アルファタウリのダニエル・リカルドは、F1第21戦サンパウロGPのスタート直後に発生した大クラッシュを、まさに文字通り生きて抜け出すことができ、胸をなで下ろした。クラッシュで脱輪したタイヤがリカルドの頭部をかすめ、アルファタウリのマシンのリヤウイングを直撃したのだ。

 リカルドは17番グリッドからレースをスタートしたので、前方で展開するマシン同士のクラッシュをはっきり見ることができた。ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)とアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)が接触し、アルボンはハースのもう1台のケビン・マグヌッセンに接触した。マグヌッセンとアルボンがコースを逸れターン1のアウトサイドにあるバリアに衝突するなか、リカルドはクラッシュで生じた混乱とデブリを避けるために懸命にマシンを操った。

 ところが、リカルドが1コーナーにさしかかろうとするとき、アルボンのマシンのリムから外れたタイヤがコースに跳ね返り、リカルドの進路へと飛んできた。幸いなことに、外れたタイヤはリカルドのマシンのコクピットではなく、リヤウイングを直撃した。それでもこれは、リカルドにとってまさに危機一髪の瞬間だった。

「あれだけの大クラッシュが目の前で起き、デブリがたくさん飛散し、そのただ中を走り抜ける感じがした」とリカルドは振り返った。

「そうしたなか、リムからタイヤが外れ、まるでフリスビーみたいに空中を飛んでこちらに近づいてくるのが見えた。避けようと首をすくめたのを覚えている」

「何も衝撃を感じなかったのでひとまず安心したが、ミラーを確認するとリヤウイングがかなり壊れているのが見えたので、タイヤがそこに当たったのだなと思った。当然ながらフラストレーションを感じたよ」

「だがそうした状況を今になって思い返してみると、自分に当たらなくて本当によかったと思う」

 グランプリで8回の優勝経験のあるリカルドは、実際、命にかかわったかもしれない直撃を回避できたことに感謝した。しかし安堵したのもつかの間、すぐに失望がやってきたという。

「おかしな話だが、自分に当たらなかったと分かり、次いでウイングを見た瞬間、『やられた!』と思った。ホッとした気持ちが瞬時に失望へと変わった。僕にとってはレースの終わりを意味すると思ったからだ」

「レースモードになっているときは考えが及ばないが、いま振り返ってみると、みんなが無事にクラッシュを切り抜けられて本当によかった。最悪の結果になった可能性だってあるわけだからね。その部分を感謝する気持ちは残しておきたい」

「ただ、レースでもう少し勝負に絡みたかった。そこが少し残念だ」

 アルファタウリは、赤旗が出ている間にリカルドのマシンに必要な修理を施した。しかしレース再開後は、リカルドは同じオーストラリア出身であるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の少し前を走り、最下位争いをしなければならなかった。ピアストリもまた、スタート時のクラッシュに巻き込まれて損害を受けていた。最終的にリカルドは13位、ピアストリは14位でレースを終えている。