まもなくスタートのときを迎えるバーレーン8時間レースは、来季2024年からWEC世界耐久選手権とELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズで“LMGT3”に置き換えられる“GTE”プラットフォームにとって最後のレースとなる。

 GTEは、GT3に比べてドライバーを支援するデバイスが比較的少ないため、プロドライバー同士の戦いであれ、アマチュアの世界的な舞台であれ、ドライバーにとっては厳しい挑戦を提供した。このカテゴリーの歴史は長く、2005年から2011年にGTEと改称されるまでGT2と呼ばれていた時期も含めると、そのルーツは20年以上遡る。

 Sportscar365はそんなGTEプラットフォーム用に作られたマシンのステアリングを握ってきたドライバーたちに、当時の思い出や印象について話を聞いた。

■クリスチャン・リード/GTEアマで通算12勝。2012年以来、唯一全戦出場中のWECドライバー

「僕はとても幸せだったし、それらのクルマと過ごした時間は最高の時間だった。パドックの誰もがクルマを楽しんでいたし、それが終わってしまうのは残念だけど、仕方がないことだ」

「WECもELMSも、そしてIMSAも、チャンピオンシップ自体は本当に素晴らしいものだ。非常にプロフェッショナルで組織化されている」

「私たちは本当にきちんと開発されたレーシングカーを持っていた。タイヤに関しても、ミシュランだろうとグッドイヤーだろうと、過去にはダンロップだったとしても関係なく、つねにトップレベルの素材を使っていて、それがクルマを素晴らしいものにしているんだ」

「また、近年はドライバーのレベルも上がってきている。その様子は驚くべきものだ。世界最高のブロンズ、最高のシルバー、そして最高のプロドライバーと戦えるのは特別なことだよ」

「2012年にWECを始めたとき、確かに当時はレベルが低かった。だから多くの人々をチャンピオンシップに参加するように説得する必要があった。この点においてACOフランス西部自動車クラブは本当に素晴らしい仕事をしてくれた。今ではLMDhとハイパーカーにそれを見ることができる」

■リチャード・ウエストブルック/4つのブランドを渡り歩き、IMSAのGTル・マンクラスで豊富な経験を積む

「多くの人が“GTレーシングの黄金時代”という言葉を使うが、それは間違っていない。2017年、2018年、2019年のようなシーズンを振り返るとき、(それが夢だったんじゃないかと)自分自身をつねらなければならない」

「ル・マンでは20台のGTEマシンが、24時間にわたってノーズ・トゥ・テールで走り続けた。そこには(スポーツカーの)トップブランドが並んでいた」

「僕は幸運にもそれらの時期にポルシェ(GT2)、コルベット、フォード、アストンマーティンの4メーカーでドライブすることができた。疑う余地がないくらい本当に特別な時間だったよ」

「20年後に振り返って、父親が息子にあの時ル・マンにいたことを話すとする。だが、おそらく子供はそれを信じないだろう! そのくらい接戦だった……最初から最後まで激しいレースだったんだ」

「そのすべてがアメリカでのIMSAのレースや、WECにもつながっている。僕は幸運なことに何年かIMSAのカテゴリーに参加することができたが、それはとんでもなく良いレースだった」

「どのサーキットに行っても、誰が勝つかわからなかった。たとえ勝てるポジションにいなくても30秒遅れてゴールすることはなかった。それほど接戦だったんだ」

「すべては戦略、ユーズドタイヤでのドライバーのパフォーマンス、そして燃費など、クラシックなスポーツカーレースを作るためのすべての要素があった」

「このようなレースは二度と見られないだろう。例えば、誰かがコルベットのロードカーを所有して、コルベット・レーシングを応援していれば、ファンはそれに関連していると思う。アストンマーティン、ポルシェ、フォードも同じだった。レースがファンの心を打ったんだ」

■トーマス・フロー/AFコルセで6シーズンを過ごしたブロンズドライバー

「僕は2017年から(WECでの挑戦を)始めたが、当時GTEアマクラスには5台のマシンがいた。この年以降、競争は一貫してどんどん高くなっていった」

「2022年限りで(WECから)プロカーが姿を消したので、GTEアマがさらに目立つようになった。今年のような競争は見たことがない」

「これについての本当の特別な部分は、僕にとってGTEが本物のレースカーだということだった。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)はなく、ドライバーを完璧に追い込むドライビングが要求される。マシンのアシストはほとんどない」

「ここ数年の開発は、僕がより良いドライバーになるために本当に役立ったと思う。なぜならシーズンを重ねるごとに少しずつ学び、速くなり、マシンの限界を理解することができたからだ」

「一方で、新しいマシン(GT3)がより空力面が強化されるのは少し悲しいことだと思う。ABSが搭載されるようになるしね。(フェラーリでは)V8からV6への移行も見られる。でも、何でもそうだけど新しいものを受け入れなければならない。その章は終わったんだ」

「488と歩んだ6シーズンは長かったが、最終的にはフェラーリがこれまでに開発したGTカーの中でもっとも成功したクルマだった」

「そのフェーズをともに生き抜いたことをとても光栄に思うし、296 GT3という次のフェーズを楽しみにしている」

■ハリー・ティンクネル/アストンマーティンのGTEプロカーでル・マンの頂点へ

「すべてのマシンの走りは、それぞれ非常に違いがあり、最終的には週末によって勝利するマシンが異なる。ラップタイムを生み出す方法もやはり、それぞれ違うんだ」

「ポルシェは、超アグレッシブに走るためには、本当に本当にハードにクルマを操る必要がある。アストンマーティンはまったく逆だ。クルマをスムーズに扱う必要がある。トラクションとパワーダウンに強みがあるのは明らかだった」

「そしてフォードGTは、その中間といった感じだったね。非常に優れたエアロで、とてもに正確だった。でも、最終的には(設計が)ちょっと良すぎたんだと思う。僕たちはいつも、より少ないパワーで戦っていた」

「それでも、つねにラップタイムを出すことはできたが、トラフィックに遭遇するとレースは厳しいものになった」

「GTEアマに乗るようになった今の時代でも、そのレベルは非常に高い。ケビン・エストーレのようなビッグネームはいないかもしれないが、ジュリアン・アンドラウアーや(アレッシオ・)ピカリエッロ、そしてジュニアの選手たちは依然として超強力だ」

「確かにひとつの時代の終わりではあるけれど、すべての良いものには終わりがくるものだ。(新しい時代は)より多くのメーカーが参入し、よりバラエティに富んでいる。でも、僕はこの瞬間はいつまでも忘れないよ」

「ついこの間もレンスポルト・レユニオンに参加したし、モントレー・カーウイーウにも参加した。だから、将来のどこかの時点で僕らのクルマがそこに来て、ドライブできるようになることを願っている」

■ベン・キーティング/TFスポーツとコルベット・レーシングでGTEアマチャンピオンを獲得した“現2冠王者”

「GTEアマの何が好きだったかというと、プロクラスがあり、すべてのBoPが前年のプロクラスに基づいて設定されていたことだ。だから、週ごとに大幅な変更を必要としなかった」

「彼らはマシンの位置を把握していたし、テクニカル・チームに鉛筆で殴られるのではなく、つねにチャンスがあるとわかっていた。(LMGT3は)プロクラスがないので、彼らは情報を得ることができなくなる。僕は彼らがいい仕事をしてくれると信じているが、厳しいものになるだろう」

「毎週末いい結果を出す能力はないだろうけど、今の僕らにはいい結果を出す能力がある。私はここにいるために多くのお金と時間を費やしているため、少なくともいい結果を残せるチャンスがあると感じずにレースの週末を迎えたくない。GTEアマのそういうところが大好きなんだ」

「ミシュランのタイヤは、それぞれのマシンのために特別に設計されている。これも魅力的なことだ。自分の車のために設計されたタイヤを持つことは大きな意味があり、コルベットに装着されているミシュランタイヤは、ポルシェやフェラーリ、アストンマーティンに装着されているものとは違う」

「それは、これらのクルマのパフォーマンスレベルにとって非常に重要なことだ」

「GTEアマでは、すべてのマシンにブロンズ、シルバー、そしてゴールドかプラチナドライバーの搭乗が要求される。WECのセーフティカーの扱い方では、滅多にセーフティカーが導入されることはない。だからクルマに乗っている時間はGTEでのレースにとって重要なんだ」

「ABSがないのもいい。これは本当に気に入っている。ロックアップさせずにブレーキングし、速く走れるスキルを誰が持っているかということが、ブロンズドライバーの大きな分かれ目になるような気がする」

「来年の(クルマの)ようにみんながABSを搭載すると、800ポンドのゴリラのようにブレーキを踏み、コンピューターに仕事を任せることになる。ブレーキゾーンでは誰もがヒーローになれる。そのスキルがGTレースから消えてしまうのは少し残念だ」

「クルマはとてもよく設計されている。GT3マシンのほとんどはカスタマーカーとして設計されているが、対してGTEカーはすべてプロレベルのレーシングカーとして設計されている。あらゆる面で少しだけ“エキストラ”がついている。それが好きなんだ」

「それは間違いなく自分が開発しなければならないスキルであり、これらのクルマで速く走るためのスキルを身につけるのはとても楽しいことだ」