2020年12月に発売されたホンダの新型「CRF250L」と「CRF250ラリー」。全面新設計され、大幅な軽量化を果たしたシャシーに、徹底的に見直されたエンジンを搭載している。今回、サスストロークの長い〈s〉仕様に三橋 淳さんが試乗した。オフロードの性能をスペシャリストが解説する。

ホンダ「CRF250L〈s〉」「CRF250ラリー〈s〉」インプレ・解説(三橋 淳)

オフロード入門用としての楽しさを追求した一台

80年代のオフロードブームの時代は、一台でツーリングからレースまでこなすのが250ccのオフロードバイクのトレンドだった。

今はどうだろう? カテゴリーがより細分化され、本格志向のライダーはレース用モデルへと流れて、公道用バイクでレースをするライダーは少ない。

ならば、バイクの免許を取ってバイクを買うエントリーユーザーのためにこそ、250ccのトレールバイクは存在する意味がある。であるなら…ということで、徹底してオフロード入門用としての乗り味を追求したのが、今回リニューアルされたCRF250Lシリーズだ。

結論から書いてしまったけれど、一体、初心者に相応しい入門モデルとはどういうものなのか? それを語るために、私自身がバイクの免許を取って初めて手に入れたトレールバイク、初期型XLR250Rに乗った時のことを思い出しながら試乗してみることにした。もうかれこれ30年前以上の話だが。

初めに断っておくが、今回のこのレポートはロードセクションでの話を一切していない。だって、このバイクは林道ツーリングを楽しむためのバイクなのだから。あくまでもダートにフォーカスさせてもらうことにする。「舗装路なんて、林道行くまでの繋ぎでしかないんだから、普通に走ればいいんだよ!」 いうのが私の個人的価値観なのだ(笑)。

オフロードビギナーにも優しい軽さと扱いやすさ

話を戻そう。免許取り立ての新米ライダーだった私は、250ccといえど単気筒エンジンのトルクにまず翻弄された。アクセルを開けたとたんフロントが持ち上がり、それにびっくりしてアクセルを閉じると急激なエンブレでツンのめる。当然ギクシャクして乗りにくい。

そこがまず、新型CRF250Lでは感じられない。アクセルワークに対してどこまでもスムーズ。これは初心者に優しい特性だろう。私もそれで苦労したからね。

でも、このスムーズさを強調しすぎると、トルク感がなくなってしまい、初心者といえども物足りなさをすぐに感じてしまう。アクセルを開けたってちっとも前に進まないんじゃ、楽しくないよね。

その点、この新型CRFは3000〜4000rpmあたりのトルクがしっかり出ているので、グイグイ進む感覚が楽しめる。そこがまず最初に乗って感じた印象だ。

そんなトルクも、慣れてくればきっともっと加速力が欲しくなるはず。そこは心配いらない。もっと回して7000rpmくらいまで引っ張れば、元気よく走ってくれる。この回転域は意外と重要で、高回転ゆえにトルク変動が小さいから、バイクをコントロールするのに結構多用するのだ。ここのパワー感がスカスカだと物足りなくなってしまうが、新型CRFはパワーがしっかりある。だから楽しい。

フレームと足回りはいい意味でしなやか。悪くいえばすぐよれる。というのも、あまりに硬すぎると初心者ではダイレクト感が強すぎて、路面の凸凹に合わせて乗ることができないからだ。あえて剛性を落とした新型CRFは、その路面からの当たりが車体で吸収してくれるので、乗り心地がマイルドになる。これは優しい設計だ。もちろん、これも乗れてくれば柔らかすぎに感じるかもしれないが、その場合はCRF250Lは卒業して、次のバイクに乗り換えればいい。

軽量化を施したというだけあって、とても軽く感じるのも、初心者には優しいポイント。実質的な重量はもちろんだが、とにかくハンドリングの軽さが軽快感を生む。ハンドルがヒラヒラした感じで、ライン取りが自在に出来そうに感じるくらい。だからフロントタイヤが溝や石に軽く当たったとしても、そのまま飛ばされそうな恐怖感が少ない。初心者にとってフロントタイヤが滑ったりどこかに弾かれそうになるのが一番怖い。その恐怖感が和らいでいるのも新型CRF250Lの特徴だ。

ツアラーとして最適化したCRF250ラリーの魅力とは?

さて、ここまでは「L」をベースに話してきたが、カウルがついたラリーも基本的には同じだ。が、流石にスタンダード程の軽さと軽快感はない。けれど、むしろこのラリーのハンドリングは一般的なトレールバイクの味付けで、そのデメリットである重さが消えている。乗り比べればスタンダードの方が軽いが、いきなりラリーに乗れば、軽い! と思うはず。

ある意味振り回して乗ることもできるLに対して、ラリーはツーリングバイクとしての落ち着いた感じを出している。つまりカウルがあるからと言って林道で怖気付く必要はないということ。

まとめると、初心者が初めて林道ツーリングに行くのに最適化されていると言っていい。もっとも、林道ツーリングでオフロードの楽しみを覚え、コースを走ってみようとなると、ABSが邪魔をする。走れないわけではないし十分楽しいが、オフロードライディングを学ぼうと思うと、このABSでは学ぶことができない。もっとも、ここに不満を覚えるようなら、ライダーのレベルアップのためにも乗り換えということになる。

でも、林道ツーリングメインなら乗り換える必要なんか微塵も感じない。このABSで不満があるようなら、それはスピードの出し過ぎだ。林道で飛ばしちゃダメ(笑)。

ホンダ「CRF250L〈s〉」「CRF250ラリー〈s〉」ライディングポジション・足つき性

CRF250L〈s〉のシート高:880mm
ライダーの身長・体重:182cm・85kg

CRF250L〈s〉のシート高:885mm
ライダーの身長・体重:182cm・85kg

いずれも座った状態を最優先しているのか、ポジションの自由度は少なく、私の身長ではスタンディングポジションを取るのが窮屈だ。でも初心者が無理して立つ必要はない。そういう意味では初心者向けに割り切った作りになっている。

ホンダ「CRF250L」主なスペック・価格

※ 《 》内は〈s〉タイプ

全長×全幅×全高 2210×820×1160《2230×820×1200》mm
ホイールベース 1440《1455》mm
最低地上高 245《285》mm
シート高 830《880》mm
車両重量 140kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量 249cc
ボア×ストローク 76.0×55.0mm
圧縮比 10.7
最高出力 18kW(24PS)/9000rpm
最大トルク 23N・m(2.3kgf・m)/6500rpm
燃料タンク容量 7.8L
変速機形式 6速リターン
キャスター角 27゜30'
トレール量 109mm
タイヤサイズ(前・後) 80/100-21M/C 51P・120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式(前・後) シングルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格 59万9500円(消費税10%込)

[【各部装備の解説はこちら】ホンダ「CRF250L」- webオートバイ]

ホンダ「CRF250ラリー」主なスペック・価格

※ 《 》内は〈s〉タイプ

全長×全幅×全高 2200×920×1355《2230×920×1415》mm
ホイールベース 1435《1455》mm
最低地上高 220《275》mm
シート高 830《885》mm
車両重量 152kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量 249cc
ボア×ストローク 76.0×55.0mm
圧縮比 10.7
最高出力 18kW(24PS)/9000rpm
最大トルク 23N・m(2.3kgf・m)/6500rpm
燃料タンク容量 12L
変速機形式 6速リターン
キャスター角 27゜30'
トレール量 109mm
タイヤサイズ(前・後) 80/100-21M/C 51P・120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式(前・後) シングルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格 74万1400円(消費税10%込)

[【各部装備の解説はこちら】ホンダ「CRF250ラリー」- webオートバイ]

文:三橋 淳/写真:柴田直行

[林道ツーリング初心者におすすめの装備とは? パンク・転倒などのトラブル対処法を解説 - webオートバイ]