11月4日(土)、バーレーン・インターナショナル・サーキットで、2023年WEC世界耐久選手権第7戦『バーレーン8時間レース』の決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組)が優勝。今季2勝目を飾ってシーズンを締めくくるとともに、同トリオが2年連続となるシリーズチャンピオンを獲得した。

 3月にセブリングで開幕したあと欧州に渡り、6月のル・マン24時間などを経て、9月には富士スピードウェイでレースが行われたWECの2023年シーズンが、今年もバーレーンでフィナーレを迎えた。

 最終戦の決勝レースは土曜の14時に開始され、そのスタートではハイパーカークラスとLMP2クラスで混乱が生じTGRの7号車トヨタGR010ハイブリッドや、ユナイテッド・オートスポーツの22号車オレカ07・ギブソンといったタイトル争いの主役たちがアクシデントに巻き込まれてしまう。

 しかし既報のとおり、7号車はファーストスティントの終わりまでに3番手まで順位を挽回し、3時間目には51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)をとらえて総合2番手に浮上。これによりTGRは日没までにワン・ツー体制を再構築している。

 5時間目、レースの折り返しを迎えた時点でのトップはスタートから快走を続ける8号車トヨタで、姉妹車7号車を約40秒リードする展開に。3番手につける51号車フェラーリはさらに18秒後方で38号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)と順位を争っている。

 この直後ハイパーカーの上位勢が相次いでルーティンのピット作業に入り、首位の8号車はハートレーから平川にドライバースイッチ。7号車では小林可夢偉からホセ-マリア・ロペスに交代した。3番手争いはここで動きがあり、アンダーカットを成功させた50号車がフェラーリAFコルセの姉妹車を含む2台をかわしてポディウム圏内に浮上。直後からニクラス・ニールセンとアントニオ・フェリックス・ダ・コスタのバトルが始まり、この接近戦を来季2024年はフォーミュラEに専念するポルシェのドライバーが制した。

 6時間目、トヨタ2台のタイム差は45秒に拡大している。J SPORTSのインタビューに応えた可夢偉によれば、2番手を走行する7号車は彼が乗り込んだ第3スティントからトルクセンサーに問題が発生しているとのこと。その影響もあってか3番手に順位を上げてきた38号車ポルシェとのギャップは12秒に縮まった。

 その38号車はコースオフ後のトラック復帰が安全に行われなかったとしてドライブスルーペナルティの裁定を受け、フェラーリ2台に先行を許す。しかしペースに勝るダ・コスタはすぐに51号車をパス。その後ニールセンとの表彰台争いの“第2ラウンド”に入った。

 レースは残り2時間となり、ダ・コスタが51号車を抜けないまま各車6回目のピットインタイミングを迎える。3番手を争う2台は同時にピットイン。するとこの1周前にピットに入っていた50号車のアントニオ・フォコが、アウトラップの38号車ポルシェをかわし僚友51号車も強引にパスしていく。

 7時間目の終盤ペースの落ちた51号車フェラーリを、ウィル・スティーブンスの38号車ポルシェと、ケビン・エストーレ駆る6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)がかわし4番手、5番手となる。

 残り1時間、フェラーリの2台が同時にピットインし、翌周に38号車と6号車がピットへ。ポルシェ勢はタイヤ戦略が別れ38号車は右フロント以外の3輪にニュータイヤを装着した一方、6号車は無交換でピットアウトした。なお、ここでの順位変動はなく50号車フェラーリが3番手を維持している。

 これらのハイパーカーの同じタイミングでピットに入ったTGR勢は、2番手につける7号車がコンウェイから可夢偉に、首位8号車はブエミからハートレーに交代して最終スティントへと入っていく。両車のタイム差は約42秒だ。

 この上位2台は最後まで順位を入れ替えることなくスタートから8時間のチェッカーを迎え、大会7連覇とバーレーンでの6レース連続となるワン・ツー・フィニッシュを達成している。そして、予選後16ポイント差のランキング首位で最終戦を迎えた8号車のブエミ/ハートレー/平川は、僚友7号車のトリオを下し2022年に続きドライバーズタイトルを獲得した。

 レース最終盤。50号車フェラーリのフォコと、スティーブンス駆る38号車ポルシェによる3番手争いがふたたび熱を帯びたが、跳ね馬の一台はポジションを死守。最後は0.962秒差でフィニッシュラインを跨ぎ3位表彰台を獲得した。

 このレースで多くの見せ場を作った38号車ポルシェは惜しくも4位に。以下6号車ポルシェ、51号車フェラーリ、5号車ポルシェ、94号車と93号車のプジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)と続いている。

■勝って決めたWEC LMP2最後のチャンピオン

 ル・マン24時間レースを除くWECのシリーズ戦では見納めとなるLMP2クラスは、スタート時の混乱からトップに立った10号車オレカ07・ギブソンが序盤戦をリード。3時間目には31号車オレカ(チームWRT)が首位を奪ったが、レース折り返し時点では23号車オレカ(ユナイテッド・オートスポーツ)がクラストップとなった。

 その23号車がストップ&ゴーペナルティを受けて遅れを取ると、プレマ・レーシングの9号車と63号車オレカがワン・ツーを築く。6時間目、首位9号車がターン1で98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ノースウエストAMR)に追突され3番手に後退。これにより姉妹車63号車とWRT31号車に逆転を許してしまう。

 その後もピットインタイミングで順位が入れ替わっていくなか、残り1時間の時点ではチームWRTの31号車と41号車がワン・ツーで並び、クラス3番手にJOTAの28号車オレカが続く。

 15分後、3番手の28号車がピットインし、続いて2番手を走る41号車もピットに入りフルサービスでコースに戻った。ロビン・フラインス駆る31号車はラストピットで左フロントタイヤの交換に手間取りタイムをロス。これによって姉妹車41号車に逆転を許してしまう。

 こちらも、ハイパーカークラスと同様に最後はチームWRTのワン・ツーが揺るがず、順位そのままにフィニッシュを迎えた。この結果、ランキング首位で今戦に臨んだ41号車のルイ・デレトラズ/ロバート・クビサ/ルイ・アンドラーデ組が優勝とともにドライバーズタイトルを獲得。チームWRTはチームズタイトルも獲得し“2冠”を達成している。

■“女性チーム vs 日本チーム”ともに初優勝をかけた争い

 昨年終焉を迎えたLMGTEプロに続き、カテゴリー最後のレースとなったLMGTEアマ。このクラスのドラマのひとつは、マッテオ・クレッソーニが“代打”でスタートドライバー務め、序盤からレースをリードした60号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・リンクス)のトップ独走からのリタイアだった。

 スタートからまもなく姉妹車85号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・デイムス)をかわした後、90秒以上のギャップを築いて6時間目まで首位を快走していた60号車だったが、体調不良によってスタートドライバーの役目を果たせなかったクラウディオ・スキアボーニの状態が回復せず。このブロンズドライバーが同車のステアリングを握ることが難しいことから、チームはレース時間が残り2時間30分あまりとなったところでガレージにクルマを戻し、60号車をリタイアさせている。

 僚友60号車ポルシェが戦列を去ったあと、“女性チーム”の85号車(サラ・ボビー/ミシェル・ガッティン/ラヘル・フレイ組)がクラス首位に浮上。これを98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ノースウエストAMR)が追っていたが、ハート・オブ・レーシングチームが運営するマシンはLMP2車両に追突した件でペナルティを受けクラス4番手に順位を下げる。

 これに代わって、レース折返しの時点で藤井誠暢のドライブで4番手につけていた777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)がクラス3番手から2番手にポジションアップ。首位とのタイム差は約15秒だ。

 終盤、クラス首位を争う2台はガッティンとキャスパー・スティーブンソンによる戦いとなり、一時は20秒ほどに開いたギャップは残り1時間を切った段階で約10秒に縮まる。その後も777号車のスティーブンソンがじわりじわりと差を詰めていき、フィニッシュまで残り15分の時点でついにその差が1秒台となる。

 どちらのチームが勝っても初優勝となる息を呑む攻防は、最後はタイヤの差が出たか、ミディアムタイヤ4本を履くスティーブンソンに対しハード4本で走行するガッティンがふたたび差を拡げていく。スタートから8時間後、歓喜の声はアイアン・デイムスのサインガードから響いた。

 今大会、星野敏が欠場したためリアム・タルボットが代役を務めたDステーション・レーシングは、惜しくも敗れたがGTE“ラストレース”でチーム最高位となる2位表彰台を獲得。3位にはノースウエストAMRの98号車アストンマーティンが入っている。

 木村武史がスタートから連続3スティントを担当したケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTEエボは、エステバン・マッソン、ダニエル・セラと繋いで5位フィニッシュ。ケイ・コッツォリーノが乗り込んだAFコルセ21号車フェラーリ488 GTEエボはクラス11位でレースを終えている。