11月2〜4日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されたWEC世界耐久選手権第7戦。今年もシーズン最終戦の舞台となった、中東ラウンドでの8時間にわたるレース中の出来事やレース後に実施された年間表彰式など、決勝日となった4日(土)以降の各種トピックスをお届けする。

■シーズンエンド・セレモニー開催

 WEC世界耐久選手権は11月5日(日)の夕方、ビーチサイドでアワード・セレモニーを開催し、2023年のシリーズチャンピオンを表彰した。この中ではセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮が2年連続でハイパーカーのドライバーズトロフィーを獲得。ブエミとハートレーは、トップカテゴリーの世界タイトルをそれぞれ4回獲得しており、このシリーズでもっとも成功したドライバーのひとりとなった。

 プライベーターを対象としたFIAワールドカップ部門では、ハーツ・チーム・JOTA(38号車ポルシェ963)がプロトン・コンペティション(99号車ポルシェ963)を破ってハイパーカー・チームズタイトルを獲得した。また、チームWRT(41号車オレカ07・ギブソン)はLMP2、コルベット・レーシング(33号車シボレー・コルベットC8.R)はLMGTEアマで、それぞれFIAエンデュランス・トロフィーを手中に収めている。

 授賞式では特別賞も授与された。ドリアーヌ・パンは、プレマ・レーシング(63号車オレカ07)からLMP2に参戦したデビューシーズンの“レベレーション・オブ・ザ・イヤー”に輝き、トーマス・フロー(AFコルセ)は傑出したアマチュアドライバーとして“スポーツ・レーサー・オブ・ザ・イヤー”を受賞した。

 このほか、ゼネラルモーターズのスポーツカー・レーシング・プログラム・マネージャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、“パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー”を。プジョーは、二酸化炭素排出量削減への取り組みが評価され“DHLサステナビリティ・エンデュランス・アワード”を受け取った。

■序盤のオーバーテイクショー「楽しかった」

 スタート直後の接触が7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)のタイトル獲得に決定的な打撃を与えたにもかかわらず、マイク・コンウェイはSportscar365に対し、序盤のスティントで順位を上げるドライブを楽しんだと語った。「楽しかったよ。たくさんのオーバーテイク・マニューバーがあったのは良かった。そうでなければ、何周にもわたっても8号車の後ろを見ているだけになってしまうからね」

 コンウェイ、小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペスは、ル・マン24時間レースでのリタイアが大きな痛手となり、2勝をマークした8号車の倍、計4つのレースを制したにもかかわらずタイトルを逃した。

 これについてコンウェイは次のように語った。「7レースという短いチャンピオンシップなので、失ったものを取り戻すのは難しい。でも来年は8レースだから、もし誰かがル・マンで苦境に立たされたとしても、巻き返すチャンスがあるかもしれない。僕らはポルティマオも良くなかったしね」

■意図的なペースダウンのうわさを否定

 フェラーリの耐久レースカー責任者であるフェルディナンド・カニーゾは、レース後の記者会見で、パドックでのペースに関する“あるうわさ”に言及した。

「BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)を向上させるためにマシンのペースを落としている、といううわさを払拭したい」と同氏。「そんなことはあり得ない。私たちは、つねにベストを尽くしているのだから、敬意が必要だと思う。このようなうわさがパドックに流れることを我々は望んでいない。なぜなら、それは絶対に真実ではないためだ」

 51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)は、リヤダンパーの問題で終盤に順位を落とした。アレッサンドロ・ピエール・グイディは、ウィル・スティーブンスとケビン・エストーレのポルシェ963ペアに抜かれて6位に終わった。「ショックアブソーバーに問題があった」と説明したカニーゾ。「おそらくガスが抜けてしまったんだろう。明らかにリヤのグリップを得ることができていなかった」

■フットレストに問題発生

 プジョー・スポールのテクニカル・ディレクターであるオリビエ・ジャンソニは、週末が始まって以来苦戦を強いられてい2台のプジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)が8位と9位に終わったあと、「予想どおり」だったと語った。グスタボ・メネゼスの94号車は、最後にミディアムコンパウンドを履いてレースを終えた。

 ジャンソニは次のように語った。「ペースを見つけることがこの週末のキーアイテムだったと思う。デグラデーションが限界を超えてしまわないように、そしてスティントを適切に完了することができるように、ドライバーたちにはつねにペースを尊重するように求めた。我々のドライバーたちはそれを簡単にこなしてくれた」

 プロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963は、レース中盤にフットレストに問題が発生し、ジャンマリア・ブルーニがステアリングを握った際にブレーキングに影響が出た。ドイツチームは2戦連続でコックピットの修理を余儀なくされ、貴重な時間を失うこととなった。

■勝率5割超え。バーレーンでは4戦負け知らずのWRT

 来シーズンはBMW MハイブリッドV8でハイパーカークラスに参戦するチームWRTは、過去3シーズンにわたる19レースのうち10勝目を挙げ、WECのLMP2時代を締めくくった。ベルギーのチームは、バーレーンでの4連勝を達成。チーム代表のヴァンサン・ボッセは、「LMP2レースにおける3シーズンの最後を飾ることができ、最高にハッピーだ」と喜びを語った。

 ヴァンウォール・バンダーベル680・ギブソンは、レース中にエンジンのトラブルに見舞われた。フロイド・ヴァンウォール・レーシング・チームは、マシンがパワー不足に陥っている間にイグニッションコイルとインジェクターを交換したと理解されている。

 ミシュラン・モータースポーツの耐久レース・マネージャーであるピエール・アルベスは、路面温度が日没後も30℃を超える状態が続いたため、ハイパーカーチームがレースの大半でミディアムよりもハード・オプションを選択したことは「驚きではない」と述べた。

 アルベスは各チームのタイヤ運用について次のように続けた。「ハイパーカーのすべてのチームは左側のタイヤを計画的に交換し、TOYOTA GAZOO Racingは最後の1時間半に限り右側のタイヤをミディアム・コンパウンドに切り替えた」

 フェラーリ499Pとハーツ・チーム・JOTAのポルシェ963は、終始ハードのままだった。トヨタとファクトリーポルシェ963の各2台、そしてプジョーの1台がミディアムを試した。

■トップ快走からリタイアの理由

 GTEアマクラスで最後レースウイナーとなったミシェル・ガッティンは、姉妹車60号車ポルシェ911 RSR-19のクルーに同情を示した。アイアン・リンクスは、ブロンズドライバーのクラウディオ・スキアボーニが体調不良で走行できず、残り2時間あまりでトップ走行からリタイアせざるを得なかったからだ。ブロンズとして、彼は2時間20分の走行が必要だった。

 ガッティンはSportscar365に次のように語った。「何が起きているのかは見当はついていました。一時はアイアン・リンクスの2台があそこにいて、とても素敵に見えました。悲しいですが、これがレースです。誰もが元気でなければなりませんが、残念ながら今日はそうではありませんでした」

 ポルシェはGTEアマ時代の初戦と最終戦を勝利で飾った。ガッティン、ラヘル・フレイ、サラ・ボビーは、2012年のセブリングでチーム・フェルバーマイヤー・プロトンが獲得して以来、メーカーとしては24回目、そしてこのカテゴリー最後の優勝を果たした。プロトンは今シーズン、アイアン・リンクスにポルシェ911 RSR-19を提供した。「私たちは歴史に残ることになりました」とガッティン。「私たちがしたことをとても誇りに思っていますが、GT3カーでさらに多くのことが起こることを願っています」

■あった“かもしれない”Dステーションの初優勝

 Dステーション・レーシングが最後のドライバー交代を行う直前、藤井誠暢は残り2時間のところでピットに戻った。チームによると、このとき約8秒のタイムロスがあったという。その後、キャスパー・スティーブンソンが26秒差からガッティンの背後に迫ったが、最後は突き放されるかたちで5.5秒及ばず2位でフィニッシュした。

 25号車アストンマーティン・バンテージAMR(ORT・バイ・TF)はエンジントラブルにより、残り20分でリタイアとなった。「僕たちは追い上げていたし、表彰台も狙えた」とアハマド・アル・ハーティは語った。

 ユナイテッド・オートスポーツのオレカ07・ギブソンは、2台とも1周目のターン2での接触でフロントとリヤにダメージを負い、ヴァンウォールも巻き込まれた。テクニカルディレクターのヤクブ・アンドレアセンがSportscar365に語ったところによると、ユナイテッドは2台ともリヤデッキを交換したが、ノーズはつけたままだったという。

 アンドレアセンは、このダメージが両オレカの持続的なペースに影響したと述べた。「レース中のダメージを最小限に抑えようとした結果だ。我々にとっては難しいレースだった。(ポールシッターだった)23号車はテールを交換したが、レース後のチェックでは両方のクルマのノーズにダメージがあった」

■気づいたときには、すでに手遅れ

 ユナイテッド・オートスポーツとベクター・スポーツは、タイヤ空気圧の規定以下だったことによる90秒間のストップ&ゴー・ペナルティを受け、LMP2クラス首位の座を失った。ユナイテッドは1本のタイヤが制限値を下回っていたのに対し、ベクターは4本とも制限値を下回っていた。

 ベクター・スポーツの10号車オレカは、エンジン・スロットル・センサーの不具合が疑われるトラブルに遭遇した後、最終的に完走扱いにならなかった。

 ファン・マヌエル・コレアは、プレマ・レーシングの9号車オレカがレースの大半で表彰台争いに加わっていたにもかかわらず、LMP2での初の表彰台を逃した。「燃料セーブに少し引っかかってしまって、手遅れになるまで他のチームが燃料を節約していることに気づかなかったんだ」と彼は説明した。「(僕たちの戦略は)ベストな判断ではなかったかもしれないが、それが現実だ」

■2024年はフォーミュラEに専念。カムバックを信じるダ・コスタ

 WECのフレデリック・ルキアンCEOは、チャンピオンシップが今年、テレビ視聴者数をほぼ倍増させ、同時にソーシャルメディア上のファンエンゲージメントも倍増させたことを明らかにした。この成功の大きな要因は、WECのYouTubeドキュメンタリー番組『Full Access』の第2シーズンが40万ビューを記録したことだ。

 ACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長によれば、チケットが完売した今年“100周年”のル・マン24時間レースは、10万人ものキャンセル待ちを記録したという。

 ルキアンによると、WECが2025年シーズンにモンツァに戻るかどうかは、まだ決まっていないという。来年のカレンダーでは改修が行われるモンツァに代わって、イモラが使用される予定となっている。

 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、来年フォーミュラEに専念した後、将来的にはJOTAで“家族”と再会したいと考えている。「来年ここにいないことがどれほど悲しいことか……。僕はもちろん、チーム側もやる気があったのにね」とダ・コスタ。「痛いけれど、将来のカムバックのために(ポルシェの)ボスを信じるよ。(JOTAは)僕の家族だ。彼らは僕にル・マンで勝つチャンスを与えてくれたんだ」