11月20日、トヨタGAZOO Racing(TGR)の2024年WRC・WEC体制発表会のなかで、電撃的に明らかにされた宮田莉朋のFIA F2参戦。発表会の後、宮田は、中嶋一貴TGR-E(ヨーロッパ)副会長、小林可夢偉WECチーム代表兼ドライバー、平川亮とともに、今回の決定の経緯やこの後の展開について報道陣の質問に答えた。

 F2にまつわる続報は別記事に譲るとして、本稿では宮田の“残るふたつのプログラム”であるELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの参戦計画と、WEC・TGRチームのリザーブとしての役目について、さらなる詳細をお伝えする。

■かつての盟友が率いるチームに“育成”を託す

 発表会のなかでも触れられていたように、今回のF2参戦については全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGT・GT500クラスのダブル・タイトルを獲得したことで、急にオファーが舞い込んできたものだ。

 このF2の話が浮上する前の段階では、宮田の2024年はELMSのLMP2クラスと、WECのLMGT3クラスへの同時参戦が視野に入れられていたようだが、年間14ラウンドが組まれるF2へのフル参戦を優先する形で、アコーディスASPが担うレクサスRC F GT3のLMGT3プログラムからは外れることになったようだ。

 LMP2がトップカテゴリーに位置付けられるELMSは、来季6戦が予定されている。幸い、FIA F2とは1戦しか重複しないということで、宮田はELMSでヨーロッパの耐久レースの経験を積むことになる。

 ELMSには、今季までTGR・WECドライバーを務めたホセ・マリア・ロペスも2023年にラインアップに名を連ねていたクール・レーシングから参戦する。このチーム、かつてTGRからWECに出場していたニコラ・ラピエールが共同創設者兼ドライバーを務めており、宮田の加入先としては自然な成り行きとも言える。実際、交渉はスムーズに進んだようだ。

「ニコはもちろん旧知の仲ですので、話は今年の途中くらいからしていました」と一貴副会長は経緯を説明する。

「実際、チームなども見させてもらっているなかで、ドライバーを育てるという部分、ドライビングの分析であるとか、フィードバックであるとか、そういったところにすごく重点を置いているのを目の当たりしました」

「そういう意味で、若手ドライバーが成長できる環境としては素晴らしいと思います。やっぱりこれも、莉朋が国内レースで結果を出しているおかげで海外でも評価してもらえたので、話はお互いスムーズに進みました」

 当の宮田は「正直、WECしか見ていなかったのですが、ELMSというカテゴリーで成績が良ければル・マン24時間に参戦することもできるということで、全チームが勝ちに行くハイレベルな戦いになるでしょう。僕としても耐久レースは好きなので、すごく楽しみです」と期待を語っている。

 宮田も言うように、WECからは消滅するLMP2クラスだが、ル・マン24時間には参戦が可能。今年のル・マンにTGR・WECチャレンジドライバーとして帯同していた宮田は、「出たいという思いはある」と2024年のル・マン/LMP2出場にも、意欲を燃やしている。

 なお、クール・レーシングは2023年のELMS・LMP3クラスを制したことで、2024年ル・マン24時間レース(LMP2)への自動招待枠を獲得している。また、2024年のELMS・LMP2のドライバーとしては、シングルシーター出身の18歳のスペイン人ドライバー、ロレンツォ・フルクサとの契約を10月に発表済みだ。

■待望のトヨタGR010ハイブリッド“初乗り”は1月以降

 F2、ELMS参戦と並び、来季の宮田の3つ目のポジションとなるのが、TGR WECチームのリザーブドライバーという役目だ。2022年途中まではニック・デ・フリースが務め、2023シーズンは一貴副会長が兼任してきたポジションである。

 これに関して異例と言えるのは、宮田はトヨタのハイパーカー、GR010ハイブリッドをいまだ運転したことがない点だ。今年、チャレンジドライバーに選出された宮田だが、ハイパーカーはまだシミュレーターでしか体験していないのだ。

 これについては、会見後の囲み取材で以下のやりとりがあった。

──宮田選手がGR010ハイブリッドをテストする具体的な計画は?

一貴:1月から始まるテストで、何度か乗車する予定ではあります。「どこで」というのは、まだ具体的に決まりきっていない部分はありますが、やっぱりリザーブとして準備するために、「どこで乗ろう」という具体的な話は始まっています。

──まだ実車は乗っていない?

一貴&宮田:乗ってないです。

一貴:(宮田に)どうですか、シミュレーターしか乗ってないのにリザーブって。

可夢偉:すごいことよ?

宮田:いや、ほんとに(いまのところは)シミュレーターだけなので、本当にありがたいことですし、僕は当然ヨーロッパで走った結果もないので、本当に無名だったと思うんですが、リザーブという形で迎え入れてくれたTGRの皆さんには、感謝しかありません。

一貴:このリザーブの件、僕らから推したわけではないですからね。現場から上がってきた話なので。それだけ莉朋がちゃんと評価されてる、ということなんです。

可夢偉:「おぉ、いいのか? そっち(現場)がOKなら、いいけど」という形です。僕ら昔、WEC乗ろうと思ったらリザーブの前に、ドライバー・シュートアウト(いわゆるオーディション)みたいなやつ、しっかりやらされてたんです。……でもいまはもう、時代が変わりましたね。平川もシュートアウトあったよな?

平川:やりましたね。

可夢偉:厳しかったよな?

平川:(頷く)

 急に舞い込んだF2参戦、耐久レース最高峰への新たな挑戦と、急激に環境が変化することになる2024年の宮田。かねてより公言してきた“世界”という夢の舞台でどんな走りを見せてくれるのか、大いに注目していきたい。