チャンピオンシップ最終決戦、モビリティリゾートもてぎが舞台となる2023年スーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』のGT500クラス決勝は、今季を象徴するような“レインシャワー”に翻弄された63周を経て、坪井翔/宮田莉朋組の36号車au TOM'S GR Supraが今季3勝目、優勝でシリーズチャンピオンを決める盤石の強さを披露。この週末、全セッション制覇のパーフェクトが見えていた千代勝正/高星明誠組の3号車Niterra MOTUL Zの悲願は、無情にも残り5周で潰える劇的な幕切れとなった。

 前戦オートポリス(AP)では予選12番手から逆転勝利を決め、69ポイントで選手権首位に躍り出た36号車au TOM’Sに対し、同じくAPで優勝戦線に絡んだ3号車Niterra Zの千代と高星は、同62ポイントのランキング2位で最終戦へ。昨季もタイトル候補としてもてぎに臨みながら、惜しくも初戴冠を逃した雪辱に燃える。

 さらに本来なら、ポールポジション獲得の1点が欲しかったランク3位の16号車ARTA MUGEN NSX-GTの福住仁嶺/大津弘樹組も、ライバルの動向次第ながら『優勝』さえ飾れれば数字上は王座の可能性を残しての勝負となる。

 その16号車は前日予選でまさかのQ1ノックアウトを喫し、グリッド中段9番手からの巻き返しを狙う展開となり、選手権首位の36号車auは坪井のアタックで2列目3番手を確保。そして悲願の初チャンピオンを狙う3号車Niterraは、週末走り出しの公式練習から一度もトップの座を譲ることなく予選Q1、Q2を制し、ポール獲得の1ポイントを追加して視界良好のグリッド最前列から逃げを狙う。

 そんな天王山に向け雨も堪えて迎えた日曜は、11時30分からのウォームアップ走行も全車トラブルなく完了。やはり王座争いに向け3号車と36号車の2台が火花を散らし、ここでも首位とした3号車千代が1分38〜39秒台を並べるなど、いつもどおりの63周、チェッカーまで300kmの決勝に向け緊張感の高まる時間となる。午後13時ちょうどのパレード&フォーメーションラップを前に気温は23度、路面温度は28度とほぼ前日並みに落ち着くも、上空には厚みを増した不穏な雲が広がり始める。

 スタート直後のターン1からターン2こそ、ポールシッター背後の2台がそれぞれ前車に並び掛けようか……という動きを見せるも、オープニングラップのポジション変動はなし。その背後では、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zと前後を入れ替えた23号車MOTUL AUTECH Zが4番手に浮上してくる。

 だが、ここから早くも“GT劇場”が開幕し、わずか5周を前後した段階でついに雨粒が落ち始め、2番手発進の17号車Astemo NSX-GTの松下信治は3.7秒前方を行く3号車を追いながらワイパーを作動させ、そのテールには36号車auの坪井が迫る。

 10周を前にしてホームストレートを中心に雨が強まり、路面がハーフウエットの状況に変化したところで、64号車Modulo NSX-GTや24号車リアライズなどが大きくポジションダウン。各車ともセクターによって路面状況が変わる難しい条件でのドライブを強いられる。

 その間隙を突こうと、100号車STANLEY NSX-GTに乗る木村偉織に狙いを定めた8番手発進の14号車ENEOS X PRIME GR Supra大嶋和也だったが、5コーナーからサイド・バイ・サイドで並び、S字にアウトから進入したその瞬間、左のリヤサイドにヒットされスピンオフ。コース復帰を果たしたものの最後尾まで下がってしまう。

 その2周後には接触のダメージを負っていた24号車リアライズとともに、14号車ENEOS X PRIME大嶋も、スピンで痛めたタイヤ交換のためピットへ。15周を過ぎた時点で起因となった100号車には「他車への接触」でドライブスルーのペナルティが課される。

 一方、中団ではタイトル候補の16号車ARTAが熾烈なポジション争いの渦中に置かれ、背後から1台、また1台とオーバーテイクを決めてきた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraの関口雄飛にサイド・バイ・サイドを仕掛けられ、21周目のターン3〜4の攻防で7番手を奪われる。

 その背後ではトヨタ陣営内の勝負も繰り広げられ、37号車Deloitte TOM'S GR Supraの笹原右京が38号車ZENT CERUMO GR Supra石浦宏明の前へ。レース距離3分の1を越えたところで石浦はピットへ向かい、これがGTラストランの立川祐路にすべてを託す。

 やはり燃費に厳しいここもてぎでは“ミニマム”の戦略がセオリーか。26周目には首位の3号車もルーティンに向かい37.7秒の作業静止時間で高星明誠へ。続くラップには背後の17号車Astemo、36号車auも反応し、ここで34.4秒の迅速なピット滞留時間で復帰した“新スーパーフォーミュラ王者”の宮田莉朋が、17号車を攻略して実質2番手とする。

 時刻は14時を回り、30周を走破した時点で路面温度は24度まで低下するも、序盤の雨による影響は最小限に。スタートスティントを引っ張った39号車DENSOの関口が35周目でドライバー交代へ向かい、ここで中山雄一にスイッチ。あとはスティント後半戦で各ドライバーがいかにタイヤをマネジメントし、最終盤までレースペースを維持できるかが勝負となるなか、ここでふたたび雨の可能性が高まってくる。

 しかしレインタイヤへの交換を強いるような雨量とはならず。残り3分の1まで粘った37号車Deloitte TOM'Sと、16号車ARTAも40周目を挟んで相次いでスリックタイヤを選択。これで両車の逆転の目はほぼ消え、全車がルーティン作業を終え3号車Niterra、36号車au、そして23号車MOTULのトップ3に戻る。

 するとその直後。45周目突入のターン2で64号車Moduloの太田格之進がGT300クラス車両と交錯。Modulo NSX-GTは右リヤが大破するダメージで走行不可となり、ここでフルコースイエロー(FCY)が発動する。しかしセーフティカー(SC)を導入せずとも車両回収を終えられたことから、ほぼ1ラップでレースは再開。首位争いのマージンも約10秒で維持された状態となる。

 今季最後の勝負も残りは10周。ターン1ではオイルフラッグが表示されるなど、ふたたび雨の影響が強まるなか、ペースの上がらない3番手の23号車MOTULに、17号車Astemoが急接近。53周目のターン1からサイド・バイ・サイドで接触しながら並んだ塚越広大は、続くターン3〜4のクロスラインで松田次生のオーバーテイクに成功。ミシュラン陣営の一角を崩し、表彰台圏内に浮上していく。

 さらに雨脚が強まるセクター1では、トップ10で勝負を続けていた38号車ZENTの立川が、濡れた路面をものともせず16号車ARTAを仕留めるなど、ラストレースでも衰えぬ闘争心を見せる。

 ときを同じくして先頭集団のラップタイムも大幅に落ち、残り7周時点で16号車ARTAの福住仁嶺が先陣を切ってウエットタイヤへの交換を決断。続く周回でポディウム圏内にいた17号車Astemoも同様の判断を下すギャンブルに出る。

 ここからレイン組のタイムがどうなるかに注目が集まった59周目、衝撃のシーンが飛び込んでくる。

 スリックタイヤで粘り抜く覚悟を決め、先頭でS字をクリアしていた3号車Niterraの高星は、濡れて冷えた路面に姿勢を乱されフルカウンターのままコースオフ……。ここでグラベルにスタックする無念の状況に陥ってしまう。

 このアクシデントでFCYが発動し、牽引を受け脱出した高星は悔しさを堪えてリスタートを切る。一方、首位浮上を果たした36号車au宮田も、スロー走行を経たタイヤでハーフウエットの路面を慎重に読み切りファイナルラップへ。

 最終的に23号車、17号車を従えた36号車が逆転の今季3勝目でシリーズチャンピオンを確定。坪井にとっては2021年以来2年ぶり2回目、そして海外挑戦を目指す宮田にとっては、国内トップカテゴリー“ダブルタイトル”獲得の称号を手にする歓喜のトップチェッカーとなった。