FIA国際自動車連盟およびACOフランス西部自動車クラブは、2024年のWEC世界耐久選手権シーズンに向けてハイパーカークラスのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス:性能調整)システムをさらに改善することを検討しているが、同時にシリーズ幹部らは、競技者がそのプロセスだけに頼ってはならない、と強調している。

■2023シーズンの結果は「BoPではなく、経験の差」とACO会長

 2023年、WECトップクラスにLMDhカーが導入されたことにより、BoPのプロセスは変更され、通常は複数のレースごとに、主にシミュレーションデータに基づいてBoPテーブルを事前に公開することで、より安定性をもたらすように設計された。

 だが、更新された規格による最初のシーズンは、ル・マン24時間レースの前にルール外で行われたBoPの変更など、いくつかの物議を醸す瞬間に直面した。

 2024年シーズンに向けたBoP見直し案をテーマとしたメーカーとの最近の会合では、さまざまな反応があったと考えられており、FIAとACOは現在のプロセスの改良を進めることになった。

 2024年に向けてBoPシステムに変更があるかとの質問に対し、ACOのピエール・フィヨン会長は「変更するのではなく、改善する」と述べている。

 FIA耐久委員会のリシャール・ミル委員長は、BoPがレースの結果を左右してはならないと断言した。

「来年に向けて、我々はもっとシンプルなことをしたいと思っているが、それは進行中の作業である。マニュファクチャラーは性能を発揮する責任を負わなければならないため、より多くの責任がメーカーに与えられることになる」と彼は説明した。

「BoPは“怠惰の枕”ではない。もし、ある競技者が間違った選択をした、あるいはパフォーマンスを発揮できなかったなどの理由でBoP(の緩和)を期待している場合、そのBoPではその他の全員のパフォーマンスが引き下げられることになるが、それは単なる夢であり、 不可能なことだ」

「我々は可能な限り、うまくやってきた」

「現在では、もし2位でレースを終えたとき、それはパフォーマンスが悪かったからではなく、BoPのせいだと主張するようになっている。BoPはまた、(メーカーの)取締役会などに対する完璧な言い訳ともなっている。我々はそれを認識しており、それを承知しており、我々は責任を負う」

「すべてをコントロールすることなど不可能だ。我々はメーカーの仕事をすることはできない。我々は世界のすべての不幸を解決することはできないのだ」

「我々は、一定のレベルまでは支援できる。だが、その後は何もできない。すべての問題を解決できると想像するのは純粋な夢だ。我々はそのためにここにいるわけではないし、それは私たちの義務でもないし、目的でもない」

 ミルは、BoPは異なる技術規制に従って実行されるル・マン・ハイパーカー(LMH)とLMDhのふたつの異なるプラットフォームを特徴とするクラス内でのコスト上昇を防ぐために導入されたと指摘する。

「コストや材料の高騰を避けるために充分な最低重量を設定している。制限された出力についても同様だ」と彼は言った。

「コストの愚かな高騰を避けるための要素はすでにそろっているのだ」

「最終的には、人々が自分自身を評価できる形式が完成しているのだから、その後は自分の仕事をしなければならない」

 フルタイムでグリッドに残っている5つのマニュファクチャラーのうち、今年勝利を収めたのがわずか2社だったことにある程度の失望感があるかと問われると、フィヨンはその要因はBoPではなく“経験の差”であると述べている。

「もちろん我々は、より多くの勝者がいることを望んでいる」とフィヨン。

「しかし、よく考えてみると、経験はとても重要だ」

「キャデラックはこのチャンピオンシップに初めて参戦した。ポルシェは、新しいチームだ。フェラーリについては新しいチームではなく、以前はLMGTEに参戦していたので、以前の経験はとても重要なものだったと思う」

 さらにミルは次のように補足する。

「(パフォーマンスの)差がどんどん縮まっていることは、我々がやってきたことの証でもある」

「スティント、タイヤの消費量、戦略、ドライバーなど、変化しやすいパラメーターがそこにはたくさんあるのだ。我々の問題ではないパラメータが、たくさんある」

■2023年後半は「管理できていなかった」とフェラーリ

 フェラーリのグローバル耐久責任者であるアントネッロ・コレッタは記者団に対し、主催者が来年に向けてBoPの「状況を変える」ことを期待していると語った。

 2023年、100周年のル・マン24時間レースで画期的な勝利を収めたこのイタリアのメーカーは、レギュラーシーズンのWECレースでは優勝を逃しており、ル・マン以外のすべてのラウンドではトヨタGAZOO Racingがシーズンを席巻した。

「シーズン後半は非常に危機的状況だった」とコレッタは語った。

「シーズン後半、当局が完璧に管理できていなかったことは、すべての人々の目に留まっていると思う」

「シーズンの前半は非常にポジティブだったと思う。最初の数レースでは良い戦いが見られたが、 シーズン後半はまったく様相が変わってきた」

「状況からして、すぐに何かを変えるのは不可能と考えるのが普通だ。しかし、このチャンピオンシップではすべてのレースで、すべてのマニュファクチャラー間で良い戦いをする必要があるので、2024年が最初のレースからすべての人にとって良いシーズンになることを願っている」

 ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハとGMのスポーツカーレースプログラムマネジャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、2024年に向けたBoPプロセスの変更案についての質問に対し、コメントを拒否している。