1月28日(日)、WRC世界ラリー選手権開幕戦『ラリー・モンテカルロ』のSS15〜17が行われ、前日のデイ3で総合首位に立ったヒョンデ・シェル・モービスWRTのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が、最終日デイ4も勢いをそのままに、後続へのリードを広げて総合優勝を飾った。

 また、2024年シーズンから新たにポイント付与の対象となった日曜日のみの総合順位“スーパーサンデー”でも、3ステージすべてでトップタイムをマークしたヌービル/ウィダグ組が首位となっている。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、4日間をとおしての総合順位が7位、日曜日のみの順位は6位で今大会を終えている。

 1月25日(木)のナイトステージで幕を開けた2024年のラリー・モンテカルロ。金曜のデイ2、土曜のデイ3を経て迎えた大会最終日のデイ4は、SS15を皮切りに計3本のステージ、合計52.12kmで争われた。SS5、SS8に続いて今大会3度目の同一ステージとなったSS15『ラ・ブレオル/セロネ』は、太陽がまだ顔を出さず空も紫明に染まっている早朝7時ごろに戦いの幕が開ける。

 暗くも良好な空模様のもと、気温3度/路面温度7度のコンディションで開始されたオープングステージでは、各車ランプポッドを装着した状態での走行となった。ステージ前半は凍結や霜もなく安定した舗装路が続き、後半の登りセクションでは氷まじりの路面が現れるトリッキーなステージとなったが、その全区間をもっとも速いタイムで駆け抜けたのは、暫定総合首位に立つヌービルだった。

 総合2番手のTOYOTA GAZOO Racing WRT(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)との差は3.3秒と、少しの油断も許さない僅差を強く意識したヌービルは、後半の凍結エリアも臆することなく攻め、今大会6度目のトップタイムをマークした。

 リードを8.0秒に広げる渾身のアタックを終えた後、彼はガッツポーズを見せ「良いステージだった! 前半はフルプッシュで走った。そして後半は少し注意深くなったが、ほかのみんなもペースを下げざるを得なかったはずだ。でも僕はうまく走り抜けたんだ。自分のタイムに満足だよ」と振り返り、総合優勝に一歩近づいた喜びをのぞかせた。

 4.7秒差の2番手タイムをマークしたのはオジエだった。SS5とSS8で同ステージを制していたオジエは、ヌービルの背中を離すまいと、この日も安定した走りで好タイムをマークする。しかし、ヌービルのセクタータイムを聞かされると「それはいいアタックだね!僕は後半に少し慎重に行きすぎたよ」と驚嘆の声を漏らし、この日の軍配を予感したような回答をした。

 続くSS16は、『ディーニュ=レ=バン/ショドン=ノラント』が舞台となるクラシックステージだ。北から南へと峠を越える道のりで、最高地点の標高は1200mを超え、後半の下りに入れば、所々で逆光がキツく射す。

 総合優勝争いで窮地に立たされたオジエが、8.0秒に開いたギャップをどう埋めるかに注目が集まったが、タイムは先にアタックを終えていたチームメイトのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)から5.3秒遅れのステージ4番手。アタックを終えると、「今日最初の1本目で、戦いに決着がついてしまったかもしれない。僕は、いい週末を過ごせたと思っているよ。ティエリー(・ヌービル)はよくやっているね。見事だ」と口にしている。

 そんなオジエの奮闘もつゆ知らず、最終走順でコースに入ったヌービルはここでもベストタイムをマーク。タイム差を13.5秒に広げる驚速アタックを披露し、最終パワーステージへ向けて集中力を高めていく。

 いよいよ迎えた最終パワーステージは、伝統のチュリニ峠を含む『ラ・ボレーヌ=ベジュビー/コル・デ・チュリニ』で争われるSS17だ。ステージタイムに応じて上位5台にボーナスポイントが付与されるこの“パワーステージ”でも、暫定首位ヌービルが気を吐く熱い走りを披露。2番手タイムを記録したオジエに2.5秒差をつけ、この日3度目のトップタイムをマークした。

 最終日の全ステージを制したしたヌービル/ウィダグ組は、最終的にオジエに16.1秒の差をつけて優勝。ヌービルは2020年以来、自身2回目となる『ラリー・モンテカルロ』総合優勝を飾った。なお、彼らは土曜日終了時にトップに立っていたため18ポイントを獲得し、日曜も最速だったため7ポイントを追加、さらにパワーステージでベストを記録したことで5ポイントを加え、新しい選手権ポイントシステムが導入された初戦にいきなり30点を獲得する“フルポイントマーク”を果たしている。

■メーカー選手権はトヨタがリード

 総合2位には、今大会中に6度のステージウインを挙げたオジエ/ヴァンサン・ランデ組が入り、さらに29.1秒差の総合3位には、SS1からSS9まで首位に立っていたエバンス/スコット・マーティン組が続いた。トヨタは開幕戦でふたつの表彰台スロットを獲得し、マニュファクチャラーズポイント45点を獲得し、ヒョンデを1ポイント上回って首位に立っている。

 時折現れるスロットルトラブルと付き合いながら今大会を戦ったヒョンデのオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組(ヒョンデi20 Nラリー1)は総合4位でフィニッシュ。同チームの3台目をドライブしたアンドレアス・ミケルセン/トルステイン・エリクセン組は、4年間の経験を積んだWRC2クラスのマシンとのギャップに手を焼きながらも、徐々にラリー1マシンを手なずけて総合6位を獲得している。

 WRC2で経験を積んだふたりのドライバーとともに、心機一転のシーズンに臨んでいるMスポーツ・フォードWRTは、最終的にアドリアン・フルモー/アレックス・コリア組(フォード・プーマ・ラリー1)が総合5位、SS12でスタックしデイリタイアとなっていたグレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ組(フォード・プーマ・ラリー1)は再出走を果たし日曜日を7位で走破。“スーパーサンデー”と呼ばれる新システムのもと1ポイントを持ち帰ることに成功した。

 そして、デイ2に行われたSS3でのタイムロスにより総合順位を大きく下げていた勝田は、最終的に7位まで挽回。スーパーサンデーでは6位に入り、最終パワーステージでもオジエと0.1秒差の3番手タイムを記録する活躍を見せた。

 ラリー2マシンによって争われるWRC2勢は、クラス3番手で最終日を迎えたヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)が、この日行われた3本のSSすべてでライバル勢を上回り、最終ステージでの逆転劇を経てクラス優勝を果たした。SS17で逆転を許したぺぺ・ロペス(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)がクラス2位。同3位にはニコライ・グリアジン(シトロエンC3ラリー2)が続いている。

 また、今大会がWRC2クラスデビューとなったトヨタGRヤリス・ラリー2勢は、フランス人ペアのステファン・ルフェーブル/アンディ・マルフォイ組がクラス5位/総合13位で初戦を終えている。なお、非WRC2ノミネートのサミ・パヤリ/エンニ・マルコネン組(トヨタGRヤリス・ラリー2)が総合12位でこれを上回った。

 2024年WRCの次戦『ラリー・スウェーデン』は、北欧スウェーデン・ウメオを拠点に開催されるシーズン唯一のフルスノーラリー。2月15日(水)から18日(日)にかけて実施される予定だ。