F1開幕前のプレシーズンテストが終了した。新車が走ったのはわずか3日間、通算24時間足らずであり、手の内をあえて隠したり、逆に実力以上の速さを見せたりしたチームもあったことだろう。なので本当の力関係は、まだまだ見えにくい。

 とはいえ王者レッドブルが頭ひとつ抜け出ているのは、ほぼ確実と言っていいのではないか。去年22戦21勝を誇ったRB19の進化形に安住せず、まったく違うコンセプトに挑戦した新車RB20は、何よりもスムーズな挙動が印象的なマシンだ。バンピーな路面でのブレーキングや、横風が吹くコーナーの侵入でも、バランスを崩すことなく走り抜けていく。

 ただしマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と比較すると、チームメイトのセルジオ・ペレスは一発のタイム出しもロングランで安定してペースを揃えることにも、苦労しているように見えた。それが開幕後も続くようだと、今季もレッドブルはフェルスタッペンが孤軍奮闘する状況になるかもしれない。

 3日間のタイムシートだけを見れば、レッドブルの最大の対抗馬はフェラーリということになる。2日目、最終日と、カルロス・サインツとシャルル・ルクレールが最速タイムを叩き出し、「一発が速いフェラーリ」は今年も健在のように見える。

 とはいえ、ふたりのタイムは、ともにC4タイヤでのもの。対するレッドブルふたりのベストタイムは、C4より硬めのコンパウンドのC3タイヤを履いてのものだった。ピレリによれば、C3とC4のペース差はコンマ6秒前後。2日目の首位サインツは2番手ペレスにコンマ7秒以上速かったものの、最終日の首位ルクレールは4番手フェルスタッペンをコンマ4秒しか引き離せていない。同じC3だったら、フェルスタッペンの下の順位だった可能性がある。

 何より、フェラーリふたりの限界領域でのドライビングはステアリングの修正が多く、マシンが小刻みにバウンシングしているのを無理やりねじ伏せている印象だ。これではタイヤに優しくないのは自明で、実際ロングランでのラップタイムの落ち方はレッドブルよりも顕著だった。

 テスト後のドライバーコメントは当たり障りのないものに終始し、否定的な言葉は極力避けるのが普通だ。しかしたとえばルクレールは総合トップタイムでテストを終えたにもかかわらず、「1年前よりマシンの感触がいいのは確かだが、どのレベルの戦闘力にあるのかはまだわからない」と、かなり率直に心情を吐露している。

 フェラーリとともにレッドブル追撃の役割を担うはずのマクラーレンにしても、ランド・ノリスは、「これからやることは、まだまだたくさんある」と語る。「やるべきことは多い」というのは公式コメントでのドライバーの常套文句のひとつだが、要は現時点でのマシンの出来に満足していないということだ。

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)はもっと率直で、「やるべきことは多いし、まだ目指すところに到達できていない」と語り、さらに「テストでそうなるだろうことはわかっていた」とまで言っている。噂で流れているように、ハミルトンのフェラーリへの電撃移籍は、今季のメルセデスマシンの戦闘力のなさ、開発陣への落胆ゆえだったのだろうか。