なかなか近づけないAクラス。キーマンは正捕手・小林

 
 巨人がAクラス入りへ血眼になっている。後半戦最初の試合となった17日の敵地・ナゴヤドームでの中日ドラゴンズ戦に5−1で快勝。負ければ5位転落だった一戦を制し、4連勝で直近10試合を8勝2敗と快調に白星を積み重ねている。7月3日の時点で11だった借金も何とか5にまで減らした。
 
 だが、先行き明るいとはまだまだ言い切れない。17日時点で13.5ゲーム差の首位・広島東洋カープに追いつくことは現実的ではないにせよ、3位・横浜DeNAベイスターズとも依然として4ゲーム差。その後ろ姿が見えそうでも完全にとらえるまでには至らないもどかしい状況が続き、なかなか肉薄できずにいる。
 
 最低限の目標であるCS出場権をつかむためには、やはり今後もこれまで以上のハイペースで勝利数を増やし、是が非でも3位以内に滑り込まねばならない。
 
 その巨人でAクラス入りのキーマンの1人として目されるのは、正捕手を務める小林誠司だろう。17日の中日戦で先発マスクを被り、先発のマイルズ・マイコラス投手を好リード。打撃では2打数無安打2四球ながらも二回一、三塁の第2打席で遊ゴロを放ち、三塁走者を生還させて2点目を演出した。
 
 ただし、決して誉められるべき打撃ではない。ここまで打率1割8分8厘、0本塁打13打点ではいくら規定打席に到達していないとはいえ、主力選手としては余りに物足りなさ過ぎる。

球宴初アーチ、指揮官の手荒い祝福は期待の表れ

 チームの総責任者である高橋由伸監督も当然痛感している。それを象徴するかのような場面がつい先日、見受けられた。初出場となった球宴の第2戦(15日・ZOZOマリンスタジアム)で小林がオリックス・金子千尋の投じた初球ストレートを左翼席中段へ叩き込み、全セの先制ソロを放ったシーンは記憶に新しい。
 
 球宴初打席で初球を本塁打としたのはロッテの有藤通世以来、47年ぶり4人目の快挙。公式戦ではお目にかかれない豪快な一発に全セのコーチを務めていた高橋監督がベンチで“なぜ?”とでも言いたげに両手を広げ、ダイヤモンドを一周してきた小林の頭をヘルメットが浮くぐらいに強く叩きながら手荒く祝福していた。
 
 さらに試合後のセレモニーでは小林が敢闘選手賞に選ばれてコールされると、Gの指揮官はベンチ前で“ここじゃなくて公式戦で打てよな!”と言わんばかりに帽子をグラウンドに叩き付け、周囲の爆笑を誘った。
 
 公式戦のベンチでは試合中にほとんど表情を変えないことからG党の間でも「仏像監督」と揶揄されている由伸監督が、ここまで抱腹絶倒のリアクションを見せたのだ。
  
 これはお祭りの場だから飛び出した単なる“余興”などではない。このレアなパフォーマンスの裏側には、やはり由伸監督の小林に対する強い期待値が込められているのだろう。
  
 ちなみに小林はとても気が強い反面、ある部分において繊細な性格を持つ選手でもある。自分がチーム内あるいは世間でどのように見られ、どう受け止められているのか。自らを成長させていきたいからこそ、周囲に目を配ろうと常に心がけながらどんな些細な情報にもアンテナを張り巡らせている。
 
 そういう意味では「扇の要」としてふさわしい人物と言えるのかもしれない。しかしながら逆にそういう一面が災いし、時として本来であれば軽く受け流せばいいはずの自分への悪評も見聞きしてしまい、気にし過ぎてしまう傾向もあると聞く。

コーチ陣の配置転換、小林のリードが生命線

 今年は開幕前に第4回WBCで侍ジャパンの正捕手として大暴れし、準決勝まで全7試合でスタメン出場。リードだけでなく、打撃面でもチームトップの打率4割5分、1本塁打6打点とMVP級の活躍だった。その勢いで巨人でも大暴れが期待されたものの、肝心の公式戦は攻守の両面でサッパリ。懲罰交代だけでなくスタメンから外されることも多々あり、高橋監督の信頼を失って両者の間にすきま風が吹きだしたのではないかとも指摘され始めているところだった。
 
 特に高橋監督は感情を露にする激情型タイプの指揮官ではなく、選手と必要以上に密なコミュニケーションを取るようなことは余り好まない。だが小林が“柳に風”のように受け流せずに苦しんでいるとすれば、誤解が生じて指揮官ら首脳陣との距離感もますます遠くなっていき、今後の成長が見込めなくなってしまう懸念も出てくる。
 
 オマエにはこれからだって期待しているんだ。頼むぞ――。そういう姿勢を見せたかったからこそ、高橋監督は小林が仰天アーチを放ったことで、ここぞとばかりに球宴という無礼講の場を利用しながら公式戦中ではとても考えられないようなオーバーアクションを披露したのではないだろうか。実は巨人関係者や高橋監督を古くから知る球団OBの中にも筆者と同意見の人たちが思いのほかに多くいたことも補足しておきたい。
 
 以前、当コラムの中でも伝えた通り、この球宴期間中に巨人は1軍コーチ陣にメスを入れた。尾花高夫投手コーチをブルペン担当に配置転換し、変わって斎藤雅樹2軍監督を1軍投手コーチに就任させた。主に中継ぎ陣強化を図る目的があるようだが、それについても小林のリードが生命線となるのは言うまでもない。
 
 球宴で目にした高橋監督のオーバーアクションをキーマン・小林が新たな発奮材料とし、真の覚せいを果たした時こそ巨人の後半戦反攻につながるはずだ。