スクーデリア・フェラーリは、1月25日にシャルル・ルクレールとの契約延長を発表したが、この際にカルロス・サインツについては触れなかった。ルクレールの前契約と同様に、サインツの現在の契約期間は今シーズン末までとなっている。

 フェラーリは、ルクレールが「2024年シーズンの後も」残留すると述べ、ルクレール自身は「今後の数シーズン」とコメントするにとどまり、正確な契約年数は明かされなかった。しかし新契約は長期にわたるものであると広く考えられており、期間は2029年末までで、2027年末までにある一定の結果が達成されない場合、ルクレール側が離脱を選ぶことができるという条件が盛り込まれているといわれる。

 ルクレールと長期契約を結んだことから、フレデリック・バスール代表を含む上層部は、ルクレールこそがフェラーリにタイトルをもたらすドライバーであると確信していることがわかる。もうひとつ、今回の発表によって明らかになったのは、サインツとの契約交渉が順調に進んでいないということだ。

 サインツは、2024年シーズン前に来年以降のシートを確定させたいという考えを繰り返し示してきた。サインツとフェラーリは交渉を進めているが、近いうちに合意に達する可能性は低くなってきているようだ。そうでなければ、サインツとの契約がまとまるのを待って、ドライバーふたりとの契約延長を同時に発表したはずだ。ちなみにメルセデスは、2023年8月末に、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルの新契約を同時に公表した。

 バスールとルクレールは、フェラーリ時代以前にも共に働いた時期があり、互いに強い信頼を寄せていることから、サインツ陣営は、新たな代表に就任したバスールが、ルクレールをあからさまに優先するのではないかという懸念を抱いた。

 2023年シーズンの間に、その懸念は非現実的であることがはっきりした。バスールはどちらかのドライバーを無条件に優先することはなく、前の位置にいる方が最大の結果をつかめるような戦略を立てて戦った。シンガポールGPでは3番グリッドのルクレールがポールシッターのサインツをしっかり援護。ルクレール自身は自分が勝つ可能性があると考えていたため、サポート役に徹することに不満を持っていたが、チームの指示に従って、サインツが勝利をつかむために貢献した。

 バスール代表はふたりを平等に扱っているが、新契約においては、ルクレールに非常に長期の契約が与えられる一方で、サインツに提示されているのは1年プラス1年のオプションであると言われている。サインツにとっては、その条件は受け入れられないものだろう。

 サインツはすでにフェラーリ以外の選択肢についても検討し始めている。2024年末でフェラーリから離脱する場合、移籍先の選択肢は多くはない。セルジオ・ペレスがレッドブルから去る可能性があるが、サインツはマックス・フェルスタッペンと過去に不仲であったことから、チームメイトとして選ばれることはないだろう。かつて所属したアルピーヌ/ルノーは、体制の不安定さを考えると、復帰には大きなリスクが伴う。

 最も有力と考えられるのは、ザウバー/アウディかもしれない。サインツは、2026年からザウバーとともにF1に参戦するアウディと、昨年半ばから連絡を取り続けている。サインツは、ザウバーCEOのアンドレアス・ザイドルやテクニカルディレクターのジェームズ・キーと良好な関係を結んでいる。また、父親のカルロス・サインツSr.は2024年ダカールラリーにチーム・アウディスポーツから参戦した。

 アウディがF1で成功を収めるには時間がかかるだろうが、サインツは、自分を中心にチームが構築されることが期待できるのであれば、新チームと長期的な契約を結ぶことを選ぶかもしれない。

 一方でサインツには、ひとまずフェラーリとの契約を延長した後で、メルセデスなどの2026年の空席を狙うという可能性も残されている。