MotoGP第18戦マレーシアGPで、エネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)が今季初優勝を飾った。ファクトリーチーム入りしながらも怪我が続いた今季、ついにバスティアニーニが表彰台に戻ってきた。

 会見場で真ん中の椅子に座ったバスティアニーニは、「難しいなんてものじゃない。最悪のシーズンだった」と、今季について振り返った。バスティアニーニがそう言うのも無理はない。2022年シーズンでランキング3位を獲得して、2023年からドゥカティのファクトリーチームであるドゥカティ・レノボ・チーム入りを果たした。しかし、赤いレーシングスーツに身を包み、赤いマシンを駆った開幕戦ポルトガルGPのスプリントレースで、他車の転倒に巻き込まれる形でクラッシュ。右の肩甲骨を骨折した。結果的に、この怪我によってバスティアニーニはフランスGPまでの欠場を余儀なくされ、正式に復帰したのは第6戦イタリアGPからである。

 そしてその数戦後、カタルーニャGPの1コーナーで転倒。このときのアクシデントは、多重クラッシュとなったものだ。バスティアニーニは左足首と左手を骨折し、サンマリノGPから日本GPまでの3戦を欠場した。度重なる大きな怪我に苦しめられたのち、ようやく本来のポジションに戻ってきた、といったところだろう。

「1回目の怪我のあとは、痛みがひどくてトレーニングできなかったんだ。ジムでのハードトレーニングは、3カ月間、おあずけになってしまった。でも、MotoGPで速く走りたいなら、ほかの部分についてもしっかりトレーニングしないといけないし。本当に、今、信じられない気持ちなんだ。素晴らしいレースだった」

 バスティアニーニは予選で3番手を獲得して──これもまた、今季の自己ベストグリッドである──、スプリントレースでは惜しくも表彰台を逃したものの、3位のフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)から遅れること、わずか0.208秒差の4位でゴールしていた。バスティアニーニはスプリントレースでの自分のペースを確認して、「決勝レースはもっと行けるだろう」と考えていたという。そして実際に、決勝レースはバスティアニーニの考えた通りになったというわけだ。

 1周目にトップに立ったバスティアニーニは、アレックス・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)に追従されながら、レースリーダーの座を明け渡すことはなかった。「(フロントタイヤの温度のためにも)トップの座を守ることは大事だった。誰かの後ろにつけば、タイヤの空気圧によって、速く走ったりオーバーテイクしたりするのが難しくなる。それが速く走るひとつのカギなんだ。アレックス(・マルケス)は、レース中ずっと、僕にプレッシャーをかけていたよ(笑)。残り5、6周になるまで0.5秒くらいの差だった」と、バスティアニーニはレースを振り返る。

 一方、20周のレースでずっとバスティアニーニの後ろを走っていたアレックス・マルケスは、「エネアは素晴らしいペースで走っていた。今年は去年よりも(トータルで)15秒くらい速かったんだ」と素直にバスティアニーニの速さを称えていた。

 ついにバスティアニーニが復活ののろしを上げた。それはつまり、ドゥカティ内の争いという点でも、ドゥカティ勢に挑む他メーカーから見ても、ドゥカティの手強いライダーがまたひとり、目覚めたともいえるだろう。