2月26〜27日に行われた公式テスト“プロローグ”から1日開け、29日にレースウイークがスタートした2024年WEC世界耐久選手権第1戦カタール1812km。土曜日に行われる決勝レースを念頭に各車が精力的に周回を重ねた走行初日、木曜日のルサイル・インターナショナル・サーキットのパドックから、各種トピックスをお届けする。

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 カタール1812kmのフリープラクティスは29日(木)から始まり、各90分のセッションが2回実施された。この日の最速タイムである1分39秒990は、2度目のプラクティス序盤にケビン・エストーレ(6号車ポルシェ963/ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が記録したものだ。

 ポルシェのLMDhファクトリーモータースポーツ・ディレクターであるウルス・クラトルはSportscar365の取材に対し、6号車ポルシェ963のMGU(モーター・ジェネレーター・ユニット)が、プロローグテスト後にユニット周辺にオイルが発見されたため交換されたことを認めた。なお、この件とエストーレのアクシデントは無関係だったようだ。

 クラトルは、プロトン・レーシングのボスであるクリスチャン・リードが、リザーブリストの1番上にあるチーム2台目のポルシェ963がル・マン24時間レースに出場する場合に備えて、追加のシャーシを探しているという話があるなか、ル・マンが終わるまではカスタマー向けに新しいクルマを製造することはないと述べた。

「いま話しているように、我々は潜在的な顧客と話し合いを始めている。プロトンはそのうちのひとつだが、ル・マンのレース前にカスタマー販売するための別のシャーシを作ることはできないだろう。もしも(2台目のクルマで)レースに出るのであれば既存のマシンを使う必要がある」

 ポルシェは今年、ハーツ・チーム・JOTAのセカンドカーと、(北米のIMSAシリーズに参戦している)JDCミラー・モータースポーツに当初スペアとして提供されたセカンドシャシーで、新たに2台のカスタマー向け9600003を製造販売した。

 フェラーリの耐久レースカー責任者であるフェルディナンド・カンニッツォは、3台目のフェラーリ499Pが加わることで、データ共有やその他の要素において「レースと、レースで確実に成果が出る」と語った。「すべては共有される。そこに秘密はない。最終的には3台のフェラーリがいて、この3台のフェラーリで表彰台を争うことを目指しているんだ」

 カンニッツォのコメントは、AFコルセのチームマネージャーであるバッティ・プレグリアスコのコメントと若干矛盾している。彼はシーズン前のメディアとの電話会談で、AFコルセの83号車は「個別の存在」であり、総合順位よりもハイパーカー・チームのワールドカップでの競争に重点を置いていると述べていた。

■デイトナで壊れたハッチの問題は修正済み

 カンニッツォによると、フェラーリは11月下旬に行われたテストに加え、最近舗装し直されたルサイル・インターナショナル・サーキットのF1シミュレーションコースモデルを活用することができたと語った。彼はチームが今週末のベースラインを確立するうえで「非常に重要だった」と続けている。「我々のシミュレーターは基本的に同じだ。古い(F1)シミュレーターを我々のマシンに合わせている。かなり便利なツールだよ」

「11月のテスト前に欠けていたのはシミュレーションデータとの相関性だった。しかし、それが完了したことで“相関関係のループ”を閉じることができ、シミュレーターを使って各イベントで行っているようにセットアップを開発することができた」

 ランボルギーニ・アイアン・リンクスのチーム代表であるアンドレア・ピッチーニは、ハイパーカー・チームとLMGT3チームは「完全に別物」であると説明した。「我々はGTワールドチャレンジ(・ヨーロッパ)、WEC、IMSAに参戦しているため、チーム全体をこのようなユニットで構成しようとしている」とSportscar365に語った同氏。「我々は非常に多くの異なるプログラムを持っているため、それぞれのチャンピオンシップで独立したユニットを稼働させようとしているんだ」

 フォード・パフォーマンスのグローバル・スポーツカー・マネージャーであるケビン・グルートによると、フォード・マスタングGT3のリヤデッキリッドの問題は、デイトナ24時間でのデビュー以来修正されているという。「私たちは(クルマからの)乱気流が相互作用したと考えている」とグルートはSportscar365に語った。「ピンが折れたり、抜けたりしていた」

 フェラーリのグローバル耐久責任者であるアントネッロ・コレッタは、先月デイトナで開催されたロレックス24におけるふたつのメーカーのレース後ペナルティに関するBMW Mモータースポーツのボスアンドレアス·ルースのコメントに同意した。

 コレッタは記者団に次のように語った。「IMSAに明確化を求めたと言える。率直に言って、私たちはペナルティについて何も理解していない。私はIMSAから直接コメントを受け取りたいし、そうすればあなたや他の人々に明確な考えを持って答えることができる。今のところ、私は(明確な考えを)持っていない」

■今年はリザーブドライバーではないので……

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のリザーブドライバーである宮田莉朋は、今週カタールに姿を見せていない。2023年のスーパーGT GT500クラスと全日本スーパーフォーミュラ選手権のダブルチャンピオンである彼は、同じ週末にサクヒール(バーレーン)で開催されるFIA F2の開幕ラウンドに出場している。宮田は今後も、シーズン後半に行われるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)と富士スピードウェイでのWECイベントがFIA F2とバッティングするため、当該ラウンドをスキップすることになる。

 TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパ(TGR-E)の中嶋一貴副会長は、チームはCOTAや富士で6人のレースドライバーのうちひとりが病気や負傷で欠場した場合、ドライバーふたりで走ることになるだろうと語った。もしも、今週末のカタール1812kmで最悪の事態が起きた場合、トヨタはふたりのドライバーで走るか、元ル・マン王者をベンチから外すかを決めなければならないだろう。

 ル・マンで3度の総合優勝を飾った中嶋副会長は、トヨタの公式リザーブドライバーだった2023年とは異なり今年はレースに適したコンディションを保てていないことを認めた。「去年だったら自信を持って『イエス』と言えるけど、今はどうでしょう」とSportscar365に語った同氏。「この冬はハードなトレーニングをしていなかったので、準備ができていません。必要とされないことを祈っています」と彼は指を交差させながら付け加えている。

 BMW MチームWRTのドライバーであるラファエル・マルチェッロは、土曜日のレースでは熱によるタイヤの劣化が重要なファクターになると警告し、タイヤの温度管理がドライバーにとって非常に重要なことになることを示唆した。「コース上ではデグラデーションはないが、ある一定の温度を超えるとグリップを失ってしまう」と彼は述べた。「レースで良いタイヤのウインドウを維持するのは本当に難しいだろう。しかし、それは誰にとっても同じことだ」

 ハリー・ティンクネルはSportscar365に対し、WECとウェザーテック選手権のふたつのキャンペーンに参戦している今季、どのレースを欠場するかはまだ決まっていないと語った。WECでは99号車のプロトン・コンペティションのポルシェ963を、IMSAでは64号車のマルチマティック・モータースポーツのフォード・マスタングGT3をドライブするティンクネルは、WECスパとIMSAのラグナ・セカ、サンパウロとモスポートの週末に両シリーズの日程がぶつかることになる。

■ポルシェ・ペンスキー新GMに元ヨーストのランゲが就任

 ポルシェ・ペンスキーはヤン・ランゲを新しいゼネラルマネージャーに任命した。ランゲはメルセデスAMGのDTMドイツ・ツーリングカー選手権プログラムでエンジニアとして働いた後、ヨースト・レーシングに移籍し、アウディのLMP1キャンペーンで活躍。その後はマツダRT24-P DPiプログラムのプロジェクト責任者を務めた人物だ。

 ユナイテッド・オートスポーツのチーム共同オーナーであるリチャード・ディーンは、今年新たに設立されたLMGT3カテゴリー以外のGT3レースにマクラーレンで参戦する可能性を否定した。彼はSportscar365に次のように語っている。「今年はWECに完全に集中している。GTをやっているのはこれだけだ」

 ディーンは、マクラーレンが11月下旬にLMGT3メーカーとして正式に確定するまでセンサーの統合に投資していなかったため、10月下旬にポルティマオで始まったマクラーレン720S GT3エボによる初期テストが、2024年に義務付けられるトルクセンサーなしで行われたことを明らかにした。フォードとマクラーレンはともに、2021年のカテゴリー開始以来ハイパーカー・クラスで義務付けられているトルクセンサーを使用したレースや開発の経験がない唯一のLMGT3メーカーだ。

 フォード・パフォーマンスのグローバル・スポーツカー・マネージャーであるケビン・グルートは次のように付け加えた。「他のメーカーの中には、LMDhプログラムやLMHプログラムを持っているところもある。私たちにとってこれは大きな第一歩だ。なぜなら、ハーフシャフトでパワーを管理するという、スポーツの未来に向けた方法を管理できるようになることは、キャリブレーターの肩に大きな負担を強いることになるためだ」

 各チームのピットガレージ上部のボードは、初めてデジタルLEDフォーマットになった。WECの広報担当者がSportscar365に語ったところによると、LEDボードはルサイル・インターナショナル・サーキット特有の機能であり、残りのレースで復活する可能性はないという。

 長年ル・マンやスポーツカーレースに参戦してきたヒュー・チェンバレンが日曜日、心臓発作のため82歳で亡くなった。自動車エンジンビルダーからチームに転身したチェンバレン・エンジニアリングは1972年に設立され、数十年にわたって数多くのプロトタイプやGTカーを送り出してきた。