2024年シーズンのホンダについては、長いスパンで追いかける必要があるだろうと考えていた。ここ数年続く厳しい状況から浮上するには、一朝一夕というわけにはいかないだろう、と。

 だが、そうした状況を踏まえても、ポルトガルGPのフリープラクティス1で、一時、ホンダの4名のライダーが最下位である22番手から19番手を占めた。予選Q1、Q2を分ける午後のセッション、プラクティスの結果としても、中上貴晶(イデミツ・ホンダLCR)は16番手につけたものの、ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)は19番手、ヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)が20番手、ルカ・マリーニ(レプソル・ホンダ・チーム)は22番手と下位に沈んでいる。

 ホンダの走りは、コーナーでの動きが明らかにぎくしゃくしていた。その挙動は、コーナリングから滑らかに加速していくドゥカティライダーたちに交じると、よけいに際立った。確かに、この日は昨夜の雨により路面が汚れており、特に午前中は全体的にタイムが上がらなかったと考えても、とりわけ厳しい状況であることが窺えた。

 4名のライダーは、リヤの不安定感に苦しんでいたのである。囲み取材で語られたそれぞれのライダーのコメントによれば、表現は違えど、ほとんど同じ印象を抱き、同じような症状に苦しんでいたようだった。

 現在、ホンダで最も長いキャリアを持つ中上は、「どこでもバイクが振られていて、ここでもリヤグリップが欠けています」と、悩ましい状況を説明している。スピニングがひどく、リヤが安定しない。バイクの挙動が安定しないためにスロットルを開けるのが難しかったという。

 ホンダは昨年もリヤのグリップ不足、コーナー立ち上がりでのロスに苦しんできたが、中上によれば、今回の件は、2023年のそれとは異なるということだ。

「昨年のバイクは、トラクションエリアでのエッジグリップだけが欠けていました。スロットルを開けるのが難しかったんです」

「ただ、今日は午前も午後も、まるでリヤが地面に接地しておらず、グリップが発生していないみたいだったんです。リヤのグリップを失っているような感じで、ものすごく不安定でした。なので、バイクを止めたり傾けたりするのに、常に躊躇している状態だったんです。ストレスでしたね。いつもはこんなにひどくないのに」

 ホンダ2年目のミルも「プラクティスではもっと期待していたのに」と、失望を口にしていた。ミルには新しいアイテムが投入されたが、「コーナー進入での安定性と、さらにエッジグリップを得るためのものだったけど、こういう状況では、思ったようにはいかなかった」ということだ。新アイテム以前の問題だったのだろう。

「最初にコースインしたとき、『ああ、これは厳しいプラクティスになるな』とわかったよ。バイクを止めるのに苦しんでいた。そしてスロットルを開けると、スピンする。ライダーとしては、どこで差をつけるのか考えるのが大変だった。ブレーキをかけるとスライドする。スロットルを開けてもスライドが止まらない。バイクを起こせず、常に同じようなところでロスしているんだ……」

 中上の話を踏まえれば、ポルトガルGP金曜日は「いつもとは少し違う苦戦」ということになる。だが、果たしてそうなのだろうか? 今季、ドゥカティから移籍してきたマリーニは、ホンダRC213Vの素性として、スイートスポットが狭いと語っている。

「今の時点では、僕たちはすごく正確にバイクを走らせなくちゃいけないんだ。ミスをするとすぐに(転倒する)。ドゥカティライダーが持っているような、マージンを持つことが難しい。バイクの“限界”はいつも『そこ』にある。今の時点では、全てのコーナーでバイクに何が起こっているのか理解していくことなんだ」

「というわけで、注意深く走り、全てのコーナーにおいて集中しなくちゃいけない。簡単じゃないよ。特に攻めるようなときは、僕たちは遅い。フィーリングは問題ないけど、アグレッシブに走りたいときや、予選のようなタイムアタックでは、まだ苦戦しているんだ」

 これもまた、すでにホンダが改善点としていたものだ。現状としては、おそらく表層に浮かび上がる問題は様々だとしても、根底にあるものは同じなのかもしれない。とはいえ──冒頭の繰り返しになるが、まだ第2戦であることを考えれば、やはり長いスパンで改善と進化を見ていく必要があるのだろう。