まさに“ぶっつけ本番”。数々の困難を乗り越えポイント獲得の勝田「すべて今後に役立つ」/WRCギリシャ
勝田は8月に開催された第9戦フィンランドにワークス登録ドライバーとして参戦し、表彰台に立つ活躍を見せた。今回のアクロポリス・ラリーでは4台目のGRヤリスをドライブすることになったが、ギリシャで大規模な山火事が発生したため、勝田は現地での事前テストの機会を失うこととなった。
その代替として勝田は、ギリシャとは路面のキャラクターが異なるフィンランドで事前テストを行うことに。また、ラリーウイークに入るとギリシャでは強い雨が降り続け、悪天候下でのレッキという理想的とは言えない状況にも見舞われたほか、木曜日の午前中に予定されていたシェイクダウンも大雨の影響で中止となってしまう。
TGR-WRTスポーティングディレクターのカイ・リンドストロームによれば、ドライバー全員にとってチャレンジングな1週間だったが、勝田にとってはなおさらだったという。
「(勝田)貴元は事前にギリシャでテストをすることができず、そのためセットアップを進めることもできなかった。それに加えてシェイクダウンもキャンセルされたことで、ラリーが始まるまでクルマを試すことができなかったんだ」
こうした要因から充分な準備をできないままラリー本番を迎えた勝田は、フルデイ初日の金曜日には、ギリシャの荒れたグラベルステージを約12か月ぶりにいきなり全開で走行しなくてはならないハードな状況に直面。ラリー前に降り続いた雨によって路面は濡れていたりぬかるんでいたりする場所が多く、また路面が乾いてくると大きな石や深い轍などが現れる厳しいコンディションのなかで、勝田は多くの障害をクリアしながらステージを重ねていった。
デイ2終了時点で勝田は、総合5番手のエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)と9.6秒差の6番手につけ、さらに上のポジションも狙える速さを示していた。しかし、翌日デイ3のオープニングステージSS7でスピン。今大会でもっとも厳しいコンディションだったこのステージで30秒以上のタイムを失った勝田は、総合7番手へ後退してしまう。
勝田はその後、ステージ5番手、6番手となるタイムを出しながら順位を挽回し、SS10では総合5番手にポジションを上げることに成功する。だが、不運にも続くSS11で複数回のパンクチャーに見舞われ、2度のタイヤ交換作業で4分以上タイムを失うことに。これにより総合7番手へポジションダウンした勝田だったが、チームメイトのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)のデイリタイアもあり6番手でデイ3終えた。
最終日であるデイ4では確実性の高い走りで順位を守り、総合6位のポジションをキープしたままフィニッシュ。本番前から立ちはだかった数多くの困難を乗り越え、見事ポイントを獲得することに成功している。
■勝田「ペースは昨年に比べて格段に良いもの」
「ギリシャでの事前テストができず、シェイクダウンもなかったこともあって本当に難しい週末でした」と、自身が直面した困難を振り返った勝田。
「いきなり最初のステージに臨むのは大きなチャレンジでしたが、それでも最後までラリーを走りきることができました。素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝します」
勝田は今大会について「いくつか問題が起こったり、パンクを2回喫したことでタイムをかなり失ってしまいましたが、それを除けばペースは昨年に比べて格段に良いものでした」と手ごたえを滲ませた。
「もちろん、自分のパフォーマンスに完全に満足しているわけではありません。しかし、このようなラリーで本当に改善すべき点も見つかったので、ポジティブな面もネガティブな面もありましたが、それがすべて今後に役立つと思います」
「カッレ(・ロバンペラ)、そしてエルフィン(・エバンス)とともに素晴らしい結果を残したチームに大きな祝福を送りたいですし、次のチリではベストを尽くして戦いたいと思います」
勝田の次なる戦いは9月29日〜10月1日にかけて南米のチリで開催されるWRC第11戦『ラリー・チリ・ビオビオ』だ。ラリー・チリは2019年に初めてWRCとして行われ、今回で2回目のWRC開催となる。前回大会では勝田はWRC2に参戦し、自身2度目のクラス優勝を飾っている。