ミシュラン、WECハイパーカーとIMSA GTP用の次世代ウエットタイヤのテストを開始へ
フランスのタイヤメーカーで耐久レース・プログラム・マネージャーを務めるピエール・アルベスによると、トヨタ、フェラーリ、プジョー、BMW、ポルシェといったLMH(ル・マン・ハイパーカー)とLMDhのメーカーが参加し、9月21日にスプレー路面を使用したセッションが行われるという。
■ミシュランが目指すふたつの方向性
ミシュランは、WEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の2025年シーズンに向けて、ハイパーカー用とGTP用の新しいタイヤの投入を計画している。同社は複数のスリックコンパウンドの選択肢を持ち続けたいと考えており、同時にウエットタイヤでは単一の仕様を持つことにこだわっている。
現在使用されている第1世代のハイパーカー/GTPタイヤは、当時テスト走行が可能なクルマが不足していたため、シミュレーションを通じて開発されたものだが、現在ではより実戦的なテストが可能だ。
「このテストの目的は、次のレンジのレインタイヤのためだ」とアルベスはSportscar365に語った。
「私たちが今持っているウエットタイヤは、(サーキットを)走るクルマがない状態で開発されたものだ。ハイパーカーを始めた当初は、コールドスタート用のタイヤが必要だったが、私たちはそう多くのインフォメーションを持っていなかった」
「我々は今その使い方を学んでいるところだ。スパ・フランコルシャンやル・マンでは実際のコンディションでテストをした。プライベートテストでテストすることもあった。最高のテストは、全員がコースにいるときにできるものだ」
「スパでは(最近のテストで)ふたつの自動車メーカーがテストを行った。1台はもう1台より12秒速かった」
ミシュランはトップカテゴリー向けの次世代ウエットタイヤ開発において、ふたつのメインターゲットを掲げている。
「私たちにはふたつの方向性がある。ひとつは、ドライとウエットコンディションにより適合するよう、ポリバレンス(多機能性)を改善することだ」とアルベスは言う。
「フルウエットからドライまで、より広いウインドウを実現するためだ。現在のタイヤは完全なウエットに適しているため、まだ(改善すべき)トリッキーなコンディションが残っている」
「タイヤが少し柔らかすぎるので、すぐにブリスター(水ぶくれ状態)が出てしまう。(トラックの適正ウインドウが)ウエットからスリックに切り替わった後は少し難しい。だからこそ、我々はその方向にもっと取り組みたいんだ」
「もうひとつのポイントは、より持続可能な素材を増やすことだ。今のところ、このタイヤでは45パーセントのサステイナブル素材を用いているが、私たちはこの分野でもさらに進みたいと考えている」
「しかし、サステイナブルな素材を加えるあたって性能に妥協があってはならない。それらを用いつつ、より良いものにする必要があるんだ」
■来年7月には2025年用スリックタイヤの仕様が決定
ミシュランは今年7月、アメリカ・ニューヨーク州のワトキンス・グレンで、IMSA GTPに参戦するアキュラ、BMW、キャデラック、ポルシェを対象に、2025年向けスリックタイヤの最初のグループ・トラックテストを行った。
11月にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されるWEC最終戦後の火曜日には、さらなるスリックタイヤのテストが予定されている。そこでは、キャデラックを除くすべてのハイパーカー参戦チームが参加する予定だ。
「バーレーンでのグループテストは、我々の開発プロセスの第2ループになるだろう」と彼は説明した。
「すでに今年7月にIMSAとワトキンス・グレンで1回やっているので、いい方向性が見えている。今はこの方向で開発を進めており、WECとIMSAでは同じタイヤを履くことになる」
「その後、来年の3月か4月にもう1度テストを行い、7月には2025年シーズンに使用される(スリック)タイヤを決める必要がある。なぜなら1月開催のデイトナ24時間のために生産を開始しなければならないからね」
タイヤテスト中、チームはミシュランのエンジニアの意向を受け、可能な限りニュートラルなコンディションを保つため、どのような仕様で走るかは知らされないという。
「他のチームが何をテストしているのか、彼らにはわからないと思う」と同氏。
「新しいバージョンのタイヤは、さまざまなブロックを持っている。あるものは異なるパターン、あるものは異なるケーシング、あるものは異なるコンパウンドだ。私たちはそれらすべてをミックスする」
「彼らは同時に同じタイヤを手にすることはない。チームは我々が何をテストしているのかわからないだろう」
新しいスリックタイヤが2025年に登場する一方で、アルベスは次世代ウエットタイヤの導入について「期限はない」と指摘した。もし、ミシュランがシリーズ主催者を説得する必要があると感じれば、2024年のある時点で導入される可能性もあるという。
またミシュランは、もっとも適切な選択肢と見なされた場合には、現在のウエットタイヤを維持することにも前向きだ。