1月27〜28日にアメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦『ロレックス24・アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)』は、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの7号車ポルシェ963(デイン・キャメロン/フェリペ・ナッセ/マット・キャンベル/ジョセフ・ニューガーデン)の総合優勝により幕を閉じた。

 見どころ満載だった決勝レースを終えたデイトナのパドックから、各種トピックスをお届けする。

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 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの7号車ポルシェ963(フェリペ・ナッセ/デイン・キャメロン/マット・キャンベル/ジョセフ・ニューガーデン)は、ポルシェにとって19回目のデイトナ24時間総合優勝をもたらした。

 ポルシェのシャシーとしては、レーサーズ・グループによる2003年のポルシェ911 GT3 RS以来の勝利となった。さらにチーム・ペンスキーにとっては1969年にマーク・ダナヒューとチャック・パーソンズがローラT70 Mk.3B・シボレーで優勝して以来の総合勝利となった。

 ポルシェAGの開発担当役員ミヒャエル・シュタイナーを含め、ポルシェのトップマネジメントは表彰台でトロフィーを受け取った。

「我々は決して諦めず、昨年の厳しい挫折にも動揺しなかった」とシュタイナーは語っでいる。

「いま、我々はこれまでの努力の成果を享受しているのだ」

■チェッカーフラッグにまつわる混乱

 レース中に15回のフルコースコーションが導入されたにも関わらず、上位5位までのエントリーが完走した791周(2815.96マイル)は、昨年初年度のGTPが達成した周回数を8周上回った。

 優勝した7号車ポルシェ963はレースハイとなる309周をリードし、2位でフィニッシュした31号車キャデラックVシリーズ.Rは283周をリードした。

 レースウイナーのナッセは、(無線で)残り2周と言われ、その後にファイナルラップだと知らされたとき、「混乱した」と振り返っている。

「『最後まで、アクセルを踏み続けなければならない』。それがティム・シンドリック(※ペンスキー社長)が無線で言ったことだ」とナッセ。

「僕も迷った。ホワイトフラッグが2回あったかどうかは分からない。本当に分からなかったよ。スタート/フィニッシュラインを越えたときにチームが『これがファイナルラップだと思う」と言ったと思う。そのときに僕は知ったんだ。自分としては、ファイナルラップだと思ったのはそれが2回目だったと思う」

 レース翌日の月曜午後になってIMSAが発表した声明によれば、「審判上のミス」により、24時間経過よりも前にチェッカーフラッグが提示されたという。

 なお、レースのリザルトは、GTPとGTDプロの上位3台を対象とした2024年から導入されたレース後の二次車検の結果が出るまで非公式のままであり、これは月曜午後3時までに終了する予定だ。

 さらに、一般的なレース後の車検プロセスの一環として、複数の車両のパーツはさらなる検査のためにノース・カロライナ州コンコードにあるNASCARのR&Dセンターに持ち込まれるものと思われる。

■シケインの縁石がペナルティの遠因?

 ポルシェLMDhファクトリー・ディレクターのウルス・クラトルは、6号車ポルシェ963が「制御されたパワートレイン・パラメータを順守しなかった」としてレース序盤にペナルティを受けたことに彼らは「反応」し、レース中にすべてのポルシェ963に問題を軽減するための更新されたソフトウェアを送信したと述べた。

 クラトルによれば、その後同じく6号車に対して科せられた10秒間のストップ・アンド・ホールドとペナルティは「技術的には別の問題」とのことだ。

 クラトルは、バックストレートのル・マン・シケインで車両が縁石を「飛び越える」ことが問題の根本原因であり、レース中に修正が行われる前は(パワートレインの出力に)「ピーク」があり、それがシステムにとって「超過」となるものだったと説明した。

 プロトン・コンペティションが走らせた5号車を含む他の数台の963も、レースの早い段階で警告を受けていた。

■WECスタッフからの支援も

 ポルシェのLMDhカスタマー・プログラムの責任者でもあるクラトルは、4台のポルシェ963がすべて総合トップ6に入ったリザルトを「特に誇りに思っている」と語った。

「とくに昨年は信頼性が我々の最大の懸念事項のひとつだったからね」と彼は語った。

「もう一度我々は多くの仕事をし、4台の車すべてを(フィニッシュまで)走らせることができたのは大きかった」

 また、ポルシェ・ペンスキーのマネージングディレクターであるジョナサン・ディウグイドは、同車両でWEC世界耐久選手権に参戦するエンジニアリングチームの大部分が、デイトナの現場もしくはドイツ・バイザッハのポルシェの作戦室でIMSAチームを支援していると明かした。

「世界中で24時間起きてコンピューター画面を見続けているわけではない」と彼は説明した。

「だが、今日は高いレベルのサポートが、我々をゴールラインに導いてくれた」

■アキュラの連勝記録がストップ

 ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)のデビッド・ソルターズ社長は、ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティの40号車アキュラARX-06の3位フィニッシュについて、「我々が得られる最大限の結果」であったと語った。

 レース中にトラブルに見舞われいったんはコース脇にストップした40号車アキュラは上位へと順位を回復することができたものの、最終盤のポルシェvsキャデラックの争いに加わることはできなかった。

 これにより、デイトナ24時間レースにおけるアキュラの連勝記録は『3』でストップすることとなった。

■一時首位を走ったBMWの希望と課題

 BMW MハイブリッドV8のドライバー、レネ・ラストは、昨年のデビュー以来マシンが進歩を遂げてきた一方で、このドイツのメーカーがまだどれほどのことを達成しなければならないかを、今回のレースが突きつけたと語った。

「今回のレースは、本当に前向きな局面があった。僕がトップに立ち後続を少し引き離した縮めた場面もあったが、長くは続かなかった」とラストは述べている。

「ある時点でクルマは生き返ったが、いくつかの小さな問題が発生して、多くの周回を失ってしまった」

 ラストはレース終盤に表彰台を争うペースはなかったと感じたと付け加えたものの、クリーンな走りをすればトップ5フィニッシュは可能だと信じていたという。2台のBMW Mハイブリッド V8は、7位と8位でレースを終えた。

■フェラーリ499PのIMSA投入はあるか

 GTDプロクラスのリシ・コンペティツィオーネは、最初の勝利から20年以上を経て、デイトナ24時間で2度目のクラス優勝を果たした。

 ウイナーの一員となったアレッサンドロ・ピエール・グイディは、将来(WECで自身がドライブしている)フェラーリ499Pでデイトナでレースをすることができれば、それは「夢が叶う」と述べたが、「決定権は僕らの手中にはない」と認めている。

 フェラーリは現在、WECに投入しているル・マン・ハイパーカーを、ウェザーテック選手権に持ち込むつもりがないからだ。

 しかし、チーム代表のジュゼッペ・リシはレース中の『IMSAラジオ』の取材に対し、499Pを入手してIMSAで走らせることへの継続的な関心についてコメントした。ただし同時に、この車両は3年目(2025年)までプライベーター向けの準備が整わないこと、そして必要な資金が高額になることに言及している。

■急きょ代役となったフィッティパルディの感謝

 ピエトロ・フィッティパルディは、インターユーロポル・バイ・PR1/マティアセン・モータースポーツ52号車オレカからの「土壇場での招集」に対して感謝の意を表した。

「全員の仕事にとても満足している。フィニッシュラインまでずっと表彰台争いをすることができ、最後は4位でフィニッシュとなった」と彼は語った。

 フィッティパルディは決勝前日に負傷したクレモン・ノバラクの代役として出場した。ノバラクの負傷は深刻なものでなく、レースを見るために決勝中もサーキットに帯同していたという。

■もらい事故に落胆するマイク・コンウェイ

 バッサー・サリバンの14号車レクサスRC F GT3をドライブしたマイク・コンウェイは、序盤にターン3でスピンしたデニス・アンデルセンのハイクラス・レーシング20号車オレカと接触し、上位争いから脱落したことについて「本当に心が折れそうになった」と感じたという。

 GTDプロの優勝候補の一角だった彼らは大規模な修復を経てコースに復帰したが、レース終盤にリタイアを喫している。

 コンウェイは次のように述べている。

「目の前でスピンしたクルマを避けるためにできることは、あまりなかった。それが起こるかもとは思っていたけど、いざそうなってしまうと行き場がなかった。表彰台を狙えると思っていたので、それを達成できなかったのは本当に残念だ」

■日曜朝の体調不良とリカバー

 セバスチャン・プリオールは日曜日の早朝に体調を崩したため、AOレーシングの77号車ポルシェ911 GT3 Rで予定されていた残り2時間の走行時間を走らなかったことを明かした。

 チームメイトのミカエル・クリステンセン、ラウリン・ハインリッヒが交代でチェッカーフラッグまでマシンを運ぶと、GTDプロクラスの2位表彰台にはプリオールも姿を見せた。

■ブレーキ無交換の賭けに出たコッツォリーノ車

 GTクラスで優勝したウインワード・レーシングの57号車メルセデスAMG GT3に2.731秒届かず2位となったAFコルセ21号車フェラーリ296 GT3のフィニッシュドライバー、ミゲル・モリーナは、レース中にフロントブレーキを交換しないという「賭けに出た」と語っている。

「最終的にはこれによりパフォーマンスが犠牲になり、ペースではメルセデスの方が少し良かった。彼らはトラクションが良くて、最後のスティントの間ずっと(GTDプロ優勝車両の)リシのトウを得られていたので、僕は彼らに適切なアタックをしかけることができなかったんだ」

 この21号車では日本のケイ・コッツォリーノもラインアップに加わり、2位フィニッシュに貢献している。

■新型GT3導入のプライベーター勢の苦難

 デビュー戦を迎えたカスタマー車両のコルベットZ06 GT3.Rと、プライベーターのフォード・マスタングGT3は、いずれも完走することができなかった。

 コルベット陣営のAWAでは、ピットレーンからスタートした13号車、パワーステアリング・トラブルと電気的な不具合が発生した17号車のいずれもがリタイアとなった。

 一方、プロトンの55号車マスタングGT3はアクシデントによりリタイアを喫している。

 アキュラの広報担当者によれば、プラクティスでGTDクラスの主役を務めていたグラディエント・レーシングの66号車アキュラNSX GT3 Evo22は、ECUの問題によりガレージに戻され、午前4時にレースからリタイアを余儀なくされたという。

 また、この車両はパンクとフロントボディの軽い損傷により遅れが生じたが、これはスティーブン・マクアレーがデブリを轢いた影響によるものだった。

■集まった観客は史上最多か

 ホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)の渡辺康治社長はデイトナ24時間の週末、新たに再編されたHRC US(旧HPD=ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)の最初のレースに姿を見せた。

 正式な入場者数は発表されていないものの、IMSAプレジデントのジョン・ドゥーナンはレース前、このイベントは史上最も多くの観客が集まるデイトナ24時間になるだろうと述べた。

 前週の公式テスト『ロアー・ビフォア・ザ・ロレックス24』では、記録的な入場者数を記録したことが確認されている。

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 2024年のIMSA第2戦セブリング12時間レースは、3月16日、フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われる。