大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、長年アルファタウリ/トロロッソのチーム代表を務め、今年でその座から退くことが決まっているフランツ・トストに焦点を当てた。

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 今シーズンの終わりに近づくとともに、あるF1チーム代表の印象的なキャリアも締めくくりへと向かっている。最終戦アブダビGPは、フランツ・トストがアルファタウリのボスとしてチームの週末を監督する最後のグランプリになる。後任のローレン・メキースが具体的にいつから役職を引き継ぎ、ファエンツァでの仕事をスタートするかによって、トストの退任の具体的なタイミングが決まるものの、冬の間に彼がフルタイムの指揮官の座を譲り、コンサルタントの役割に移ることは確かだ。

 退任が発表されてからの数カ月で、すでにトストの役割は変化している。アルファタウリにはすでに新しいCEOとしてピーター・バイエルが加入、かつてFIAに所属していたバイエルは、現在、チームのスポークスマン的な役割も担っている。それはトストにとって歓迎すべき状況だ。

 トストは常に脚光を浴びているよりも、チームの運営に集中し、事実に基づいた率直な方法で問題に対処することを好んでいるのだ。トストのそのアプローチは、彼の責任と影響力は常にレッドブルによって制限され、クリスチャン・ホーナーとヘルムート・マルコが何を望むかに左右されてきたことに起因する。とはいえ、これまでトストのやり方は功を奏してきた。

 アルファタウリはジュニアチームであり、ドライバーの選択権はレッドブルにある。今年の夏には、ニック・デ・フリースが外されてダニエル・リカルドが起用されたが、その変更もレッドブルが決めたことだった。

 だが、トストにとって、それはポジティブな変化だった。アルファタウリに欠けていた点のひとつは、ドライバーたちの経験だった。デ・フリースは他のカテゴリーで豊富な経験を持っていたため、トストはそこに頼れることを期待していたが、F1での実戦経験のなさによりデ・フリースはコース上で結果を出すことができず、シーズン途中で外されてしまった。しかしリカルドはF1で長いキャリアを築いてきたドライバーだ。トストはすぐさまエンジニアリングチームに対し、リカルドにフィードバックと方向性の面で頼るように指示した。トストは、リカルドのスキルを活用することを強く望んだのだ。

 手の負傷により、リカルドは数戦、外れなければならなかったが、オースティンで復帰。ほどなくして、トストがリカルドになぜそれほど大きな期待をかけたのかが明らかになった。アルファタウリはシンガポールでマシンに大規模なアップグレードを導入したが、なかなかパッケージを最大限に活用することができずにいた。そのプロセスを加速することにリカルドが貢献した。

 そしてそれはリカルドにもプラスの影響をもたらした。チームから全面的に信頼されることが、マクラーレンでの数年で直面した困難から立ち直ることにつながったのだ。

 トストは、リカルドに対して信頼を示すのは簡単なことだったと、ブラジルの週末に述べている。

「(彼がベストの状態に戻ることに)何の疑いも抱いていなかった。彼には豊富な経験があり、F1マシンを速く走らせる能力を持っている。そういう能力を失うことなどあり得ない。一度知ったことは失うことはないのだ」

「彼に欠けていたのは、マシンへの信頼、チームへの信頼だった。そのために、彼が通常なら可能なレベルのパフォーマンスを発揮することができなかった」

 トストは、リカルドが立ち直る手助けをし、同時に角田裕毅の成長をも促した。初めてベテランと組ませることで角田へのプレッシャーを軽減し、彼にエンジニアリング面の学習をさせた。それによって角田は強力なパフォーマンスを発揮できるようになった。

 角田はメキシコでポイントを逃したが、ブラジルではスプリントとグランプリの両方で得点を挙げて挽回した。いまや、アルファタウリには、可能な限り最高の結果をもたらす能力があるドライバーがふたりいることが証明されたのだ。

 アルファタウリにとって今シーズンの前半は非常に厳しいものだったが、トストは、チームが好調な時期に去ることができそうだ。残り2戦でコンストラクターズ選手権においてウイリアムズに7ポイント差にまで迫っている。3戦前にはアルファタウリがランキング7位争いをすることは不可能に思えた。もしもウイリアムズを追い抜くことができたなら、トストに対する素晴らしい別れのプレゼントになるだろう。