豪州大陸で2週連続開催となった新生TCRワールドツアーは第8戦が、そして地元のTCRオーストラリア・シリーズは最終戦となる第7戦が、11月10〜12日に“聖地”バサーストで開催され、難攻不落のマウントパノラマはトラブルやアクシデントによるセーフティカー(SC)多発の激しい週末に。

 しかし前戦シドニーの雪辱とばかりに世界戦組が奮起し、レギュラー勢ほぼ初体験のトラックで、サンティアゴ・ウルティア(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)、ノルベルト・ミケリス(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)、そしてヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)らが勝利を飾る展開に。

 これで6位、4位、3位と週末はトラブルを避け「スマートな」勝負に徹したロブ・ハフ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)が、エルラシェールと384点の同ポイントで並び、次週の最終戦マカオ“ギア・レース”を迎えることとなった。

 前戦シドニー・モータースポーツパークでの勝負を終え、選手権首位ミケリスとハフが1ポイント差で乗り込んできたバサーストの週末は、引き続き地元シリーズの競技規則適用で最大105点の積み増しが可能な3ヒート制となり、チャンピオンシップを考えても重要な天王山に。

 長くてパワーを要求されるストレートや、上りと下りのセクション、そして高速コーナーと低速コーナーが混在する“コンクリートウォールに囲まれた山岳路”など、シーズンのこの段階でのミスが真に致命的なものになりうる、シビアな勝負が待ち受ける。

 その走り出しで不運に見舞われたのは元ポイントリーダーのエルラシェールで、FP1のアウトラップからエンジンに不調を抱えた新型リンク&コー03 TCRは、FP2に向けエンジン交換を強いられる。また、このラウンドを前に10kgのコンペンセイション・ウエイトを課されたハフのアウディも、豪州大陸輸送中のトラブルでエンジンを損傷。同じく新エンジンへの交換作業を強いられた。

 これによりWTCR世界ツーリングカー・カップ“2冠”のエルラシェールは、予選を前に5グリッド降格のペナルティが適用され、一方で2012年のWTCC世界ツーリングカー選手権王者ハフには「不可抗力」としてノーペナルティの裁定が下った。

■レース1はFL5シビックがポールも蹴り出しで遅れる
 迎えた予選もFP1とFP2の流れを踏まえた展開となり、前戦から待望の新型モデルにスイッチした地元シリーズのディフェンディングチャンピオン、トニー・ダルベルト(ウォール・レーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がFP1最速発進の勢いそのままに、エルラシェールを撃破してのポールポジションを奪取。FP2を最速とした元世界王者は降格で7番グリッドからの勝負となり、背後に並んでいたウルティアとテッド・ビョーク(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)がそれぞれ昇格。2列目4番手(実質5番手タイム)には、今回唯一の40kgを搭載するミケル・アズコナ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)が気迫のドライブを見せた。

 そのままスタートが切られたレース1は、ポールシッターのFL5が蹴り出しで遅れ、ウルティアのリンク&コーに続いて3列目5番手からネストール・ジロラミ(ウォール・レーシング/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が浮上してくる。

 その背後で3番手後退のダルベルトに急接近したアズコナだったが、やはり自重が祟ったか6周目に右フロントタイヤが限界に達して脱落。自走でピットに戻ることも叶わず、ここでSCが出動する。

 残り2周でリスタートが切られると、トップ10圏内ではハフがTCRオーストラリアのタイトル候補ジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)を仕留め、6番手を奪取。前方では勝者ウルティアにジロラミ、ダルべルトのFL5シビックRが表彰台を固める一方、ミケリスは10位でチェッカーを受け、この時点で選手権首位から陥落することに。ただし、このリザルトでレース2のリバースグリッドを手にする。

 明けた日曜の現地13時を前に始まったレース2は、その優位性を活かしたミケリスが意地を見せ、一時は地元のアーロン・キャメロン(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)やフレデリック・バービッシュ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)らに先行されるも、わずか3周で首位を奪還する。

 前戦シドニーで鮮烈な連勝を飾った地元シリーズの初代王者ウィル・ブラウン(メルボルン・パフォーマンス・センター/アウディRS3 LMS 2)がドライブシャフト破損で戦列を去るなか、キャメロンとビョークを従えたミケリスがトップチェッカーを受け、4位にハフが滑り込む結果となった。

■最終レース3は波乱続出。エルラシェールがSCフィニッシュ優勝
 そして夕刻16時を回って迎えたレース3は、最終ヒートらしく波乱続発の展開となり、ポールシッターのウルティアが5周目にウォールに衝突し、サスペンションが壊れエルラシェールに次ぐ2位の地位をフイにしてしまう。

 また、地元キャメロンのプジョーも終盤にエンジンがオーバーヒートしてリタイアを喫し、僚友ジョーダン・コックス(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)もエンジントラブルでコース上にストップしたため、7周目に2日連続のSCが導入される。

 このSCピリオドは残り1周で解除の予定だったが、前述のキャメロンがそれを阻んだことでそのまま隊列走行が延長に。この間、先導走行のスローな状況にも関わらず、アズコナが名物コーナーの“フォレスト・エルボー”でクラッシュする場面もあり、エルラシェールとビョークのリンク&コーがSC先導のままワン・ツーを達成。ハフが3位に滑り込んだ。

「今週末は大変だった。コンペンセイション・ウエイトが最大でも多くのポイントを獲得できる良い位置にいたが、運が味方してくれなかった」と、このSC走行中に右フロントサスペンションを損傷したアズコナ。

「実はレース1のパンクが影響してステアリング系統に不具合を抱え、最後のレース3でそれが具現化した。あんな速度でも突如パワステを失い壁にぶつかった。競争は非常に厳しいものだったが、マウントパノラマでレースをする夢が叶い、本当に楽しかったよ」

 そしてこの豪州連戦でポイントを荒稼ぎし、最大40点差もあったギャップを埋めてみせたハフは、自身が最大の得意コースとし、自他ともに認める“スペシャリスト”として、追加ウエイトの搭載もなく同率選手権首位でギア・サーキットに乗り込む。

「我々のメカニックとエンジニアは本当に特別な努力をしてきたが、それらすべての積み重ねの結果、僕はこれまでで最も成功したサーキットに、同率のポイントリーダーで臨むことができる。それはまさに僕らが目指してきたことさ」と続けたハフ。

「南米大陸以降、僕らは一貫性を持って本当に良い一歩を踏み出し、良い得点を決め、賢く、そして膨大なチームワークを発揮した。達成してきたことを心から誇りに思っているし、それはすべてマカオでプレーするためのものだね」

 そして2023年のTCRオーストラリアは、レース2でインタークーラーホースが緩むトラブルに見舞われたベイリー・スウィーニー(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)が失意の0ポイントとなり、僚友バカンが逆転王座を獲得。改めて、初年度TCRワールドツアー決着の最終戦は、3週連続開催となる11月16〜19日に掛けて、前述のマカオ“ギア・レース”で争われる。