宮田莉朋「スーパーGTでの経験が活きた」好走で初参戦ながら3位獲得に貢献/WEC富士
レースを終え、トロフィーを抱えてチームのピットへ戻ってきた宮田が表彰台獲得の喜びを語った。
「まさか表彰台に乗れるとは、という感じです。本当に幸せなことだと思います」
WEC参戦自体はもちろん、ケッセル・レーシングというチームややフェラーリ488 GTE Evoというマシン、ワンメイク供給のミシュランタイヤと、宮田にとって初めて尽くしとなった富士6時間。また宮田のみでなくチームのみんなぞれぞれが、『WEC富士6時間』に対して初めての挑戦を迎えていたのだという。
「ケッセルレーシングは、富士スピードウェイを走るのは初めてでした。となれば、木村選手も(スコット)ハファカー選手もGTEマシンで富士を走るのは初めてです」
「なので、コースを知っている僕は富士スピードウェイの特徴をチームに共有しました。逆に、チームや選手のふたりはフェラーリやミシュラン(タイヤ)の使い方を教えてくれました」
それぞれが自分の武器を持ち寄ったことが奏功し、ケッセル・レーシングの57号車フェラーリは未知の富士スピードウェイをハイペースで駆け抜け、見事表彰台圏内でのフィニッシュを成し遂げた。
ただ、決勝レースではすべてが順調に進んでいたわけではなく、ハファカーの乗っていたタイミングではアドバンコーナーでアイアン・リンクスの60号車ポルシェ911 RSR-19と接触しスピン。大きくタイムをロスしてしまったが、それ以外にもレース後半で2つのタイムロスがあったのだと宮田は明かした。
「実は、僕がマシンに乗るときのピットストップで、タイヤ交換のロスがありました。そこで、より前のポジションにいるはずだったところが、後ろに下がってしまいました」
「ほかにも、詳しくは分からないのですがクルマにもトラブルが起きて、ストレートスピードが遅くなってしまいました。コーナーで頑張ってもタイムが出なくなってしまって、それ以降は(前に)対抗できる感じではなくなってしまいました」
マシンがトラブルを抱えてからは、後ろを見ながら順位をキープする走りに徹したというが、それまでは、前を走る54号車フェラーリ(AFコルセ)に乗るワークスドライバーのダビデ・リゴンに引けを取らないタイムで周回を重ねていた。
「1スティント目は僕の方が全然速くて、その感覚で全然いけると思いました。トラブルがなければ、彼と同じようなラップタイムで走れたと思います」
「また後ろのコルベットは、クルマ自体も速かったですしドライバーのニッキー・キャッツバーグ選手は、今年はニュル24時間やル・マン24時間、スパ24時間も優勝していてキャリアも豊富です。なので、こんな偉大な選手の前でゴールできたということもすごく嬉しいです」
初めて参戦する世界選手権の舞台で、メーカーのワークスドライバーらに直々に“腕試し”を挑むこととなった宮田だったが、迎えた自身のスティントではライバルに大きな差をつけられることもなく、十分対等に走ることができた。
また、予選を終えたタイミングで宮田に話を聞いた際、「決勝では思っているよりもタイヤがきつくなるのでは」と語っていた。その予想は見事に的中し、ポルシェ勢やアストンマーティン勢はスティントの後半にタイムが大きく落ちる傾向にあった。その予想をもとに、決勝ではタイヤをセーブする走りに注力したという。
「スーパーGTやスーパーフォーミュラで今まで経験したことを活かして、タイヤマネジメントをしました。その部分では、ファクトリードライバーたちよりも速いタイムで走れていたので、それなりにうまくできたのかなと思います」
「また、スーパーGTでも同じように、タイヤにピックアップが付いた時にはそれをはがすことが第一優先です。その部分でも今回は、これまで走ってきたスーパーGTでの経験が活きたなと感じました」
国内のトップカテゴリーレースであるスーパーGTとスーパーフォーミュラで培ってきた技術を武器に、世界のトップドライバーを相手に引けを取らない走りができたことへの喜びを語った宮田。突如参戦が決まり、準備をするのに十分な時間も無いなか、デビュー戦での表彰台獲得という結果は『TGR WECチャレンジプログラム』のメンバーとして申し分のない実力証明をやり遂げたと言えるのではないだろうか。