大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、ウイリアムズF1チーム代表ジェームズ・ボウルズに焦点を当てた。

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 ジェームズ・ボウルズはこれまで、ウイリアムズF1チーム代表としての人生を順調に歩んできた。メルセデスの戦略責任者のポジションを離れて昨年2月にウイリアムズに加入した後、ボウルズはまず、改善すべき点は何であるかを時間をかけて分析した。その間にも、有能なアレクサンダー・アルボンが優れたパフォーマンスを発揮し、2023年に何度もポイント争いに加わった。

 ウイリアムズは、2023年シーズンにコンストラクターズ選手権7位を獲得。それは非常に大きな成果だったが、ボウルズは昨シーズン中に、長期的な向上が重要であると強調した。将来に確実に進歩するためであれば、2024年に10位に終わることも受け入れると彼は言った。

 今年の序盤3戦にウイリアムズが直面してきた困難を考えると、彼らは本当にランキング最下位に転落するかもしれない。そして、これまでの問題のいくつかは、ボウルズ自身が作り出したものだ。

 冬の間、ボウルズは、マシンの製造に関して、より現代的なやり方を導入することを望んだ。以前、ウイリアムズは、Excelのスプレッドシートを使用して、新車用に製造されるすべてのパーツをリストアップしていた。しかしボウルズは、各パーツの進捗状況や所在を追跡しやすくするために、この冬に新しいソフトウェアを導入した。

 新しいソフトウェアを利用して、より開発の進んだマシンを作り上げるという試みだったが、より複雑な部分があり、彼がそれをチームにいきなり要求するのは、たとえば、子供に歩けるようになる前に走れと言っているようなものだった。オーナーのドリルトン・キャピタルは、そういった作業を可能にするだけの多額の投資を提供しているが、そのプロセスへのアプローチは、段階的に、制御されたやり方で行う必要があった。

 冬の間の変更により、ウイリアムズにとってはこれまでで一番といっていいほど厳しいシーズンオフを過ごした。似たような状況をチームは2019年に経験している。当時は、プレシーズンテストのスタートにマシンが間に合わず、結果的に苦しい一年になった。

 今年もそれに近い状況だったが、バーレーンテストの最初から走ることができ、最初の2戦を問題なく完走した。しかし第3戦オーストラリアのFP1でアルボンがクラッシュしたことで、大きな問題が表面化した。

 冬の間の作業の遅れにより、ウイリアムズはいくつかの項目を後回しにした。中団が非常にタイトで5つのどのチームにも、ランキング6位を獲得するチャンスがある。そういう状況のなかで、マシンの開発作業に焦点が当てられ、スペアシャシーの製造がさらに遅らされた。

 アルボンがクラッシュし、そのシャシーが使用できなくなった時、ウイリアムズにはスペアシャシーもなく、オーストラリアを1台のマシンで戦わなければならなくなった。その時、ボウルズは、ローガン・サージェントを外し、彼のマシンをアルボンに与えることを決めた。ホンダ、ブラウン、メルセデスとともに長いキャリアを積み重ねてきたボウルズにとって、それは「キャリアのなかで最も困難な決断」だったという。

 金曜日の夜、ボウルズは、サージェントのマシンでアルボンを走らせるという決定を発表した際に、状況を説明するなかで、言葉の選び方を少し間違えた。チームにスペアのシャシーがないことを「受け入れられない」と述べたのだ。その言い回しでは、責任はチーム全体にあり、全体として十分な仕事をしていないと言っているようなものだった。

 しかし日曜日の決勝前に、ボウルズは、自分がこの状況を生み出したのだと述べた。彼自身がチームに望んだ変更と、彼自身が導入したプロセスにより、プレッシャーが高まる結果になったと、潔く認めたのだ。ボウルズは、長期的に見れば自分が変更を導入したことは正しいと確信している。ただ、今の段階ではその動きが裏目に出て、チームが恥ずかしい状況に陥ってしまった。

「責任は私にある。それ以外に責任の所在があるとすべきではない」。ボウルズは、1台のみが参加する決勝を前にそう語った。

 これは、ウイリアムズ代表になって以降、彼のミスが公になった初めてのケースだった。しかし、チームを前進させようとする試みのなかで、ボウルズが今後もミスを犯すことは十分考えられる。その時に彼がどのように対処して、チームを正しい方向に押し進めていくのかが、より重要になるだろう。