2023年の新春1月2日に、スノーモービルでの撮影中に不慮の事故に遭遇。惜しくも還らぬ人となってしまった故ケン・ブロックだが、その逝去から約1年を経て、彼のプロジェクトであるHoonigan(フーニガン)とアウディが、人気動画シリーズ『ケン・ブロック・ジムカーナ』の最新作となるファイナル予告編を公開。この『Electrikhana TWO(エレクトリカーナ2)』の本編ラウンチは12月が予定されている。

 これまでケン・ブロック最後の作品だと考えられていた2022年の『Ken Block's ELECTRIKHANA: High Stakes Playground; Las Vegas, in the Audi S1 HOONITRON』に続き、今回サプライズでYouTubeに投稿された予告編ビデオでは、あのブロック本人がフル電動モデル『アウディS1 e-tronクワトロ・フーニトロン』のコクピットに座り、メキシコシティを縦横無尽に駆け回る様子が描かれる。

 映像は初期のジムカーナ・シリーズを彷彿とさせるプラザ・デ・トロスの闘牛場から始まり、フォード時代へのオマージュを捧げたのち、ラウンドアバウトでおなじみの妙技を披露。高層ビル群のエントランスやファサードをバックに、メキシコシティ国際空港の敷地内へ突入する。

 ここメキシコでの撮影が敢行されたのは、かつてブロック自身も戦ったWRC世界ラリー選手権でも恒例の古都グアナファトの路上にてフォード・フォーカスRS RXをフィーチャーした『GYMKHANA TEN: The Ultimate Tire Slaying Tour』以来となり、オールエレクトリックの『Hoonitron(フーニトロン)』としてはラスベガスの前作に続く2作目となる。

 その前作はブロックにとってアウディとの最初のコラボレーションであり、フォードとの11年間の関係に終止符が打たれた後の取り組みとして、自身初の電動化作品となった。

■車両制作費用は数十億円とも

 実際にブロック自身は、競技の舞台で先行してBEVの経験を積んでおり電動オフロード選手権、エクストリームEの創設前夜には、同シリーズのワンメイク車両『オデッセイ21』のテストプログラムでダカールラリー本戦の一部ステージに競技参加。2020年にはWorldRX世界ラリー選手権の電化に向けた“プロジェクトE”から生み出された、フォード・フィエスタERXのステアリングを握っている。

 こうした系譜も受け継いで誕生したアウディS1 e-tronクワトロ・フーニトロンは、この『エレクトリカーナ2』の撮影を終えて今季のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)にも登場。ル・マン24時間で“9冠”の金字塔を打ち立てたトム・クリステンセンのドライブでファンの前を疾走した。

 わずか8カ月未満の準備期間で「ケン・ブロックのためだけに、彼の理想とするドリフトが可能な電気自動車」を製作したアウディは、その開発においてブロック本人から18インチホイールや車体寸法、サスペンションの設定などに具体的なアイデアの提供を得て、車両停止状態から瞬時に150km/hのドーナツターンを描けるモンスターEVを完成させた。

 一説には、このワンオフモデルの開発に数十億の費用がかかったと推測されているなか、初公開されて以降ほぼ2年が経った同車の活用法や今後の展開は見通せない状況に。

 ダカールラリーにこそアウディRS Q e-tron E2で挑戦を続けるも、2021年限りでのフォーミュラE撤退や、ル・マンに向けたLMDhの開発計画もキャンセルし、カスタマーレーシング活動の支援休止でGT3やGT4の行先も不透明な今、2026年にパワーユニット・サプライヤーとしてF1参入に全力を注ぐのかどうかにも、改めて注目が集まる。