移籍組カイル・ブッシュが今季初ポールから早くも3勝目「勝ったぜ、ベイビー!」/NASCAR第15戦
イリノイ州セントルイスに位置するWWTRで2年連続の開催を迎えたカップシリーズは、雨で月曜順延となった前戦とは異なり、予選まで恵まれた天候のもと順調にスケジュールを消化。ここで今季よりリチャード・チルドレス・レーシング(RCR)に移籍したブッシュが、チームと8号車を今季初、移籍後初のポールウイナーへと押し上げた。
「この3Chiカマロのクルーを誇りに思う。スピードがあることは分かっていたが、問題は適切なタイミングで走り、ステアリングを握って必要なことをすべて実行できるかどうかだけだった。ターン1と2ではできる限りのすべてを出し切り、次の3と4では12号車を倒すのに充分だと感じたさ」と、前戦『コカ・コーラ600』勝者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を退けたブッシュ。
明けた日曜決勝はそのポールシッターの背後でありとあらゆる混乱が発生し、スタート直後の2周目にはリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)の背後からボトム側へダイブしたタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が、姿勢を乱してスピンオフ。ここで最初のコーションが発生する。
しかし、レース再開への準備を進めていたWWTRの上空には雨雲レーダー上でも雷雨が迫る状況に。トラック上こそ雨で濡れることは免れたものの、施設至近での落雷があり、競技規則の運営ポリシーに従いレースは赤旗中断となる。
トラック近郊の指定範囲内で落雷が確認されて以降、30分間は再開できないという規則により、ここからの断続的な発雷で時計は幾度もリセットが掛かり、各車がピットロードに運ばれてから実に1時間45分の延期を強いられる。
夕刻を周りようやく再開されたレースはブッシュがステージ1を制したが、続くステージ2ではブレーキローターの破損という新たな問題が顕在化し始める。その最初の犠牲者となったのはカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)で、この大会直前に「突然、電話を受けたときは信じられなかった」と、昨季WWTRでのトラック・シリーズで最終ラップにクラッシュし右脛骨を骨折していたホセヴァーだったが、今度はブレーキの過熱により7号車のローターが粉砕。待望のカップデビュー戦ながら90周目にウォールへ張り付き、ここでレースを終えてしまう。
さらにその直後、今度は施設内の光ファイバー網に不具合が生じて中継映像がダウン。最終ステージを前になんとか代替設備により暫定的な復帰を果たしたが、NASCARは接続が再開されるまでレースを再開するか、保留するかという難しい決断を迫られることに。
■レース再開後はレガシー・モータークラブに続けてアクシデント
これにより、映像だけでなくチームはデータ処理能力の大部分を失う状況で勝負が再開されると、174周目には序盤のスピンから復帰していたレディックが、続く197周目にはノア・グラグソン(レガシー・モータークラブ/シボレー・カマロ)が、ローター破裂による激しいクラッシュに見舞われ、ここで2度目の赤旗となってしまう。
「確かにそれは激しい衝撃だったよ」と続けた今季カップ・ルーキーのグラグソン。「ターン1でブレーキを踏んだら、多分左フロントのブレーキローターが逝ってしまったんだと思う。その時点で僕は『どうすればいいんだい?』という感じだったよ」と続けたグラグソン。
「インフィールドに引っ掛けようかとも思ったが無理だった。ポコノでそれをやってるヤツらがいたからね。当時は『それは間違ってる』と思ってたが、そうしないとフェンスに真っ向から突っ込んでしまうし、少しでも速度を落としたかったんだ」
さらにレガシー・モータークラブはピット作業でもアクシデントに見舞われ、僚友エリック・ジョーンズ(レガシー・モータークラブ/シボレー・カマロ)のフロントタイヤチェンジャーがストップ時に滑ってきた車両と衝突し、地元病院に搬送される事態に(のちに命に別状なしと発表)。
さらにクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)のクラッシュによるコーションを挟み、220周目にはオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)、オースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)、そしてステンハウスJr.が絡んだ“タングル”でSAFERバリアが破損。なんと3度目の赤旗が発動。これでレースは計119分を超える中断に見舞われる。
最終盤には5番手にいたダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)も、僚友レディック同様にブレーキを失い、これで決着は延長戦へ突入。しかしレース開始から5時間以上が経過した最後のリスタートでも、首位ブッシュの優位は揺るがず。あらゆる混乱を遠ざけた男がカップ通算63勝目を飾る結果となった。
「今日ポールポジションに座り、多くの周回をリードし、クルーたちに素晴らしい仕事をしてもらった。我々にとって非常に驚異的なレースだった」と、夕闇のなかで語ったブッシュ。
「改めてTeam Chevy(チーム・シボレー)と3Chiに感謝したいし、RCRにとっては素晴らしい1日だ。これで楽しい時間を過ごすことができるし、最高にクールだ。また勝ったぜ、ベイビー!」
同じく土曜のWWTRで開催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第12戦『トヨタ200』は、グラント・エンフィンガー(GMSレーシング/シボレー・シルバラードRST)が今季2勝目、通算9勝目をマーク。服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)の16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRDプロ)は、ファイナルステージに向け勝利を争う位置につけたものの、最終的に16位でフィニッシュを迎えた。
一方、土曜にポートランド・インターナショナル・レースウェイで開催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第13戦『パシフィック・オフィス・オートメーション147』は、こちらも延長リスタートの攻防を制し、コール・カスター(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が前戦勝者ジャスティン・オルゲイアー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)を撃破している。