現WorldRX世界ラリークロス選手権王者のクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)ことフォルクスワーゲン・ディーラーチーム・バウハウスは、2024年シーズンに先立ち現在の電動最高峰クラス“RX1e”車両に加え「持続可能な燃料を採用する」内燃機関(ICE)モデルを投入。最大5台体制への拡充を表明していたが、車両製作が完了に近づいた新車に関し「これまでに作った中で最高のもの」と表現し、その完成度に自信を見せている。

 新たに“Battle of Technologies”のコンセプトを掲げ、BEVの現行“RX1e”とサステナブル・フューエル採用のICEモデルを混走させることで、参戦台数確保へ門戸を広げる方針を示したFIA国際自動車連盟だが、世界選手権が電動化された過去2年間にわたってダブルタイトルの栄冠を獲得した名門は、この最高峰クラスにICE搭載車を再導入するという新たな課題に直面している。

 長年にわたりKMSのエンジニアを務めるリチャード・ブラウンが率いる開発チームは、ファクトリー支援を受けていたフォルクスワーゲン・モータースポーツ時代に培ったメカニックの知識とスキルも活用し、今季に向け本拠地アルヴィカのワークショップで2台の新型『フォルクスワーゲン・ポロ』を製造。そのうち1台はほぼ完成しており、もう1台も計画から「それほど遅れなく」進捗していることから、スウェーデンの天候が許せば3月末に向けてシェイクダウンが予定されている。

 すでに3台の『フォルクスワーゲンRX1e』でシリーズ連覇を達成したチームだが、新たに製造された2台の『フォルクスワーゲン・ポロ』には2.0リッターの直列4気筒16バルブターボを搭載。マクファーソンストラットのサスペンションはZF製の3WAYダンパーという実証済みの組み合わせによって強化され、580BHPを超える出力を発揮する。ただし以前のバージョンとは異なり、エンジンは縦方向ではなく横置きで搭載され、重心を改善するために運転席はさらに後方に配置されているという。

■ICEモデルを製作する利点

「そこに大きな秘密はない」と強調するのは、6度の世界チャンピオンであるヨハン・クリストファーソン。「どのクルマにも弱点はある。重要なのは、それを可能な限り制限し、制御することだ。細かい部分に気を配ることが最終的に違いを生むんだからね」

 同じくチーム代表で“ヨハンの父”でもあるトミー・クリストファーソンも、新たに製作した内燃機関コンバートの『フォルクスワーゲン・ポロ』と、電動化時代のすべてを制覇した『フォルクスワーゲンRX1e』という同じシャシーを持つ両規定モデルを仕立てたことで、2024年のタイトル防衛に向け「チャンスを最大限に高めるべく、できる限りのことを行った」との手応えを得る。

「このクルマは、我々がこれまでのプロジェクトを通じて蓄積してきたすべての経験と専門知識の産物だ」と、スウェーデンの地方新聞NWT(Nya Wermlands Tidningen)に語ったトミー代表。

「我々はここに最も熟練したエンジニアを集めたと確信している。彼らはあらゆる点で業界最高だ。このプロジェクトにより、オフシーズン中にチーム全員を忙しくさせることができたが、これはKMSの将来にとって非常に重要であり、ヨハンとオーレ・クリスチャン(・ベイビー)もフィードバックに貢献してくれたんだ」

「全体的に見て、これは我々がこれまでに作ったなかで最高のラリークロスカーであり、真の“野獣(ビースト)”だと確信している。潜在的なパフォーマンスの点では我々のRX1eモデルと非常に似ていると思うが、唯一の本当の違いはグリップレベルと我々がシーズンで訪れるさまざまなトラックの路面になる」

「これら2台の新車を製造するもうひとつの利点は、RX1eのテストが非常に制限されている現状で、内燃ポロのテストから得られる多くの情報があり、それをBEVの進化に活かすことができる点だ。ふたたびタイトルを争うために、EVとICEの双方のコンセプトに頼ることができると知って心強い思いだよ」