回の決定がファンにとっても朗報になってくれたら幸いだとも語った。

「ホンダを応援しているファンの方々にとっても、現在のような参戦形式ではなく、アストンマーティンへのワークス体制として正式な参戦となるので、応援しがいが出てくると思います」

 しかし、2025年限りでホンダと決別することになったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は複雑な心境だ。ホンダが2026年からアストンマーティンとタッグを組むことについて、どう思っているのか? フェルスタッペンに直接、筆者が質問すると、彼は穏やかな表情でこう答えた。

「2025年限りでホンダがF1から去る姿を見ることなく、『さよなら』を言わなくても済んだので、そのこと自体はよかったけれど、ホンダと仕事ができなくなるのは少し寂しい。ホンダとは本当にいい関係を築いていたし、僕は彼らと仕事するのが本当に楽しかったからね」

 そのホンダのパワーユニットを搭載して臨んだモナコGPで、フェルスタッペンは1回目のセッションこそイニシャルセットアップに苦しみ6番手に終わるが、2回目のフリー走行ではしっかりとトップタイムを叩き出して、初日を締め括った。

 じつはフェルスタッペンがモナコGPで初日トップに立つのは、9シーズンのキャリアのなかで今回が初めて。2021年のモナコGP初優勝も、またその年の最終戦での初のチャンピオン獲得も、ホンダとともに勝ち取った栄冠だった。

 モナコに響き渡ったフェルスタッペンが奏でるホンダ・ミュージックはどこか寂しそうに聞こえた。