WEC世界耐久選手権は、3月2日に行われた開幕戦『カタール1812km』レースにおいてチームスタッフを隠蔽したとして、ビスタAFコルセに6万ユーロ(約980万円)の罰金を科した。

 この違反は、トマ・フロー/フランチェスコ・カステラッチ/ダビデ・リゴンがステアリングを握り、ルサイル・インターナショナル・サーキットでの開幕戦でLMGT3クラスで5位フィニッシュした54号車フェラーリ296 GT3に関してのものだ。

 3月28日付で発表された文書の中でスチュワード(審査委員)は、AFコルセチームに関係する3人のエンジニアがWECのスポーティング規則で義務付けられているオペレーショナル(運営)・スタッフのリストの一部として申告されていなかったと結論付けている。

■「マーケティング担当者だ」と身分を偽る

 WECでは、コスト抑制等のため、現場で働くチームスタッフの人数に制約が設けられている。チームマネジャーやエンジニア、メカニックなどは『オペレーショナル・スタッフ』として登録が義務付けられており、その数はLMGT3クラスでは1台あたり14名までと定められている。

 チームが提出した最初のリストには、ロンレンツォ・パオルッチ、アンドレア・ベドーニ、ダニエレ・ザッカリアと特定された3名のエンジニアが、以前にはエンジニアとして申告されていたにもかかわらず、『ノン・オペレーショナル(非運営)・スタッフ』としてリストされていた。

 その後、AFコルセは、ベドーニがオペレーショナル、ノン・オペレーショナルのいずれとしても記載されなくなった2番目のリストを提出し、さらにその後、3人の名前すべてが完全に消えた3番目のリストが承認された。

 その後、この3人はFIAのスポーティング・デリゲートによる検査中に、カタールのレースで「コンピューターの前に座り、空力技術データというレースカーに関連する技術的な事項に取り組んでいた」ことが発見されたという。

 さらにこの報告書では、各人物は業務スタッフの識別システムとして使用される適切なピンクのリストバンドを着用しておらず、彼らのコンピューターは内部ネットワークに接続されていたと結論づけている。

 スチュワードの報告書によると、各人物はスポーティング・デレゲートの尋問に対しマーケティング担当者であると名乗り、イベントパスはフェラーリが発行したものだと主張した。

 レース直後にAFコルセのスポーツディレクター、ロン・ライヒェルトを呼び出しヒアリングした後、スチュワードは、関与した3人が「間違いなくエンジニアであり、マーケティング担当者ではない」と判断した。

 スチュワードによる追加調査により、関与した3人の名前は「『マニュファクチャラー』と記載されて届けられたフェラーリ・ヴィラ受付窓口にアクセスするためのパスを購入するために」フェラーリからWECプロモーターに提供された名前のリストに載っていたことが明らかになった。

 さらにライヒェルト、チームマネジャーのフランチェスコ・グロメナーダ、フェラーリ代表のマウロ・バルビエリを含むオンラインでのヒヤリングが開催された。

 そのヒヤリングのなかではライヒェルトは、3人は「エンジニアリングチームの一員ではなく、カタールのレース中にチームの1台か2台のクルマのために介入したことは一度もなかった」と主張したと、今回公表されたスチュワードのレポートには記載されている。

 一方、バルビエリは、スポーティング・デレゲートからの質問に対してチームメンバーが出した答えについて、当該の人々は「若いエンジニアであり、スポーティング・デレゲートに感銘を受けた」と説明した。

 しかし、エンジニアのひとりがカタール大会前に6年間フェラーリで働いていたことが指摘されたことにより、スチュワードはこの見解を却下している。

 スチュワードたちはさらに、AFコルセはWECスポーツ規則附則7の第2条に記載されているとおり、3名のエンジニアをオペレーショナル・スタッフとして登録すべきだったと判断した。

「3人のエンジニアが、自分たちの資質をマーケティング担当者と偽ったことは、FIAのスポーティング・デレゲートに驚かれたときに、彼らの活動の実態を隠蔽しようとした以外の意味はない」とスチュワードは付け加えている。

「とりわけ、彼は報告書の中で、社内のイーサネット・ネットワークに接続されたコンピュータで空力データを認識していたと述べている」

 なお、60000ユーロの罰金のうち、3万ユーロについては即時の支払いが命ぜられている。残る半分の額は今季の残りのシーズンの間、執行が猶予されるが、この規則へのさらなる違反があった場合には猶予が取り消される。