F1第20戦メキシコシティGP(メキシコGP)の勝敗の分かれ目は、スタート直後の数秒の攻防だった。

 3番手からスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、2番手からスタートしたカルロス・サインツ(フェラーリ)を交わして、ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)に並びかける。

 その直後、5番手からスタートしたセルジオ・ペレスも好スタートを決め、フェルスタッペンとルクレールにアウトサイドから並んだ。

 イン側からフェルスタッペン、ルクレール、ペレスの3台がサイド・バイ・サイドの状態で1コーナーへと進入していった。

 しかし、1コーナーは3台が並んで進入できるスペースはなかった。ルクレールとペレスが接触し、アウト側にいたペレスが弾き飛ばされてコースオフ。マシンにダメージを負ったペレスは、ピットインした後、リタイアした。

 2台が接触している間に、トップで1コーナーへ進入したフェルスタッペン。これは、フェルスタッペン陣営にとって、最高のシナリオだった。レース前、フェルスタッペンの担当レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼとヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、フェルスタッペンがスタートでトップに立つかどうかの賭けをしていたほど、スタートがレースの勝敗を分ける重要なポイントになると予想していたからだ。

 なぜなら、新品のハードタイヤを2セット残していたフェルスタッペンは、このレースを2ストップ作戦で戦おうとしていたが、ライバル勢は1ストップで対抗してくることが予想され、スタートで1ストップのフェラーリ勢を抜くことが、2ストップ作戦を成功させる鍵となるからだった。

「あのスタートのおかげで最初のスティントが少し楽になった。また、2ストップするつもりだったから、もちろんそのおかげで2、3秒余分に稼ぐことができた」

 そう語るフェルスタッペンは、後続にギャップを築くことに成功し、予定通り新品のハードタイヤを積極的に使用する2ストップ作戦を実行して、主導権を握り続けた。

「新品のハードタイヤは予想していたとおりの競争力があった。戦略は完全に機能していたから、赤旗が出たのは残念だけど、再スタートでもスタートがうまくいって、ターン1までリードを保つことができた。その後は、タイヤを温存し、クルマやブレーキに気を配りながら、最後までペースマネジメントをするだけだった」(フェルスタッペン)

 2位以下に13秒差をつけて、トップでチェッカーフラッグを受けたフェルスタッペンは、昨年自身が樹立した年間最多勝となる15勝を更新し、今シーズン16勝目を挙げた。また、この勝利により、アラン・プロストに並ぶ通算51勝目を挙げ、歴代4位タイとなった。

 残る3戦で2勝を挙げると、歴代3位のセバスチャン・ベッテル(53勝)に並ぶ。

 なお、レース後、クリスチャン・ホーナー代表はリタイアしたペレスに対して、チームの創始者であるディートリッヒ・マテシッツの口癖だった「ノーリスク、ノーファン」と言葉を用いて、地元のファンの前で勝利を目指そうとした姿勢を責めることはしなかった。